大熊ダイヤモンドデバイス|ダイヤモンド半導体を基板から一貫生産する北海道大学・産業技術総合研究所発ディープテック

大熊ダイヤモンドデバイス株式会社

大熊ダイヤモンドデバイス(北海道大学発)|研究領域=ダイヤモンド半導体/強み=基板から一貫生産/将来性=廃炉から宇宙・6Gへ

企業紹介|大熊ダイヤモンドデバイスとは?

大熊ダイヤモンドデバイスは、北海道大学・産業技術総合研究所発の企業で、ダイヤモンド半導体を基板から一貫して手がけます。高温や放射線に強い部品づくりを目指しています。代表は星川尚久氏で、2022年3月に設立しました。2026年5月に福島県大熊町へ世界初の量産工場を竣工しています。

キーワード「ダイヤモンド半導体」

ダイヤモンド半導体は、シリコンに代わる次世代のパワー半導体材料です。ダイヤモンドは熱の伝わりやすさ・電気の逃げにくさ・電子の動きやすさを備えます。これら複数の物性でシリコンを上回るとされます。高温や放射線に強く、高周波・高出力でも壊れにくいことから、「究極の半導体」とも呼ばれています

ただしダイヤモンドは硬くて加工が難しく、大きな基板を安定して作りにくい難点もあります。そのため長らく研究段階にとどまってきました。北海道大学 金子純一 准教授の研究室が土台を築き、長年の耐環境半導体の知見が実用への道を開いています。

市場課題|過酷な環境ではシリコンが力を出しにくい

現状のシリコン半導体の課題|温度が上がると性能が落ちやすい/放射線や高電圧で壊れやすい

放熱|熱がこもると性能が落ちる

現代の電子機器の多くはシリコン半導体で作られていますが、シリコンは温度が上がると性能が落ちやすい素材です。大きな電力を扱う用途では、熱を逃がす冷却装置が欠かせません。冷却部品が大きくなると機器全体も重くなり、小型化や省エネを進める壁になってきました。

耐久性|放射線や高い電圧で壊れやすい

シリコンは放射線や高い電圧に弱い素材で、素子が壊れて誤作動する恐れがあります。とくに原発の廃炉現場・宇宙・高い周波数帯を使う通信で負荷が大きくなります。従来のシリコンでは遮蔽や冷却の装置が過大になりがちで、過酷な環境でも動き続ける素材が求められてきました。

他にも、材料・素子・機器を別々の会社が担う分業の遅れがあります。電力のロスや冷却部品の大きさ、信号の乱れといった課題が積み重なってきました。

FrontJournalの解説
  • パワー半導体電力を制御したり変換したりするための半導体。電気自動車・産業機器・電力インフラなどで、大きな電力を効率よく扱うために使われる。
  • 絶縁破壊電気を通さないはずの材料に強い電圧がかかったとき、電流が突き抜けて素子が壊れる現象。耐えられる電圧が高いほど、小型で大きな電力を扱える。

大熊の強み|ダイヤモンド半導体を一貫生産

大熊のダイヤモンド半導体|シリコンは過酷環境に弱い/ダイヤは小さく作れて壊れにくい/一貫生産で強みを実装

高放熱化|熱を逃がして小型に保てる

ダイヤモンドはシリコンより熱を伝えやすい素材です。熱伝導率が高いほど内部の熱を素早く外へ逃がせるため、大きな電力を扱っても温度が上がりにくくなります。シリコンでは大きな冷却装置が欠かせませんでした。

放熱にすぐれた素材なら、冷却部品を小さく抑えられます。冷却まわりが軽くなれば、機器全体の小型化や省エネにつながります。高温になりやすい大電力の用途で、この持ち味が効いてきます。

高耐久化|過酷環境でも動き続ける

ダイヤモンドは高い電圧に耐えやすく、放射線にも強いとされます。絶縁破壊電界が大きいため、高い電圧でも壊れにくい素材です。小さな素子でも大きな電力を扱え、強い放射線の下でも動作を保ちやすいとされます。

原発の廃炉現場や宇宙のような環境にも向くと説明されています。高温・高出力・高周波がそろう用途ほど、強さが生きてきます。電子が動きやすい性質もあるとされ、高い周波数の通信機器にも向くと期待されています。壊れにくさと放射線への強さは、交換できない現場ほど価値が高まります。

FrontJournalの解説
  • 熱伝導率熱の伝わりやすさを表す値。高いほど熱を素早く逃がせるため、半導体が高温になりにくく、冷却装置を小さくできる。
  • 一貫して手がける原料から完成品までの工程を自社で通して担うこと。工程全体はバリューチェーンと呼ばれ、どこまで自社で担うかで競争力が変わる。
  • 物性その素材が持つ物理的な性質(熱の伝わりやすさ、電気の流しやすさなど)。半導体の使い勝手を決める根っこの要素。

未来|原発の廃炉から宇宙・6Gへ広げる社会実装

ダイヤモンド半導体が変える未来|原発の廃炉を計測で支える/宇宙で使う機器を軽くする/6G基地局を強くする

社会貢献|原発の廃炉を計測で支える

2026年5月29日、同社は福島県大熊町に量産工場を竣工しました。ダイヤモンド半導体の量産に特化した工場は世界初とされ、敷地面積は約5,800平方メートルです。従業員は2026年度に約20人、2028年度に約40人をめざし、2028年度ごろの本格稼働を計画しています。

最初の量産品は、福島第一原発の廃炉で使う計測デバイスで、中性子検出器などが想定されています。取り出す燃料デブリは強い放射線を出します。放射線に強いダイヤモンド半導体が計測に向くとされています。

宇宙応用|衛星の通信を軽くできる

廃炉の現場で磨いた耐環境性は、宇宙・衛星通信にも活かせます。過酷な環境に強い半導体は遮蔽や冷却の装置を小さくでき、宇宙で使う機器を軽くしやすくなります。強い放射線や高温でも動作を保ちやすいと期待されています。

通信応用|6G基地局を支える

5G/6Gの次世代通信も応用先に見込まれ、大きな電力を効率よく送るエネルギーインフラも候補です。高周波・高出力に強いダイヤモンド半導体が注目され、基地局を支える部品として期待されます。複数の産業へ社会実装を広げる計画です。

FrontJournalの解説
  • 燃料デブリ事故で溶けた核燃料が、原子炉の構造物と混ざり合って固まったもの。福島第一原発の廃炉では、これをどう取り出すかが大きな技術課題とされる。
  • 6G5Gの次に来ると想定される次世代の無線通信規格。より高い周波数帯を使うため、従来より高い性能の半導体が求められる。

会社概要|大熊ダイヤモンドデバイスの設立背景

設立の背景|北大の研究から生まれた

大熊ダイヤモンドデバイスは2022年に設立されました。代表の星川尚久氏は北海道大学工学部の出身で、母校を訪ねるうちにある研究室と出会いました。北海道大学 金子純一 准教授の耐環境半導体デバイス工学研究室です。そのダイヤモンド半導体の可能性に確信を持ち、事業化を決めました。

取締役には産業技術総合研究所の梅沢仁 上級主任研究員がおり、共同創業者として参画しています。社名「大熊」は、量産工場を構える福島県大熊町に由来します。同社は基板からデバイス製造、システム開発まで一貫して手がけ、応用先の要望を素早く設計へ反映できるとしています。

採択・連携|国や自治体に選ばれてきた

同社は経済産業省の「J-Startup」選定企業です。特許庁の第6回「IP BASE AWARD」でグランプリを受賞しています。「EY Innovative Startup 2025」に選ばれました。「Forbes Asia 100 To Watch 2024」にも名を連ねています。

量産工場の建設では経済産業省の補助金にも採択され、福島県の避難指示区域で工場を新増設する企業向けの制度です。最大30億円規模で支援する補助金とされています。国の産業技術総合研究所とも技術面で連携しています。

資金調達|プレシリーズAで基盤を築く

2024年10月、プレシリーズAで約40億円(デットを含む)を調達しました。技術を製品として量産・実証する初期の段階です。リード投資家はグロービス・キャピタル・パートナーズが務めました。

Coral Capitalなどのベンチャーキャピタルに加え、みずほ銀行・東邦銀行・常陽銀行などの金融機関も加わりました。助成金を含めた累計調達額は約67億円にのぼり、資金は世界初となる量産工場の建設などに充てられます。

会社情報

会社名大熊ダイヤモンドデバイス株式会社(OKUMA DIAMOND DEVICE)
所在地札幌市北区北21条西12丁目2 北大ビジネス・スプリング。福島工場:福島県双葉郡大熊町。
設立2022年
代表代表取締役社長:星川 尚久
共同創業金子 純一(北海道大学 准教授)/梅沢 仁(産業技術総合研究所 上級主任研究員・取締役)
調達プレシリーズA 約40億円(2024年10月・デットを含む/リード:グロービス・キャピタル・パートナーズ/参加:Coral Capital、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほ銀行、東邦銀行、常陽銀行 ほか)。助成金を含めた累計調達額は約67億円。
技術基点北海道大学 工学研究院 耐環境半導体デバイス工学研究室(金子純一 准教授)+産業技術総合研究所(AIST)
技術領域ダイヤモンド半導体、パワー半導体、高周波デバイス、耐放射線デバイス
受賞・選定経産省 J-Startup 選定/特許庁 第6回 IP BASE AWARD グランプリ/EY Innovative Startup 2025/Forbes Asia 100 To Watch 2024
URLhttps://ookuma-dd.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

半導体は技術ニュースの定番のテーマですが、素材そのものが変わるという話は多くありません。ダイヤモンド半導体は、その有力な候補とされます。静かに研究が続けられてきた分野です。

同社が印象的なのは、原発の廃炉という日本社会の重い課題を起点にしている点です。廃炉で必要になる計測技術が広がり、それが宇宙や次世代通信にも活きていきます。困りごとを解く技術が、別の産業を育てていきます。

基板から一貫して手がける体制も着実な足場になりそうで、2026年5月竣工の工場は本格稼働まで数年かかる計画です。ダイヤモンド半導体をどこまで社会に届けるのか、これからの歩みに期待が集まります。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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