Tohoku-TMIT「高周波透磁率計測」を研究|試料の上に置いたプローブと測定装置をケーブルでつないだイラスト

Tohoku-TMIT株式会社(トウホクティエムアイティ)

Tohoku-TMIT「高周波透磁率計測」を研究|研究領域=高周波での・磁気特性を測る/強み=プローブを置くだけで・高周波を測定/将来性=東栄科学産業が・機器開発を目指す

企業紹介|Tohoku-TMIT株式会社とは?

磁性材料が高周波の磁界にどう反応するかを測る技術として、注目を集める「高周波透磁率計測」。Tohoku-TMIT株式会社は、その社会実装を目指す、東北大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。試料の表面に置いて測るプローブ(測定用の探針)の販売と、電磁材料の評価受託を、材料やデバイスを開発する企業へ提供しています。

キーワード「高周波透磁率計測」

「高周波透磁率計測」は、磁性材料の透磁率(磁界を受けた材料が、磁束をどれだけ通すかを表す値)を、高い周波数で測る計測技術です。特徴は、5Gなどで使う高周波の領域で、材料の磁気特性を調べられる点にあります。磁性材料を開発する現場で、材料が高周波で機能するかを確認できます。

市場課題|高周波での磁気特性の評価は手間がかかる

現状の高周波評価の課題|現状は、工程内の評価が難しく試料の加工も要る|工程内の・高周波評価が難しい/評価に特殊な・試料加工が必要

工程内の高周波評価が難しい

磁性材料の高周波特性の評価は、製造の現場に組み込みにくいことが課題です。5G(第5世代移動体通信システム)の普及で、磁気センサーや電波吸収体(電波を吸収して反射を抑える材料)向けの磁性材料の開発が活発になっています。材料の特性は製品の性能に直結するため評価技術は重要ですが、従来は、部品を取り出さずに行うインライン評価(生産工程の途中で行う検査)が難しい状況でした。

評価に特殊な試料加工が必要

従来の評価は、試料に特殊な形状や加工が必要になる点も課題です。評価のための試料づくりに手間がかかります。その結果、評価のコスト、時間、手間が増え、材料や試料ごとに使い回しにくい方法になります。

他にも、設計の段階で考慮されにくい磁歪(磁性体が磁化の向きに応じて伸び縮みする性質)の影響、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • インライン評価製品を生産する流れの工程の途中で、部品を取り出さずに行う検査や評価を指す。製造途中の部品をラインから取り出して別の場所で調べる方法は、オフライン検査と呼ばれる。

Tohoku-TMITの強み|「高周波透磁率計測」を研究

Tohoku-TMITが「高周波透磁率計測」を研究|現在は、プローブで高周波の測定を提供|置くだけで・透磁率を測定/形や大きさが・違う試料も評価

試料に置くだけで測定できる

従来の透磁率計の多くは、特殊な形状や加工を施した試料が必要で、工程の途中では測定しにくい方法でした。

同社の「MSL(マイクロストリップ線路)プローブ」は、細い帯状の導線を備え、試料の表面に置くだけで透磁率を測れる測定用の探針(プローブ)です。線路に高周波の電流を流すと線路の幅方向に磁界が生じ、接した磁性体の反応が信号の通り方の変化として現れる仕組みです。この変化から透磁率を求めます。数十GHzの高周波まで測定でき、試料を加工する必要がなくなるため、製造工程の途中でも材料の高周波特性を確認できるようになると期待されます。

試料の形や大きさに依存しない

透磁率の測定では、試料の形やサイズによって敏感に変わる反磁界(試料自身が生む、磁化を弱める向きの磁界)の補正を考慮する必要があります。

同社のプローブは、試料の大きさや形状に依存せずに測定できます。対象は、Ni-Fe系の薄膜、Co系アモルファス(原子が規則正しく並ばない状態の合金)の薄膜、フェライト(酸化鉄を主成分とする磁性セラミックス)、樹脂に磁性の微粒子を混ぜた複合シートなどです。1〜3nmの極薄膜の評価も可能とされています。大きなウェハー(半導体の基板となる薄い円盤)の表面では、場所ごとの透磁率の分布の評価も可能です。試料ごとの加工の手間が減り、さまざまな材料を同じ方法で評価しやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 反磁界磁化した物体の内部に、磁化を弱める向きに生じる磁界を指す。試料の形や大きさによって強さが変わるため、透磁率の測定では補正が必要になる。

高周波透磁率計測の未来|材料評価から磁気計測の応用へ

高周波透磁率計測が変える未来|材料の評価と、東栄科学産業の機器開発|薄膜から薄帯まで・磁歪も測定/5G以降の材料を・工程で評価/東栄科学産業が・機器開発を目指す

薄膜から薄帯まで磁歪を測定

同社は透磁率に加えて磁歪の定数も計測し、対象は薄膜から薄帯(厚さ数十μmの帯状の磁性材料)までの材料です。薄膜にはレーザー光の反射で伸び縮みを検出する光てこ法(Cantilever法)を使い、薄帯には荷重をかけたときの透磁率の変化から磁歪定数を求める方法を使います。磁歪は、製品化の過程で問題を起こすことが多いとされる性質です。同社は、磁歪の計測と解析をもとに、素子化への対策についての相談にも応じています。

5G以降の材料を工程で評価

同社のプローブは、5G以降の通信に使う材料の、生産管理への適用が期待される技術です。同社の新技術は、試料の大きさや形状に依存しない測定が可能で、製造ラインで材料を測るインライン評価に対応するとされています。材料メーカーやデバイスメーカーにとっては、評価の手間が減り、効率的に評価できる見込みです。集積回路用の12インチウェハーにも適用できると期待されています。

東栄科学産業が機器開発を目指す

研究用機材メーカーの東栄科学産業は、今後の新たな需要に向けて、磁気計測機器の開発を目指しています。東栄科学産業は、磁歪測定装置や透磁率測定装置などを、これまで開発・実用化してきました。このほか、磁場中熱処理炉(磁界をかけながら材料を加熱する炉)や関連する電磁石の設計、真空機器も実用化しています。Tohoku-TMITは、東栄科学産業の永年の経験を生かし、機器の開発や設備購入に関する相談を受け付けています。

会社概要|東北大学の研究成果を基に設立された企業

東北大学の研究者が設立

Tohoku-TMIT株式会社は、2023年1月4日に宮城県仙台市で設立されました。設立したのは、東北大学大学院医工学研究科兼工学研究科の薮上信教授と、沖田和彦学術研究員です。会社の設立に先立つ2019年4月には、東北大学の専門家と研究用機材メーカーの東栄科学産業が、Tohoku-TMITという名称の組織を立ち上げ、活動を始めていました。代表取締役は沖田和彦氏です。

NEDO事業の交付決定を受ける

同社は2023年度に、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)」の躍進コースBで、交付決定事業者に選ばれました。テーマは「磁性ナノ粒子を利用した微生物、タンパク質迅速検出器の開発」で、高周波透磁率計測とは別の、磁気を利用した検出器の開発です。磁性ナノ粒子は、磁気の性質をもつ、ナノメートルサイズの微小な粒子です。

受託測定とプローブ販売が事業

事業は、評価受託とプローブの販売に加え、磁性材料や磁気計測に関するコンサルティングです。コンサルタントには、東北大学の島田寛名誉教授、薮上信教授、遠藤恭氏が就き、磁性材料や磁気計測の相談に応じています。大学発ベンチャーとしては、東北大学の研究成果を基に設立された研究成果ベンチャー(大学の研究成果を事業化する企業)に当たります。

会社情報

会社名Tohoku-TMIT株式会社(Tohoku Measuring Instrumentation Technologies)
所在地宮城県仙台市宮城野区小田原2丁目3番14号
設立2023年1月4日
代表代表取締役:沖田 和彦。設立者:薮上 信(東北大学教授)、沖田 和彦
事業電磁材料の透磁率・誘電率の評価受託。プローブの販売。磁性材料・磁気計測に関するコンサルティング
技術領域マイクロストリップ線路型の「MSLプローブ」による高周波透磁率計測(数十GHz帯まで)。磁歪定数の計測(Cantilever法、MSLプローブ法、薄帯材料の測定)
連携株式会社東栄科学産業(磁気応用部)。東北大学(薮上研究室)
採択NEDO「ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)」躍進コースB(2023年度・交付決定)
URLhttps://www.tohoku-tmit.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

5Gのように高い周波数を使う通信が広がるなかで、材料の性能を確かめる計測は、目立たないものの欠かせない土台です。Tohoku-TMITは、その計測を製造の流れの中で行える形にしようとしています。印象に残ったのは、計測の手間を減らす方向へ技術を磨いている点です。

評価の受託に加えて、測る方法そのものを材料メーカーの現場へ届けようとする点に、この会社の価値の核心があると感じます。東北大学の研究室で磨かれた計測技術が、材料開発のスピードを支える存在になることを期待しています。試料の形に合わせて条件を整える従来の評価から、形や大きさに左右されにくい評価へ、計測の考え方が変わる契機になりそうです。

測れる範囲が広がるほど、新しい磁性材料の可能性も広がっていくはずです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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