アクアス「植物成分の一斉分離」を開発|コイル状の管の中に水と油のしずくと成分の点が並ぶ分離カラムのイラスト

アクアス株式会社

アクアス「植物成分の一斉分離」を開発|研究領域=植物成分を・一斉に分ける/強み=水にも油にも・対応して一斉分離/将来性=成分を取り分け・データベース化へ

企業紹介|アクアス株式会社とは?

植物の多数の成分を、まとめて分けて見分ける技術「植物成分の一斉分離」。アクアス株式会社は、その実現に取り組む、京都大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。液体クロマトグラフィー(混合物を成分ごとに分けて測る分析法)に使う分離カラム(成分を分ける部品)「AqasPrime」を、植物や食品、創薬の研究現場へ提供しています。

キーワード「植物成分の一斉分離」

「植物成分の一斉分離」は、植物に含まれる性質の異なる多数の成分を、1回の測定でまとめて分けて検出する分析の手法です。特徴は、水になじむ成分と油になじむ成分の両方を、同じ条件で分けられる点にあります。生薬や茶、食品原料の研究現場で、含まれる多数の成分をまとめて調べる際に使えます。

市場課題|植物成分の分析に求められる、成分の分離力と溶媒の削減

現状の植物成分の分析の課題|現状は、成分の多さと溶媒の消費で分析の負担が大きい|成分が多く・見渡しにくい/分析で溶媒を・大量に消費

成分が多く全体を見渡しにくい

植物などの天然物には、性質の異なる成分が数多く含まれ、全体を見渡すのは容易ではありません。たとえば配糖体(糖が結びついた化合物)には、親油性(油になじむ性質)の部分と親水性(水になじむ性質)の部分をあわせ持つものがあり、こうした成分は同じ条件では分けにくくなります。分けきれない成分が重なって検出されると、個々の成分の見極めが難しくなります。

分析で溶媒を大量に消費

液体クロマトグラフィーによる分析では、測定のたびに大量の有機溶媒が使われ、廃棄されています。内径4.6mm・長さ150mmの従来型カラムを1年間連続して使った場合の廃溶媒は約525L(ドラム缶約3本分)です。分析を重ねるほど、溶媒の購入費用がかさみ、廃棄処理の環境負荷も大きくなります。

他にも、見落とされがちな微量成分、未知の成分の見極め、植物試料を多めに必要とすること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 液体クロマトグラフィー試料を溶かした液体を、固定相(成分を捕まえる層)を備えた細い管に流し、成分ごとの通過速度の違いを利用して混合物を分ける分析法である。通過速度の差は、固定相との相互作用の強さの違いで生じる。

アクアスの強み|「植物成分の一斉分離」を開発

アクアスが「植物成分の一斉分離」を開発|現在は、微細な管で成分の一斉分離を提供|水にも油にも・対応して一斉に分離/微細な管で・溶媒と試料を削減

両親媒モードで成分を一斉に分離

従来の分離法は、親水性か親油性のどちらか一方の相互作用(成分と固定相の間に働く力)だけを使うものが主流とされ、性質の異なる成分を同じ条件で分けにくいという課題がありました。

同社の「AqasPrime」カラムは、親水性と親油性の両方の相互作用を同時に働かせる「両親媒モード」(水にも油にも対応する方式)で成分を分けます。この方式を実現するために最適化した分離基材が、シリカ(二酸化ケイ素)を粒子として詰めず、一続きのスポンジ状に形成した「モノリスシリカ」です。水になじむ部分と油になじむ部分をあわせ持つ配糖体のような成分も、同じ条件で分離できます。自然由来の複雑な混合物から200種以上の成分を一斉に分離でき、1回の測定で多数の成分をまとめて確認できるようになります。

微細な管で溶媒と試料を削減

内径4.6mmの従来型カラムは、管が太く、分析のたびに流す溶媒の量が多くなります。

「AqasPrime」カラムは、内径0.1mm・長さ700mmのキャピラリー(極めて細い管)の内部にモノリスシリカを形成しています。管が細いため、流す溶媒の量は毎分0.2〜1.5マイクロリットル(1マイクロリットルは1000分の1ミリリットル)が目安で、1本を1年間連続して使った場合の廃溶媒は約300mL(ビール缶1本弱)です。分析に使う植物試料も、葉1枚以下(数mg)で足ります。その結果、溶媒の購入費用と廃棄量を減らせ、希少な植物を大量に採らなくても成分を調べられます。

FrontJournalの解説
  • モノリスシリカシリカ(二酸化ケイ素)が一続きのスポンジ状に連なった多孔質体である。粒子を詰めずに管の中で一体として形成するため、液が通る隙間が連続し、目詰まりしにくい構造をとる。

植物成分の一斉分離の未来|成分の取り分けとデータベースへの展開

植物成分の一斉分離が変える未来|成分を取り分け、データベース化を目指す|購入可能な・分離カラムと分析例/取り分けた成分を・プレートへ展開/データベースの・構築を目指す

購入できるカラムと分析例

「AqasPrime」カラムは、ワケンビーテック株式会社とアズワン株式会社を通じて購入できます。分析の適用例は、生薬の高麗ニンジンやセンブリ、漢方薬の大建中湯、茶類、ビール原料のホップなどです。カラムは、吸着層の厚みや親油性の強さが異なる複数の型から選べます。適用例は生薬にとどまらず、食品原料にも及びます。

取り分けた成分をプレートに展開

同社は、分けた成分を微量ずつ取り分け(分取)、ウェルプレート(小さな穴が並ぶ試験用の板)に展開して、その後の評価につなげる取り組みを進めています。「AqasPrimeシステム」は、カラムと組み合わせる分析システムです。デモ機が稼働中で、試験販売も予定されています。パートナー企業と共同開発した微量送液ポンプで、送液を安定させて再現性の高い分析を可能にします。

成分データベースを目指す

同社は、「AqasPrime」で得た自然由来の成分の分離・分析データを、データベース化するプラットフォーム事業(成分データを蓄積して活用する事業)を目指しています。同社は、1日あたり10試料を分析できます。質量分析(成分を質量で見分ける分析)のデータを蓄積する計画で、未知成分の解明や研究効率の向上に役立てる狙いです。共同で取り組む企業や、活用を考える研究者からの相談を受け付けています。

会社概要|アクアスの事業内容・設立背景

京都大学発の研究成果から設立

アクアス株式会社は、2023年3月13日に設立された京都大学発のベンチャーです。設立前の2018年、のちに同社の役員となるメンバーが、AMED(日本医療研究開発機構)の薬用ニンジンの研究事業に参画して成分分析を担当する中で、生薬専用の分離カラムが見当たらないことに気づき、共同開発に取り組みました。2020年に生薬専用のキャピラリーカラムが完成し、その成果をもとに設立されました。

共同研究と採択と受賞の実績

2024年11月に「第2回関西テックプラングランプリ」で最優秀賞を受賞し、2025年3月には京都市ベンチャー企業目利き委員会(事業を評価・認定する委員会)でAランクの認定を受けました。同月に、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)の支援プログラム「FASTAR」第12期にも採択されています。翌4月に第一三共株式会社との共同研究を始め、2026年6月には京都市と京都高度技術研究所(ASTEM)の「令和8年度 産学連携実装化プロジェクト」にも採択されました。

シードとシリーズAで資金調達

同社は、2024年2月のシードラウンド(創業初期の資金調達)で第三者割当増資(特定の出資者に新株を発行する方法)による資金調達を実施し、2025年6月にはシリーズA第1ラウンドも実施しました。シリーズAは、事業を広げるための資金調達ラウンドにあたり、引受先は関西イノベーションネットワーク2号投資事業有限責任組合とみやこ京大イノベーション3号投資事業有限責任組合です。資金は、「AqasPrime」の製品ラインナップの強化とAIツールを活用した成分データベースの構築に充てられます。

会社情報

会社名アクアス株式会社(AQAS Corporation)
所在地京都府京都市伏見区治部町105番地 京都市成長産業創造センター201号
設立2023年3月13日
代表代表取締役 浅岡広彰
資本金5,000万円(2025年12月時点)
調達2024年2月 シードラウンド(第三者割当増資)。2025年6月 シリーズA第1ラウンド。シリーズAの引受先は関西イノベーションネットワーク2号投資事業有限責任組合、みやこ京大イノベーション3号投資事業有限責任組合。シードラウンドの引受先はみやこ京大イノベーション3号投資事業有限責任組合ほか
事業液体クロマトグラフィー用キャピラリーカラム「AqasPrime」の開発・販売(ワケンビーテック、アズワン経由で購入可能)。分析システム「AqasPrimeシステム」(デモ機稼働・試験販売予定)。成分データベースのプラットフォーム事業(開発中)
技術領域モノリスシリカキャピラリーカラム、両親媒モードによる植物成分の一斉分離
連携第一三共株式会社(2025年4月から共同研究)
採択京都市ベンチャー企業目利き委員会 Aランク認定(2025年3月)。中小機構 FASTAR 第12期(2025年3月)。令和8年度 産学連携実装化プロジェクト(2026年6月)。第2回関西テックプラングランプリ 最優秀賞(2024年11月)。クロマトグラフィー科学会議 Best Presentation Award(2025年9月)
URLhttps://www.aqas.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

植物に含まれる成分の全体像を捉えることは、生薬や食品を使った研究の出発点です。成分を分けて確かめられるかどうかが、その先の評価の前提になります。分離の精度は、研究全体を支える土台です。

アクアスの特徴は、親水性と親油性の両方に働く両親媒モードと、粒子を詰めないモノリスシリカを、内径0.1mmの細い管で組み合わせた点です。成分の一斉分離と、溶媒や試料の使用量の削減の両立を、1本のカラムで図っています。研究現場の負担を減らす選択肢です。

京都大学発の分離カラムが、植物の研究や創薬の現場へ広がる日を期待しています。京都大学から生まれたほかの企業は、京都大学発スタートアップ10選で紹介しています。今後は、データベース事業にも注目です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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