2026.07.07 科学技術振興機構(JST)

京大らがネアンデルタール人と現生人類の長期的な文化の連続性を解明(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「ネアンデルタール人と現生人類は価値観を共有していた~小さな貝の化石が語る人類交流の歴史~」

京都大学大学院理学研究科の森本直記准教授、国立科学博物館の森田航研究主幹、福岡大学の石原与四郎助教、トルコ・ガジアンテップ大学のバイカラ・イスマイル教授らの国際研究グループは、トルコ南部のウチャーズリII洞窟で、ネアンデルタール人と現生人類(ホモ・サピエンス)の痕跡を同じ遺跡から見いだし、両者が2万年以上にわたって共通の文化を安定して維持していたことを明らかにしました。成果は米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました(現地時間2026年7月6日)。

研究では、石器の製作方法や食糧調達の戦略に加え、食用に適さない貝殻の収集といった、実用性を超えた行動の共通性が確認されました。約6万〜5万年前の現生人類の化石記録は極めて乏しく、今回の発見は化石記録の空白を埋めるとともに、異なる人類種の間で価値観や文化が共有されていた可能性を示す成果とされています。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月7日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260707/index.html

FrontJournalの解説

ネアンデルタール人と現生人類とは

ネアンデルタール人は、かつてヨーロッパや西アジアに広く暮らしていた人類で、私たち現生人類(ホモ・サピエンス)に近い別の種です。両者はある時期に地理的に重なって存在したことが知られていますが、同じ遺跡で長期間の関わりを具体的に示す証拠は限られていました。今回の研究は、両者がどのように文化を共有していたかを、洞窟に残された痕跡から読み解いたものです。

①同じ洞窟で見つかったことの意味

研究の舞台となったウチャーズリII洞窟では、ネアンデルタール人と現生人類の時代をまたいで、石器づくりや暮らし方に長期的な連続性が見られました。とくに約6万〜5万年前の現生人類の化石は世界的にも記録が少なく、この時期の人類の行動を知る手がかりは貴重です。時代を超えて共通する文化が確認されたことは、人類の交流史を考えるうえで重要な意味を持ちます。

②「実用を超えた価値観」の共有とは

注目されたのが、食べるためではない小さな貝殻を集める行動です。道具や食糧のように直接役立つわけではないものを大切にする行動は、装飾や象徴といった「価値観」に関わると考えられています。こうした行動が異なる人類種の間で共通していたことは、両者が単に同じ場所にいただけでなく、文化的な価値観をも共有していた可能性を示すものとして解釈されています。

編集部からひとこと

人類がどのように文化を育み、異なる集団と関わってきたのかは、私たち自身の成り立ちを理解するうえで基礎となる問いです。小さな貝の化石から2万年以上にわたる文化の連続性を読み解いた今回の研究は、化石記録の空白を埋める貴重な成果として国際的にも注目されます。日本の研究者が中核を担った国際共同研究として、今後の人類進化研究のさらなる進展が期待されます。

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