2026.09.22 東京大学ら 元発表:2026.09.17

東京大学ら、反強磁性体NdBiの表面で磁性ディラック電子を直接観測

ニュース紹介

「反強磁性体の表面に、磁石の性質を帯びた奇妙な電子が出現―スピンの向きが100%揃った電流の実現へ―」

東京大学物性研究所の福島優斗氏、近藤猛准教授、徳永将史教授らと、大阪大学大学院理学研究科の越智正之准教授らの研究グループは、反強磁性トポロジカル絶縁体であるネオジム・ビスマスNdBi)の表面で、理論的に予測されていた磁性ディラック電子を初めて直接観測したと発表しました。角度分解光電子分光により、反強磁性相でバンドの交差点に約17meVのエネルギーギャップが開くことを確認し、物質自身の表面磁性が150テスラ級の巨大な磁場に相当する効果をディラック電子に与えていることを示しました。成果はNature Communicationsに掲載されました。

出典:東京大学物性研究所 2026年9月17日 ニュース/掲載誌:Nature Communications(DOI:10.1038/s41467-026-77571-4)
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=32233

FrontJournalの解説

磁石の性質を持つ電子が求められてきた

反強磁性体は、隣り合う磁石が互いに逆向きに並ぶため、物質全体では磁力が打ち消し合います。トポロジカル絶縁体は、内部は絶縁体でありながら表面に特殊な電子状態を持つ物質です。その表面のディラック電子に磁石の性質が加わったものが磁性ディラック電子で、バンドの交差点にエネルギーギャップが開きます。スピンの向きが100%揃った電流の実現には、100テスラ級の極めて強い磁場が必要とされていました。

①光電子分光でNdBiの表面を観測

研究グループは、物質に光を当てて放出される光電子の運動エネルギーと放出角度を測る角度分解光電子分光を用いました。試料の温度を制御して常磁性相と反強磁性相を観察し、理論計算とも比較しました。NdBiの表面には、2本のバンドが交差するディラック電子が観測されました。

②約17meVのギャップを確認

反強磁性相では、バンドの交差点に約17meVエネルギーギャップが開くことが確認されました。ギャップの大きさは理論予測とほぼ一致し、物質自身の表面磁性が150テスラ級の巨大な磁場に相当する効果をディラック電子に与えていることが示されました。完全スピン偏極電流の実現に必要な電子状態が形成されていることを示唆する結果です。

編集部からひとこと

今回の成果は電子状態の観測で、電流を実際に流してスピンの向きが揃うことを示したものではありません。原文は今後の課題として、完全スピン偏極電流の電気伝導の実証と、外部磁場を必要としないスピントロニクス素子の開発を挙げています。具体的なデバイスや実用化の時期は、原文では示されていません。詳細は東京大学物性研究所の公式発表および掲載論文をご参照ください。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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