バイオーム「生物多様性データ」を開発

株式会社バイオーム

バイオーム「生物多様性データ」を開発|研究領域=生物の分布を記録したデータ/強み=市民の投稿をオープンデータと統合/将来性=自然の情報開示と施策の根拠に使える

企業紹介|株式会社バイオームとは?

TNFD(自然関連の情報開示の枠組み)対応や、国が認定する自然共生サイトの申請で、根拠として使われる「生物多様性データ」。株式会社バイオームは、その整備を進める京都大学発のディープテック企業です。いきものコレクションアプリ「Biome」への投稿を基に、生物の分布を示すデータベースや地図を、企業や自治体へ提供しています。

キーワード「生物多様性データ」

「生物多様性データ」は、いつ・どこで・どの生物がいたかを、種名・位置・日時で記録した情報です。同社は、アプリ「Biome」への投稿と研究機関のオープンデータを統合し、累計1160万件超の投稿(2026年8月時点)を含む基盤を築いています。同社の名前判定AIは約10万種に対応し、この基盤は開示や施策の根拠に使えます。

市場課題|自然関連の開示には、生物の根拠が要る

現状の生物調査の課題|現状は、現地調査が必要で担い手が限られかねない/情報開示に必要なデータ整備が課題/現地調査の担い手が限られがち

自然関連の開示が増え根拠が必要

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、2023年9月の最終提言で、企業に自然への依存や影響の開示を推奨しました。TNFDに沿った開示を表明する「アダプター」への登録数は、環境省によると日本企業が世界最多です。開示には周辺の生物の把握が必要で、データ整備が課題です。

保全区域の拡大に現地調査が要る

保全区域の拡大には現地調査が要りますが、担い手が限られかねません。国は、2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」を掲げ、民間の取組を「自然共生サイト」に認定しています。保護地域とOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)を合わせた面積割合は、陸域21.0%、海域13.3%です(2026年8月の環境省発表時点)。

他にも、依存関係や影響の理解不足、戦略への反映不足、資本配分での考慮不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • TNFD自然関連財務情報開示タスクフォースの略である。企業が自然への依存や影響、リスク、機会を開示するための枠組みを、2023年9月に最終提言として発行した。

バイオームの強み|「生物多様性データ」を開発

バイオームが「生物多様性データ」を開発|現在は、市民の投稿で分布データを提供/市民の投稿とオープンデータを統合/専門知識なしで生物を調査できる

市民の投稿と公開データを統合

研究機関などの公開データだけでは、分布の予測精度を高めにくい面があります。

同社は、いきものコレクションアプリ「Biome」を2019年4月にリリースし、利用者が撮影した生物の写真を集めています。誤同定(種名の取り違え)の対策は、AIが撮影場所と季節から種名の候補を示し投稿者が選ぶ方式と、詳しい人に相談できるSNS機能です。この市民科学データと研究機関のオープンデータを統合した「BiomeDB」により、生物の分布を種名・位置・時期とともに根拠として使えるようになり、開示の準備を進められるようになります。

専門知識なしで調べる調査ツール

生物の調査は、種を見分ける専門家に任されてきた業務で、担い手が限られがちです。

同社の「BiomeSurvey」は、組織向けの生物調査支援ツールです。生物の写真を撮ると名前判定AIが種名の特定(同定)を支え、専門家が不在の現場でも調査データを記録できます。個体数調査、毎木調査(樹木を1本ずつ調べる調査)、在不在調査に合わせた入力画面を備え、通信が不安定な場所でもオフラインで記録できる点が特徴です。データはCSV形式(表計算ソフトで開ける形式)でダウンロードでき、報告書や分析に利用できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 市民科学専門の研究者だけでなく、一般の市民が観察や記録に参加して得たデータを、科学的な調査に活用する取り組みを指す。参加者が多いほど、広い範囲の記録を集めやすい。

生物多様性データの未来|開示と施策への応用

生物多様性データが変える未来|TNFD対応から、地域政策まで/分布地図でTNFD対応を支援/利用先が広がり衛星画像も活用/自然の情報を社会の基盤に

分布地図で開示と評価を支援

「BiomeViewer」は、開示や評価に使う生物の分布を、地図上に表示するマッピングツールです。TNFDの「Tools Catalogue」に掲載されているツールです。導入事例には、KDDI(通信事業者)グループのデータセンターや太陽光発電所での生物多様性評価ツールの運用と、ちゅうぎんフィナンシャルグループのTNFD開示支援があります。企業は、開示に必要な生物の根拠を地図の形で得られます。

広がる利用先と衛星画像の活用

同社のプロジェクト実績は、2026年8月時点で企業・団体500社以上、自治体・官公庁120以上、研究機関30以上です。アプリ「Biome」は2024年8月に累計100万ダウンロードを突破し、2026年8月には130万ダウンロードを超えました。2025年3月には、NTT(通信事業者)6社と、衛星画像データを活用した植生および生物の広域推定技術の開発に着手しました。推定の対象が広がれば、現地調査が難しい地域の把握にも使えます。

自然の情報の社会基盤化を目指す

同社は、データ、解析、実行を一社で担います。TNFD対応から地域政策、自然共生のまちづくり、保全・再生、継続モニタリングまで対応する方針です。「自然の情報を、社会のインフラに。」を掲げ、企業、行政、市民の誰もが同じ基盤で自然の状況を把握できる状態を目指しています。

会社概要|京都大学発の生物多様性データ企業バイオーム

京都大学発のデータ企業

同社は、2017年5月に京都大学発のベンチャーとして設立された、京都市下京区の企業です。代表取締役は藤木庄五郎で、英語表記はBIOME Inc.です。アプリ「Biome」は2019年4月にリリースされ、2022年12月には調査ツール「BiomeSurvey」、2023年2月には分布地図「BiomeViewer」をオープンβ版として公開しました。生物多様性データを基盤に、企業向けにはTNFD対応や自然資本戦略、行政向けには地域政策や保全・再生の支援を事業としています。

選定・受賞・採択

2018年に経済産業省の「J-Startup」、2023年に「J-Startup Impact」の選定企業となりました。2023年には、令和4年度の環境省「環境スタートアップ大賞」で環境スタートアップ事業構想賞を受賞しています。2024年12月には、グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金に採択されました。

資金調達

2023年4月にシリーズBとして3.3億円を調達しました。この額には、日本政策金融公庫からのデット(借入)を含みます。投資家には、Kipsやみずほキャピタルが名を連ねています。資本金は、資本準備金を含めて4億7,406万円です。

会社情報

会社名株式会社バイオーム(BIOME Inc.)
所在地京都市下京区中堂寺南町134番地 ASTEMビル8階
設立2017年5月31日
代表代表取締役 藤木庄五郎
資本金4億7,406万円(資本準備金を含む)
調達2023年4月にシリーズBで3.3億円(日本政策金融公庫のデットを含む)
事業生物多様性データの構築、アプリ「Biome」の運営、分布地図「BiomeViewer」と調査ツール「BiomeSurvey」の提供、TNFD対応などの支援
技術領域生物多様性データ、名前判定AI
連携NTT 6社と衛星画像を活用した広域推定技術の開発に着手(2025年3月)
採択環境スタートアップ事業構想賞(環境省)、J-Startup、J-Startup Impact(経済産業省)
URLhttps://biome.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

自然関連の開示では、事業所の周辺にどの生物がいるかを示す根拠が求められます。バイオームの取り組みは、アプリへの市民の投稿という日常の行動から、全国の分布データを築いた点が特徴です。専門家の調査だけでは届きにくい範囲を、参加者の記録で補う構図は、生物多様性データの集め方として現実的だと考えます。

調査の道具を、企業や自治体が自ら使える形に整えた点も、開示や施策を進める現場で役立つ価値です。データが各地でどこまで蓄積されるかを、今後も注視していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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