CyberomiX「空間トランスクリプトーム解析」を研究|ガラススライド上の組織切片に遺伝子の働きを色の格子で重ねたイラスト

株式会社CyberomiX(サイバーオミックス)

CyberomiX「空間トランスクリプトーム解析」を研究|研究領域=遺伝子の働きを・場所ごとに測る/強み=1細胞に近い・解像度で測定/将来性=診断薬と治療薬の・創出を目指す

企業紹介|株式会社CyberomiXとは?

薄く切った病理組織の上で、どの場所でどの遺伝子が働いているかを調べる技術として、注目を集める「空間トランスクリプトーム解析」。株式会社CyberomiXは、その社会実装を目指す、バイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。空間トランスクリプトーム解析やシングルセル解析(1細胞ずつ調べる手法)の受託サービスを、大学・研究機関・医療機関・企業へ提供しています。

キーワード「空間トランスクリプトーム解析」

「空間トランスクリプトーム解析」は、組織切片(薄く切った組織)の上で、遺伝子がどの場所でどれだけ働いているかを測る解析手法です。特徴は、病理の染色像と遺伝子発現(遺伝子の働きの強さ)を、同じ切片から得られる点にあります。がんなどの病理検体で、細胞の状態を場所ごとに詳しく調べられます。

市場課題|病理診断は形態情報が中心で、遺伝子の働きを場所ごとに捉えにくい

現状の病理診断の課題|現状は、形態情報が中心で遺伝子の働きが見えにくい|病理診断は・形態情報が中心/少数の変異は・位置を特定しにくい

病理診断は形態情報が中心

病理診断は、細胞や組織の形態情報を手がかりにしてきました。形態は顕微鏡で観察できる一方、遺伝子の働きまでは形から読み取りにくい面があります。このままでは、見た目が似た組織の細胞の違いを把握しにくく、診断や研究で得られる情報が限られかねません。

少数の変異は位置を特定しにくい

腫瘍内のわずかな細胞集団に特有のゲノム変異(DNAの塩基配列の変化)は、組織のどこにあるかを特定しにくく、複数の変異の同時把握はさらに困難です。腫瘍の内部は細胞の性質がそろっておらず、こうした少数の細胞集団の挙動が注目されています。変異の分布が見えなければ、その集団を組織上で追いにくい状態が続きます。

他にも、シングルセルや空間オミクスのデータ解析に高度なコーディングの技能が求められること、約340種類のタンパク質を同時に調べる免疫解析が従来は難しかったこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ゲノム変異DNAの塩基配列に生じた変化を指す。腫瘍では、同じ組織の中でも細胞ごとに異なる変異が見つかる不均一性が知られており、変異がどこにあるかが研究の焦点になる。

CyberomiXの強み|「空間トランスクリプトーム解析」を研究

CyberomiXが「空間トランスクリプトーム解析」を研究|現在は、空間解析の受託で細胞の状態を提供|病理像と遺伝子を・同じ切片で取得/ゲノム変異も・同じ切片で検出

病理像と遺伝子発現を同時取得

従来の病理診断は形態の観察が中心で、遺伝子の働きを同じ切片で測る方法は限られていました。

同社は、空間トランスクリプトーム解析で、病理の染色像と遺伝子の働きを同じ組織切片から取得します。使うのは、米国の10x Genomics社が提供する空間解析の製品「Visium HD」(HDは高解像度の意)で、ヒトの約18,000種類の遺伝子の働きを、ほぼ1細胞レベルの解像度にあたる2µm四方ごとに測定できます。遺伝子の働きは細胞の性質を決めるため、形では分からない状態も調べられる点が利点です。病理の観察に遺伝子の情報が加わり、組織のどの場所の細胞がどんな状態かを詳しく把握できるようになります。

ゲノム変異も同じ切片上で検出

従来は、複数のゲノム変異を組織上で同時に捉えることが難しいとされてきました。

手法「Singular Spatial GenomiX」は、遺伝子の働きとゲノム変異を同じ組織切片で捉えます。FFPE検体(ホルマリンで固定しパラフィンに包んだ病理標本)でも、エクソン領域(タンパク質の設計情報を含むDNAの一部)を均質に捕捉し、わずかな変異を検出できます。変異ごとに専用のプローブ(目的の配列に結合する分子)を設計するアルゴリズムと、複数の変異の分布を描き分ける計算手法も開発しました。腫瘍内の変異の偏りを位置とともに観察できるようになります。

FrontJournalの解説
  • FFPE検体ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ組織標本を指す。病理診断で広く用いられ、室温で長期間保存して後から解析できる。

空間トランスクリプトーム解析の未来|病理とゲノミクスの融合による診断薬・治療薬の創出

空間解析が変える病理の未来|コロナ後遺症から診断薬・治療薬の創出へ|コロナ後遺症の・炎症を空間解析/タンパク質も・同時に解析/病理ゲノムの・データ基盤を目指す

コロナ後遺症の炎症を解析

福岡歯科大学らとの共著論文で同社は責任著者の一人として、コロナ後遺症の患者3名と健常者2名の上咽頭(鼻の奥の部位)を空間トランスクリプトーム解析で調べ、成果を『Scientific Reports』に発表しました。患者の上咽頭には新型コロナ由来のRNAが残り、免疫の情報伝達の経路が過剰に刺激されていました。上咽頭擦過療法(綿棒で薬液をこすりつける治療)の後は、このRNAが消失または大幅に減少しています。対象が少数のため、同療法が症状を和らげる可能性の提示にとどまります。

遺伝子とタンパク質を同時解析

同社は、遺伝子とタンパク質を同じ細胞から調べる受託解析を、2025年10月に始めました。この解析には、約340種類のタンパク質を測る抗体パネル「MultiPro Human Discovery Panel」を使います。2026年3月には、プログラミング不要でWebブラウザ上で使える解析ソフト「C-DIAM Multi-Omics Studio」の国内販売も開始しました。研究者自身が解析を進めやすくなります。

病理ゲノムのデータ基盤を目指す

病理とゲノミクス(遺伝情報の網羅的な解析)の融合による診断薬や治療薬の創出を目指しています。その手段として、2025年5月に「Singular Spatial GenomiX」の受託サービスを始め、共同研究を広げます。組織像と遺伝情報を組み合わせた病理ゲノムのデータベースを築くのが構想です。そのデータを基に診断法の開発や創薬に挑みます。

会社概要|CyberomiXの事業内容・設立背景

ゲノム解析の研究者らが創業

株式会社CyberomiXは、代表の渡辺亮氏らの研究チームを中心に、2023年1月に京都市西陣で創業した会社です。大学の研究成果を基にした会社ではなく、研究者の蓄積したノウハウを生かして事業を始めました。代表取締役の渡辺亮氏は、東京大学で博士(工学)の学位を取得し、京都大学iPS細胞研究所の特定拠点助教・主任研究員と、京都大学大学院医学研究科の特定准教授を経て創業しました。

認定と協業、受賞を得る

CyberomiXは、海外企業からの認定や協業を重ねています。2025年5月に米国のTwist Bioscience社から、高品質な実験結果を提供する事業者の認定「ProLab」を取得しています。2026年2月には代表の渡辺氏が滋賀銀行主催の「しがぎんイノベーションアワード野の花賞 2025」で特別賞を受賞し、同年3月には米国Pythia BioSciences社の解析ソフトを国内で販売する協業を始めました。

受託解析を軸に診断薬の創出へ

事業の中心は、シングルセル解析、空間トランスクリプトーム解析、次世代シーケンス解析(DNAやRNAの塩基配列を大量に読む手法)などの受託解析です。あわせて、先端ゲノミクス解析と病理解析を統合し、診断薬や治療薬の創出を目指しています。2026年9月時点で、社内には博士号取得者6名をはじめ、医師や臨床検査技師などの国家資格を持つ社員が在籍し、社員を遺伝子解析の専門家を意味する「遺伝師」と呼んでいます。

会社情報

会社名株式会社CyberomiX(サイバーオミックス)
所在地京都府京都市上京区上善寺町100番地 メサヴェルデ京都西陣1階
設立2023年1月
代表代表取締役 渡辺亮。取締役 永野恵嗣、谷嶋成樹
資本金350万円
事業医薬品の開発、研究受託サービス。シングルセル解析・空間トランスクリプトーム解析・次世代シーケンス解析の受託。解析ソフト「C-DIAM Multi-Omics Studio」の国内ライセンス販売
技術領域空間トランスクリプトーム解析。シングルセル解析。ゲノム変異と遺伝子発現の同時解析「Singular Spatial GenomiX」
連携Twist Bioscience(ProLab認定。2025年5月)。10x Genomics(Certified Service Provider・Preferred Service Provider)。Pythia BioSciences(C-DIAMの国内販売。2026年3月)。福岡歯科大学(コロナ後遺症の論文を共著。2025年3月に成果を発表)
採択しがぎんイノベーションアワード野の花賞 2025 特別賞(2026年2月に代表の渡辺氏が受賞)
URLhttps://cyberomix.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

病理の顕微鏡観察は長く、組織の形を見る作業でした。CyberomiXは、空間トランスクリプトーム解析で、同じ組織切片から遺伝子の働きという情報を引き出しています。形を見る観察に、細胞の状態を知る手がかりが加わりつつあります。

同じシングルセル解析の分野には、微生物のゲノムを受託解析する早稲田大学発のbitBiome株式会社もあります。CyberomiXが向き合うのは、患者の組織などの臨床検体です。対象は異なっても、細胞を1つずつ読み解く技術が、複数の分野の研究を支えています。

受託解析に加えて、病理とゲノミクスの融合から診断薬や治療薬を生み出す研究開発の会社へと歩みを進めています。組織の中で何が起きているかを場所ごとに読み解くデータが積み上がっていく未来を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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