Eサーモジェンテック|300℃以下の排熱を「熱電モジュール」で電気に変える、大阪大学との共同研究で技術開発を進めるエネルギー系ディープテック企業

株式会社Eサーモジェンテック(イーサーモジェンテック)

Eサーモジェンテック「熱電モジュール」を開発|研究領域=温度差を直接電気に変える/強み=配管に巻いて排熱から発電/将来性=排熱を工場と地域の電源に

企業紹介|Eサーモジェンテックとは?

工場や温泉の配管から出る300℃以下の熱を、電気に変える部品として、注目を集める「熱電モジュール」。Eサーモジェンテックは、大阪大学との共同研究で技術開発を進める、エネルギー系ディープテック企業です。同社は、配管に巻き付けられる熱電モジュール「フレキーナ」を開発し、IoTセンサ用の自立電源や、工場の排熱で発電する装置を提供しています。

キーワード「熱電モジュール」

「熱電モジュール」は、温度差を電圧に変える熱電素子を多数並べて1枚にした部品です。物質の両端に温度差をつけると電圧が生じる「ゼーベック効果」を使い、熱を直接電気に変えます。タービンのような回転する部品がなく、工場の配管や排ガスのダクトから出る熱を、電気として回収する手段として研究が進められています。

市場課題|排熱の多くは低温で電気に変えにくい

現状の排熱発電の課題|現状は、低温排熱の多くが未利用で電力も小さく割高/低温排熱の多くが未利用のまま/熱電発電は電力が小さく割高

低温排熱の多くが未利用のまま

工場や発電所から出る排熱の多くは300℃以下の低温排熱で、その大半が使われないまま捨てられています。一次エネルギー(石油や天然ガスなど、加工する前のエネルギー)の供給量の60%以上が排熱となり、その約75%が低温排熱という推計です。高温の排熱は水蒸気で回収する技術が実用化されている一方、低温排熱は回収の手段が限られ、このままでは多くのエネルギーが失われ続けます。

熱電発電は電力が小さく割高

熱電発電は古くから研究されてきましたが、低温排熱から得られる電力は、ミリワット(1000分の1ワット)程度と小さいとされてきました。電力が小さいため、設備の費用に見合う発電量を得にくく、割高な技術と考えられてきました。工場の電力を補えなければ、排熱を回収する設備への投資も進みにくくなります。

他にも、工場の無線センサの電池交換にかかる保守の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 低温排熱おおむね300℃以下の温度で環境中に捨てられる熱を指す。工場の温排水や排ガス、温泉の排湯などが含まれる。温度が低いため、水蒸気でタービンを回す従来の方法では電気として回収しにくい。

Eサーモジェンテックの強み|「熱電モジュール」を開発

Eサーモジェンテックが「熱電モジュール」を開発|現在は、曲げられる製品で排熱発電を提供/配管に巻ける熱電モジュール/配管の構造を生かしkW級発電

配管に巻ける熱電モジュール

従来の熱電モジュールは、熱電素子を硬いセラミックスの基板に載せた構造が主流で、丸い配管に密着させにくく、熱を十分に取り込めませんでした。

同社の「フレキーナ」は、樹脂の薄い基板に小さな熱電素子を高い密度で並べ、基板ごと曲げられるようにした熱電モジュールです。素子の材料は、電子機器の冷却用で量産の実績があるビスマス・テルル系の半導体で、半導体の実装技術で基板に取り付けます。配管の表面に沿って巻き付けるため、熱源から素子へ熱が伝わりやすい構造です。150℃以下の配管の熱から無線センサ用の電気を取り出せるようになり、工場ではセンサの電池交換の手間を減らせます。

配管の構造を生かしkW級発電

排ガスのような気体は熱を運ぶ力が小さく、配管の壁越しに熱を取り出す従来の方法では、熱が素子まで伝わりにくいという弱点がありました。

同社は、配管そのものに発電の部品を組み込む構造で、この弱点を補いました。水蒸気向けの「S2-Wシリーズ」は、内管と外管の間にフレキーナを挟んだ二重管で、内管の水蒸気と外管の冷却水の温度差で発電します。排ガス向けの「S2-Cシリーズ」は、管の中に入れた「集熱コア」で排ガスの熱を集め、素子へ導く構造です。製品の仕様では、水蒸気向けは1ユニットで6kWを出力でき、チューブの本数を変えれば、工場が捨てていた排熱の規模に合わせてkW級の電力を発電できます。回転する部品が無く、保守の手間が少ない構造です。

FrontJournalの解説
  • 熱電素子温度差を与えると電圧を生む半導体の小片である。p型とn型の素子を交互につなぐと温度差に応じて電圧が生じ、回路をつなぐと電流が流れる。多数を並べて1枚にしたものが熱電モジュールである。

熱電発電の未来|排熱が工場と地域の電源に

身近な熱電発電が変える未来|熱電発電が、センサから地域の電源へ広がる/センサの電池を排熱で代替/温泉の熱で街灯を点灯/排熱で動く分散型電源を目指す

センサの電池を排熱で代替

IoTセンサの電池を熱電発電に置き換える自立電源は、すでに製品になっています。同社は2024年9月に、配管に巻き付けて使う「S1αシリーズ」を発表し、同月から販売を始めました。村田製作所と協力して接続用の部品を開発し、村田製作所製のモータ監視用の振動センサの電池と差し替えられるようにしています。熱源とまわりに15℃ほどの温度差がある場所なら、電池を交換せずに多数のセンサで設備の状態を見守れるようになります。

温泉の熱で街灯を点灯

温泉の排熱で監視カメラや街灯を動かす実証も始まっています。2026年7月には、兵庫県新温泉町の湯村温泉「薬師湯」で、温水排熱利用自立電源「S1-P3」を温泉の配管に巻き付ける実証実験を始めました。2027年10月まで、発電の性能や耐久性のデータを集めます。電線を引きにくい屋外でも電源を確保できれば、観光地や公共施設の設備を身近な排熱で動かせるようになります。

排熱で動く分散型電源を目指す

同社が目指すのは、工場や地域の排熱を使った分散型電源の構築です。2025年には川崎重工業との共同開発で、175℃の水蒸気の排熱から6kWを発電する熱交換器を試作しました。この装置を並べれば数十kW規模の発電も可能になるとしており、小さな発電設備や蓄電池をまとめて制御する「VPP」(仮想発電所)の一部を担う構想です。排熱が電源として使われるようになれば、工場や地域は電力の一部を地元でまかなえるようになり、CO2排出の削減にもつながると期待されています。

会社概要|株式会社Eサーモジェンテック

熱電発電の事業化で創業

Eサーモジェンテックは、2013年2月に京都市で設立された、熱電発電の事業化を進める企業です。新事業の創出を手がけるアセット・ウィッツが設立しました。同年10月には大阪大学産業科学研究所の企業リサーチパークに拠点を置き、同研究所との共同研究でモジュールを開発してきました。現在は京大桂ベンチャープラザにも研究開発拠点を置いています。代表取締役は岡嶋道生氏が務めています。

NEDO事業と受賞で評価

同社の開発は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の複数の助成事業に支えられてきました。2024年2月には「NEDO省エネルギー技術開発賞」を、2024年12月には環境省の「環境スタートアップ大賞」で「環境大臣賞」を受けています。2026年4月には「S1αシリーズ」が、りそな中小企業振興財団の「中小企業優秀新技術・新製品賞」で優良賞に選ばれました。

増資を重ね製品化を推進

同社は、第三者割当増資(特定の相手に新しい株を割り当てる増資)を重ねて開発資金を調達してきました。2024年5月には、産業ガスを扱う山陰酸素工業から出資を受けています。2026年8月には、排ガス向けの「S2-Cシリーズ」が環境共創イニシアチブ(国の省エネルギー補助金の事務を担う団体)の補助対象設備に採択され、導入費用は、交付決定を受ければ中小企業で最大3分の2、大企業で最大2分の1の補助を受けられる可能性があります。

会社情報

会社名株式会社Eサーモジェンテック(E-ThermoGentek Co.,Ltd.)
所在地京都府京都市南区東九条下殿田町13 九条CIDビル102(本社)。R&D阪大拠点(大阪府吹田市・大阪大学産学共創D棟)。R&D桂拠点(京都市西京区・京大桂ベンチャープラザ)
設立2013年2月26日
代表岡嶋 道生(代表取締役)
資本金1億円(2025年3月時点)
事業熱電デバイスの研究・開発・製造・販売。熱電システムの開発・設計・製造・販売。IoT用自立電源「S1αシリーズ」、温水排熱利用自立電源「S1-P3」、水蒸気排熱利用の熱電発電チューブ「S2-Wシリーズ」、排ガス熱利用の熱電発電チューブ「S2-Cシリーズ」
技術領域フレキシブル熱電モジュール「フレキーナ」(ビスマス・テルル系熱電素子の高密度実装)、二重管構造と集熱コアによる排熱回収
連携大阪大学産業科学研究所(共同研究)。川崎重工業(水蒸気排熱向け熱電発電チューブの共同開発)。村田製作所(振動センサ用の接続部品)。兵庫県新温泉町(温泉排熱の実証実験・2026年7月〜)
採択NEDO省エネルギー技術開発賞(2024年2月)。環境スタートアップ大賞 環境大臣賞(2024年12月)。中小企業優秀新技術・新製品賞 優良賞(2026年4月)。J-Startup KANSAI(2022年10月)。NEDO 新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業 フェーズC(2025年度)
URLhttp://e-thermo.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

熱電発電は、動く部品なしに電気を生む技術として長く研究されてきました。ただ、電力の小ささから実用の場面は限られてきました。Eサーモジェンテックは、素子を曲がる基板に並べ、配管の形に合わせて熱を取り込むという発想で、その壁に挑んでいます。

興味深いのは、同じモジュールがセンサ1個を動かす小さな電源から、工場の電力を補うkW級の発電装置まで、幅広い規模に使われている点です。熱の量に合わせて素子の数や並べ方を変えられる点に、この技術の広がりがあると感じます。熱から電気を得る技術では、地下の熱で発電するFervo Energyのような企業も現れ、熱を電気に変える技術の選択肢が広がっています。

捨てられてきた熱が、工場や温泉地の身近な電源になる日がどこまで近づくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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