株式会社イムノセンス|金ナノ粒子を電極で測る免疫測定法「GLEIA」で迅速検査を開発する大阪大学発ディープテック

株式会社イムノセンス(IMMUNOSENS)

イムノセンス「GLEIA」を研究|研究領域=抗体と電流で測る免疫検査/強み=約10分でその場で結果/将来性=家庭用の機器も開発が進む

企業紹介|イムノセンスとは?

採取した1滴からその場で結果を得る技術として、注目を集める「GLEIA」。イムノセンスは、その「GLEIA」の社会実装を目指す、大阪大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。1滴の検体で測る使い捨てセンサ手のひらサイズの測定器を、診察室や救急の現場へ提供しています。

キーワード「GLEIA」(グライア/金結合電気化学免疫測定法)

「GLEIA」は、目的の物質に結びつけた金ナノ粒子を目印にして、その量を電極で測る免疫測定法です。特徴は、電極とごく小さな回路だけで、微量の物質を捉えられる点にあります。診察室や救急など、検査室から離れた場所でも、検体を検査室へ送らずにその場で測定できます。

市場課題|免疫検査は装置と時間を要する

現状の免疫検査の課題|現状は、感度と速さの両立が難しい/結果は後日で当日に決めにくい/簡易な検査は微量の物質が苦手

免疫検査は結果まで時間を要する

血液や唾液のタンパク質を測る免疫検査は、検体を検査室へ送ってから結果が返るのが一般的です。主流のELISA(酵素結合免疫吸着測定法)や化学発光免疫測定法は、多数の検体をまとめて処理するため、検査室の自動分析装置と専門の技師のもとで運用されているからです。結果が出るまでに時間がかかると、診察のその日のうちに治療方針を決めにくくなります。

簡易な迅速検査は感度が限られる

その場で測れる簡易な検査もありますが、微量の物質を捉える力は限定的です。妊娠検査などで使われるイムノクロマト法は、目視で色の変化を読むため、ごく低い濃度では判定が難しくなります。感度と手軽さの両立が難しく、素早い判断が要る救急や在宅では、測れる項目が絞られます。

他にも、装置の設置スペースと初期費用、検体を運ぶ輸送の手間、離島や在宅など検査室から遠い場所での対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • イムノクロマト法試料を吸わせた紙の上で抗体と結合させ、現れる色の帯を目視で読む簡易な検査法。専用の装置がいらず、採取したその場で短時間のうちに判定できる。

イムノセンスの強み|金ナノ粒子を電極で測る

イムノセンスが「GLEIA」を開発|今後は、電流で測り現場での判定が可能に/1滴を約10分でその場で測定/金の量を電流で微量まで捉える

その場で約10分で測定できる

光を読み取る従来の免疫測定は、発色や発光の反応を待つ時間と光学系を必要とするため、装置も大きくなりがちでした。

「GLEIA」は、抗体に付けた金ナノ粒子の量を電極で測る免疫測定法で、専用のセンサに検体を滴下してから約10分で結果が出ます。検出に使うのは電気化学の反応で、光を読み取るための部品も、発色を待つ工程もありません。検査に使う量は2〜20マイクロリットルで、いずれも指先から採る血液1滴でまかなえる量です。測定器は本体200g以下と小型で、リチウム電池で動きます。診察室や救急、往診の場に持ち込めるため、採ったその場で結果が得られます。

金ナノ粒子で高い感度を得る

目視で色を読む簡易な検査は、手軽である一方、低い濃度の判定が難しいという課題がありました。

「GLEIA」は簡素な構成のまま、高い感度を得ています。測定の仕組みの土台は、目的の物質を2種類の抗体ではさむサンドイッチ免疫測定法です。一方の抗体に金ナノ粒子を付け、その酸化と還元にともなう電流の変化を電極で読むため、光学系を持たない簡素な装置でも微量の差を捉えられます。検出できる下限の濃度は測定する対象によって変わりますが、対象によっては約1pg/mL(1mLあたり1兆分の1グラム)に達する水準です。測れる項目は抗体を替えることで増やせ、同社は心血管系を中心に対象の拡充を進めています。

FrontJournalの解説
  • サンドイッチ免疫測定法目的の物質を2種類の抗体ではさんで捕らえ、その量を測る免疫測定の方式。片方の抗体に標識を付けるため、標識の量が対象物質の量を表す。

GLEIAの未来|在宅と介護へ広げる検査

1滴で測るGLEIAが変える未来|医療から日常の健康の維持まで広がる検査/心不全を測る製品が認証を取得/尿や唾液のセルフ検査へ/在宅や介護へ測定が広がる

心不全の指標で認証を取得

イムノセンスの製品は、すでに体外診断用医薬品として実用の段階です。2022年5月には、炎症の指標であるCRP(C反応性タンパク)の製品をクラスⅠ体外診断用医薬品として届け出ました。心不全の指標であるNT-proBNPを測る製品は、2025年10月に、第三者の認証機関による審査が必要なクラスⅡ体外診断用医薬品の製造販売認証を取得しています。続く2025年11月には、高濃度域を測る「NT-proBNP(H)」も認証され、血栓の指標であるD-ダイマーを測る製品でも、認証事項の一部変更が認められました。

尿や唾液のセルフ検査を開発

次に見据えるのは、利用者が自分で測るセルフ検査です。2026年2月、キリンホールディングスと、尿中IgA(粘膜で病原体の侵入を防ぐ抗体)を指標に、免疫の状態を可視化するセルフ検査サービスの共同開発を始めました。血液は採取に器具と手技を要しますが、尿や唾液なら利用者が自分で採れます。2026年7月には唾液1滴を用いた実証実験も実施し、2027年以降のサービス提供を目指しています。

在宅と介護への普及を目指す

同社が目指すのは、体外診断用医薬品として認証を受けた迅速検査を、在宅医療や介護の現場へ広げることです。家庭用の測定器も開発しており、本体40g以下でスマートフォンとBluetoothで接続する仕様です。通院が難しい人にとっても、暮らしの場で心不全などの指標を確かめられます。「いつでも・だれでも・どこでも」測れる検査の普及を目指します。

会社概要|株式会社イムノセンスの事業内容

大阪大学の研究から事業化

イムノセンスは、2018年1月に設立された大阪大学発のスタートアップです。「GLEIA」は、大阪大学産業科学研究所の特任教授・民谷栄一氏が開発した技術です。代表取締役の杉原宏和氏は、自己測定血糖計など医療機器の開発に携わってきました。本社は、大阪府吹田市の国立循環器病研究センター内に置いています。

採択と共同研究で開発を推進

製品の開発は、公的な支援と研究機関との連携に支えられています。2021年10月にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発型スタートアップ支援事業に採択されました。最大助成額は7,000万円です。2024年5月からは国立循環器病研究センターのバイオバンクと血栓塞栓症の診断に関する共同研究を進めています。2026年8月には、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)と吹田市の補助事業にも採択されました。

シリーズB-2で5億円調達

資金面では、2023年2月にシリーズB-2ラウンド総額5億円を調達しました。シリーズBは製品を市場へ広げていく段階の調達といわれ、B-2はその追加にあたり、5億円は第三者割当増資と融資を合わせた総額です。増資の引受先は、KIRIN HEALTH INNOVATION FUND、凸版印刷(現・TOPPANホールディングス)、三菱マテリアルなど複数です。調達した資金は、測定項目の追加や大手企業との共同事業の開発に充てるとしています。2025年11月にも、Shimadzu Future Innovation Fundなどからの出資と、関西みらい銀行・三井住友銀行からの融資による調達を公表しました。

会社情報

会社名株式会社イムノセンス(IMMUNOSENS CO., LTD.)
所在地大阪府吹田市岸部新町6番1号 国立循環器病研究センター オープンイノベーションラボ 30602
設立2018年1月25日
代表杉原 宏和(代表取締役)
資本金3,000万円(公式サイト記載)
調達2023年2月にシリーズB-2ラウンドで第三者割当増資と融資を合わせ総額5億円。増資の引受先はKIRIN HEALTH INNOVATION FUND、凸版印刷(現・TOPPANホールディングス)、三菱マテリアル、住友ファーマアニマルヘルス、SMBCベンチャーキャピタルほか。融資は日本政策金融公庫(資本性ローン)。2025年11月にもShimadzu Future Innovation Fundなどの出資と、関西みらい銀行・三井住友銀行の融資による調達を公表
事業独自の免疫測定法「GLEIA」を用いた検査デバイスの開発・製造・販売。製品はGLEIAセンサとGLEIA測定専用測定器
技術領域GLEIA、金結合電気化学免疫測定法、免疫測定、バイオセンサ、電気化学測定、体外診断用医薬品
連携キリンホールディングスと、尿中IgAを指標とする免疫状態のセルフ検査サービスを共同開発(2026年2月発表)。国立循環器病研究センターのバイオバンクと血栓塞栓症の診断に関する共同研究(2024年5月開始)
採択NEDO 研究開発型スタートアップ支援事業(2021年10月〜2023年3月・最大助成額7,000万円)。第8回JEITAベンチャー賞(2023年3月)。Go-Tech事業・吹田市補助事業(ともに2026年8月)。許認可は体外診断用医薬品製造販売業許可(27E1X00006)ほか
URLhttps://immunosens.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

検査には、受けてから結果を聞くまでの待ち時間が当たり前にありました。検体を運び、大型の装置にかけ、後日あらためて説明を受ける。その順序は、装置の側の都合から生まれたものです。

イムノセンスが取り組むのは、単なる小型化ではなく、測る場所そのものを動かす試みです。金ナノ粒子を電極で測るという着想が、検査室に置かれていた機能を、診察室や救急車へ運べる大きさに変えました。心不全の指標が手元で読めるようになれば、患者と医師のやりとりも変わるはずです。

大阪大学の研究室で生まれた測り方が、検査を受ける人のそばまで届く日を楽しみにしています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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