2026.10.27 │ 理化学研究所 │ 元発表:2026.10.26

理研ら、細胞の「利き手」から生まれるセンチメートル級のスパイラルを発見

ニュース紹介

「多細胞集団によるキラリティの増幅~細胞の「利き手」がつくるセンチメートル級のスパイラル~」

理化学研究所生命機能科学研究センターの早川雅之研究員(研究当時)、バタチャージ・ビプラブ研究員、柴田達夫チームディレクター、筑波大学生命環境系の桑山秀一教授の共同研究チームは、集団の細胞数が時間とともに変化する「開放系」において、細胞運動のわずかな偏りから、センチメートルスケールの左右非対称構造が形成されることを発見しました。

研究チームは細胞性粘菌を用いて、細胞が1カ所から継続的に供給される開放系を構築しました。その結果、細胞集団は供給源の周囲に密度の高い環状領域を形成した後、時計回りに回転するセンチメートルスケールのスパイラル構造を自発的に形成しました。成果は科学雑誌『Nature Communications』オンライン版に2026年10月26日付で掲載されました。

出典:理化学研究所・京都工芸繊維大学・筑波大学 2026年10月26日 プレスリリース(掲載誌:Nature Communications/DOI: 10.1038/s41467-026-78179-4)
https://www.riken.jp/press/2026/20261026_1/index.html

FrontJournalの解説

細胞の「キラリティ」とは

今回のテーマは「キラリティ」(鏡に映した像と重ね合わせられない左右非対称な性質)です。左手と右手のように、分子から細胞、組織、個体まで幅広い階層で見られます。細胞の動きや形の左右の偏りは「細胞キラリティ」と呼ばれ、臓器や身体の左右非対称性の基盤に関わると考えられています。

これまでの多くの研究は、要素の数が一定の「閉鎖系」を対象としていました。実際の生物では、細胞の増殖や供給によって数が変わる開放系で組織がつくられるため、そこでの働きは明らかになっていませんでした。

①供給源から時計回りのスパイラルが育つ

実験では、走化性(化学物質の濃度に沿って動く性質)を示さない細胞性粘菌の変異株を使いました。寒天のくぼみに細胞を置いて供給源にすると、細胞は周囲に高密度の環状領域をつくり、そこから帯状の構造が時計回りに回転しながら広がりました。スパイラルの回転方向は一貫して時計回りでした。

②2つの性質と細胞の供給が増幅を生む

スパイラルの起源は、細胞同士が運動方向をそろえる「配向相互作用」と、個々の細胞がもつわずかな時計回りの細胞キラリティでした。細胞の方向転換の偏りは、1分間に時計回りに約2〜3度と微小です。

配向相互作用で動きがそろうと運動のランダム性が抑えられ、微弱なキラリティが表に出ます。これらを取り入れた数理モデルでもスパイラルが再現され、キラリティの強さが中間的な領域でスパイラルが現れることが分かりました。今後は、生体内の開放系での細胞集団の研究へ展開することで、組織や個体の左右非対称性の理解が進むと期待されています。

編集部からひとこと

細胞1個の偏りはランダムな動きに埋もれるほど小さいのに、集団になると目に見える大きさの渦になる。この点が今回の面白さです。左右非対称な体がどうつくられるかという基礎の問いに、物理の視点から答えを示した成果として注目したい研究です。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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