ベホマル|樹脂に混ぜてCO2を吸収する素材「美環」を開発するディープテック

株式会社ベホマル

ベホマル「CO2吸収プラスチック」を開発|研究領域=樹脂に混ぜて使う吸収材/強み=常温常圧でCO2を吸収/将来性=日常での回収を目指す

企業紹介|株式会社ベホマルとは?

樹脂に混ぜて、製品そのものにCO2を吸収する性質を与える素材として開発が進む「CO2吸収プラスチック」。株式会社ベホマルは、その社会実装を目指す、ナノテク・材料系ディープテック企業です。植物由来のCO2吸収材「美環」(びのわ)を軸に、樹脂製品や建材への展開を進めています。

キーワード「CO2吸収プラスチック」

CO2吸収プラスチックは、CO2を取り込む性質をもつ材料を樹脂に混ぜて成形した、プラスチック素材です。同社の吸収材を混ぜた製品は、常温常圧(室温・大気圧の環境)でCO2を吸収し、80℃以上に温めると放出します。吸収と放出は繰り返せるため、靴や建材などの身近な製品を、CO2を回収する場として使えるようになります。

市場課題|CO2回収は大型設備の中にとどまる

現状のCO2回収の課題|現状は、大型設備と加工条件の制約で身近に広がりにくい/CO2回収は大型設備が中心/混ぜる素材は加工条件に縛られる

CO2回収は大型設備が中心

DAC(大気中のCO2を直接回収する技術)は、専用の設備で大量の空気を処理し、CO2を分離して回収する方式が一般的です。回収の場は、設備を置ける大規模な施設が中心です。そのため、暮らしの中で回収に関われる場面は限られます。

混ぜる素材は加工条件に縛られる

回収材をプラスチック製品に取り入れるには、成形の工程で樹脂へ混ぜられることが条件になります。樹脂は種類ごとに加工する温度が決まっており、混ぜる材料がその温度に耐えられなければ使えません。添加した材料が、成形後の製品の中で機能を保てるかも、確かめる必要があります。

他にも、製品の強度や外観への影響、回収したCO2の扱い、量産時のコスト、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • DACDirect Air Captureの略で、大気中のCO2を直接回収する技術を指す。ファンで空気を取り込み、吸着材などでCO2を分離して回収する。

ベホマルの強み|「CO2吸収プラスチック」を開発

ベホマルが「CO2吸収プラスチック」を開発|現在は、樹脂への添加でCO2吸収材を提供/植物由来で吸収と放出を繰り返す/樹脂に混ぜて成形できる

常温常圧でCO2を吸う素材

CO2を吸収する材料には、専用の設備の中で使うことを前提としたものがあります。

同社が開発した「美環」は、植物由来の原料から作る白色粉末で、MOF(金属有機構造体=金属イオンと有機分子が規則正しく組み合わさった、微細な穴をもつ素材)の一種です。金属にはアルカリ金属の塩、有機分子には糖類を使います。常温常圧でCO2を吸収(同社の表記)し、80℃以上に温めると放出する性質です。この吸収と放出は、繰り返し行えます。専用の設備が無い場所でも、製品の素材そのものでCO2を取り込むことができるようになります。

樹脂に混ぜて成形できる

成形した製品へ機能をもつ材料を後から付ける方法は、別の工程が必要になり、製造の手間が増えます。

美環は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの樹脂に混ぜて使う、フィラー(樹脂に混ぜる粉末材)です。目安として200℃以下で加工する樹脂であれば混ぜられますが、ナイロンやポリエステルなどは対象外となります。ペレット(粒状に成形した樹脂原料)の「美環-p」は、PEとPP向けの製品です。樹脂へ練り込むため、既存の成形工程へ加えるだけで、製品そのものがCO2を吸収する素材を製造できるようになります。

FrontJournalの解説
  • フィラー樹脂などの母材に混ぜ込む粉末状の材料を指す。強度の向上や機能の付与を目的に添加し、混ぜる量や粒子の大きさで性質が変わる。

未来・導入事例|身近な製品がCO2回収の場になる

植物由来のCO2吸収材が変える未来|身近な製品がCO2回収の場になる/靴ひものロック部品に採用/建材と装飾品へ広がる/日常のCO2回収を目指す

靴ひもロック部品に採用

シューズブランドの「KEEN」(キーン)は、靴ひもを留めるロック部品に、美環を含む素材を採用しました。対象は「Bungee Shoelace Kit II」(靴ひもキット)で、2026年8月5日から順次発売されています。1足分の樹脂部品は約20グラムで、そのうち美環を含む材料は約2グラムです。この約2グラムの材料がもつ表面積は約2,200平方メートル(同社独自の試験条件による値)で、表面積が広いほどCO2と触れる面が増えます。

建材と装飾品への展開

木質建材の「DACストランドボード」(製品名)は、地域の間伐材と植物由来成分が主の接着剤に美環を混ぜて、圧着成形した国産の建材です。製造・設計・施工を担う地域の3社と同社が連携する体制で生まれました。装飾品では、メルシーが美環の提供を受け、天然石と組み合わせたブレスレット「Lazulith」を製品化しています。建材から身に着ける品へと、CO2を吸収する素材が使われる場面が広がっています。

日常のCO2回収を目指す

ベホマルは、事業の理念に「日常をCO2回収スポットに」を掲げています。樹脂コーティング剤の「美環-v」は、検証の段階です。靴底に使われる発泡体(樹脂を泡状に成形した素材)に美環を配合し、硬さや反発、耐久性などを評価する実証にも取り組んでいます。身近な製品が使われるだけでCO2を取り込む場になれば、CO2の取り込み拠点が専用の設備の外にも広がる可能性があります。

会社概要|株式会社ベホマル

2022年に滋賀県で創業

株式会社ベホマルは、2022年11月に設立されました。代表取締役の西原麻友子氏は、大手電子部品メーカーで15年間、研究開発職を務めたのちに創業した人物です。所在地は滋賀県草津市で、立命館大学びわこ・くさつキャンパスの起業支援施設(インキュベータ)内に拠点を置いています。

立命館大学との共同研究

同社は、2023年1月に立命館大学との共同研究を開始し、同年6月に同施設内へ研究室を開設しました。2024年8月には、立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合から、創業初期のシード期の資金調達を行っています。資金は、材料開発のための設備と人員の拡充にあてています。

採択と受賞の実績

環境省の令和8年度環境保全研究費補助金「イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業」では、フェーズ2(SBIR連結型。SBIRは中小企業の研究開発を支援する国の制度)に、「CD-MOF配合発泡体による環境負荷低減型材料の実製品実証事業」が採択されました。別の事業として、2025年度にSBIR推進プログラム(連結型)にも採択されています。内閣府の「女性のチャレンジ賞」も、2025年に受けています。2023年には、第8回滋賀テックプラングランプリで最優秀賞に選ばれました。

会社情報

会社名株式会社ベホマル(Behomal Co., Ltd.)
所在地滋賀県草津市(立命館大学びわこ・くさつキャンパス インキュベータ内)
設立2022年11月
代表西原 麻友子(代表取締役)
調達立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合から調達(2024年8月・シード)
事業バイオマスCO2吸収材「美環」の開発・製造・販売。CO2吸収プラスチックの展開
技術領域CO2吸収材、バイオMOF、樹脂用フィラー、MOFフォーム
連携立命館大学と共同研究(2023年1月開始)。KEEN、SWOOD、メルシーなどと製品化
採択環境省 環境保全研究費補助金 フェーズ2(令和8年度)/SBIR推進プログラム 連結型(2025年度)
URLhttps://www.behomal.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

CO2の回収は、大きな設備で行うものというイメージが先に立ちます。その役割を、靴の部品や建材のような日用品へ分散させるという発想が印象に残ります。同社の特徴は、植物由来の粉末を樹脂に混ぜて、製品がCO2を吸収する素材になる点です。

吸収した量や使用後の扱いなど、実際の効果を測る指標が整っていくかが今後の注目点です。実製品での実証が進むなか、素材の置き場所がどこまで広がるのかが焦点になります。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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