bionto「マイクロニードル」を開発

株式会社bionto(ビオント)

bionto「マイクロニードル」を開発

企業紹介|biontoとは?

皮膚の表面から薬剤などを届けるために使われる、微細な針状の構造「マイクロニードル」。株式会社biontoは、その社会実装を目指す、東北大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。電気の力で皮膚に一方向の水の流れを生み、薬液を送り込む高速浸透ニードル(PMN)デバイスの開発に取り組んでいます。

キーワード「マイクロニードル」

「マイクロニードル」は、皮膚に当てて使う微細な針状の構造で、薬剤や美容成分を皮膚の中へ届けるために研究されています。針を使う方式は、皮膚の最も外側にある角層を越えて成分を届ける方法の一つです。一方で、針に薬剤を塗る型や、針自体が溶ける型では、一度に届けられる量に限りがあります。

市場課題|皮膚から届けられる薬剤の量と速さに限りがある

現状の経皮投与の課題

角層が薬の通過を妨げる

皮膚から薬剤を届ける経皮投与では、皮膚の最も外側にある角層が、外からの異物を防ぐ壁として働きます。塗り薬や貼り薬の成分は、この層を通り抜けにくい性質があります。そのため、通過できる成分の種類は限られるといわれる状況です。

従来の針は量と速さが限定的

皮膚に刺して使う従来のマイクロニードルには、針に薬剤を塗る型や、針が溶けて薬剤を放つ型があり、届けられる量と速さに限りがあります。針に載せられる薬剤の量には上限があるためです。その結果、多くの量を短時間で届ける用途には、対応しにくくなります。

他にも、脆弱な薬剤を針に塗ることや内包すること、安定した状態で保存することが難しい場合がある、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 経皮投与皮膚を通して薬剤を体内へ届ける投与方法である。飲み薬と違って消化管を通らない。一方で、皮膚の角層が壁となり、通過できる成分は限られる。

biontoの強み|「マイクロニードル」を開発

biontoが「マイクロニードル」を開発

多孔質の針で皮膚へ送液

従来の経皮投与は、成分が角層を自然に通り抜けるのを待つ方式が中心です。

同社が開発する「多孔質マイクロニードル(PMN)」は、針の内部に微細な孔が連なる構造を持ち、皮膚の表面に当てて使うデバイスです。同社は、体を傷つけない非侵襲な投与を目指して、デバイスの開発を進めています。薬液は、針の孔を通って皮膚へ送られる仕組みです。成分が自然に染み込むのを待つのでなく、薬液を送る通り道を針の側に設けられる点が特徴です。これにより、皮膚から届けられる薬剤の種類や量の幅が広がる可能性があります。

電気浸透流で薬液を送り込む

塗布型や溶解型の針では、針に載せた分の薬剤しか届けられず、量と速さに限りがあります。

同社のPMNデバイスは、電気浸透流(電圧をかけると、帯電した壁面の近くの水が一方向へ動く現象)を利用する設計です。同社は、微小な多孔質マイクロニードルに電圧をかけ、皮内に一方向の水の流れをつくるとしています。この流れが皮膚に水の流れを生み、薬液を送り込む仕組みです。針に薬剤を載せる必要がないため、投与できる量が針の大きさに縛られにくい点が特徴です。これにより、必要な量の薬剤を、短時間で皮膚へ届けられる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 電気浸透流細い孔に電圧をかけたとき、帯電した壁面に沿って液体が一方向に動く現象である。ポンプのように液体を送り出せる。英語名はelectro-osmotic flowである。

マイクロニードルの未来|美容と医療への応用

非侵襲な投与が変える未来

美容向けに初披露

2026年9月25日、同社は、同月30日からの美容業界向けの展示会で、美容ブランド「OZMO(オズモ)」の第一弾「イオンジェクター アイセラム」を初披露すると発表しました。皮膚に刺さらない構造の微細なニードルに微弱な電流(マイクロカレント)を与え、成分を角層の奥まで届ける目もと用の美容液です。同社は、痛みやダウンタイムがなく、針を刺すことなく使えるとして、日々のスキンケアの延長として使えるとしています。2026年10月30日には、クラウドファンディングを通じた一般向けの提供が始まる予定です。

医療応用は開発段階

医療向けのPMNデバイスは、薬の局所投与や全身投与といった医療分野での活用を目指しているとされています。皮下の組織液(間質液)も採取できるとしています。2026年1月に契約を公表した東洋ビューティは、化粧品ODM(他社ブランド製品の設計・製造を受託する事業)のメーカーです。同社とは、美容向けの共同商品開発契約を結びました。

自宅で使える投与を目指す

自宅向けヘルスケアデバイスの社会実装が、同社の目指す姿です。美容領域を皮切りに、セルフケアとセルフメディケーション(自分で健康を管理し、軽い不調に対処すること)の普及に取り組む方針です。皮膚を傷つけずに薬剤を届け、間質液も採取できる仕組みが実現すれば、自宅でできることが増える可能性があります。美容から医療へ、段階的に広げる構想です。

会社概要|biontoの事業内容・設立背景

2025年に設立

株式会社biontoは、2025年3月3日に設立され、宮城県仙台市の東北大学マテリアル・イノベーション・センター青葉山ガレージ内に本社を置いています。代表取締役は、創業者の一人である妹尾浩充氏です。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、関連大学として東北大学が掲載されています。

同社は、生体イオントロニクス(生体内外のイオンの働きを電子的に制御する技術領域)の基盤研究をもとに設立されました。この研究は、東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授(同社 CSO:最高科学責任者)の研究をもとにしています。資本金は300万円です。

採択・連携

同社は、2026年9月に令和8年度のみやぎ中小企業チャレンジ応援基金事業に採択されました。2026年1月には、東洋ビューティと共同商品開発契約を結んだことを公表しています。同年4月には韓国のHAEWON T&Dと共同製品開発に向けた基本合意書(MOU)を結びました。

シードで6,000万円を調達

同社は、2025年9月25日に、総額6,000万円のシード資金を調達したと発表しました。PARTNERS FUNDを引受先とするJ-KISS型新株予約権(将来、株式に転換できる権利)の発行と、日本政策金融公庫および七十七銀行の創業融資を組み合わせた調達です。シードは、事業の立ち上げ期に行う資金調達段階にあたります。資金は、ホームヘルスケアデバイスの製品化、人材採用、事業開発に充てるとしています。

会社情報

会社名株式会社bionto(ビオント)
所在地宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468番地の1 東北大学マテリアル・イノベーション・センター青葉山ガレージ内
設立2025年3月3日
代表代表取締役 妹尾浩充
資本金300万円
調達シード(2025年9月に公表・総額6,000万円)。PARTNERS FUNDを引受先とするJ-KISS型新株予約権と創業融資の組み合わせ
技術領域多孔質マイクロニードル、電気浸透流、生体イオントロニクス
連携東洋ビューティ株式会社(2026年1月に共同商品開発契約を公表)、HAEWON T&D(2026年4月に基本合意書)
採択令和8年度みやぎ中小企業チャレンジ応援基金事業(2026年9月)
URLhttps://bionto.co.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

皮膚から薬剤を届ける技術は、針に載せられる量や速さの限界に向き合ってきました。bionto は、電気浸透流という水の流れを使い、薬液を皮膚へ送る別の道を選んでいます。美容向けの製品を第一弾に据え、生活の場で技術を磨いていく段取りも、興味深い取り組みです。

医療応用が実現すれば、自宅で使える投与や採取の選択肢が増える可能性があります。東北大学の基盤研究から生まれたこの技術が、美容から医療へどう広がっていくのか、今後の展開を見守りたい取り組みです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。