空港から離着陸する再利用型スペースプレーンを研究する Dawn Aerospace(ニュージーランド発)

宇宙輸送を身近にする「再利用型スペースプレーン」を研究【Dawn Aerospace|ニュージーランド発】

人工衛星の打ち上げが増える一方で、宇宙へ向かう機体の多くは1回の飛行で使い捨てにされています。この課題に挑むのが、ニュージーランドのドーン・エアロスペース(以下Dawn Aerospace)です。空港の滑走路から離陸し、同じ日にもう一度飛べる無人の「再利用型スペースプレーン」である「Mk-II Aurora」を開発し、2024年11月には超音速飛行を達成しました。2026年6月には、2,500万ドル(約38億円)の調達を発表しています。

宇宙輸送の課題

Dawn Aerospaceの紹介と、機体の使い捨てで費用が増大し、衛星燃料の取り扱いに手間がかかる課題を示す図

機体の使い捨てで費用が増大

宇宙へ向かうロケットの多くは、1回の打ち上げで機体の大部分を使い捨てにするため、輸送の費用が高くなっています。高度100km前後まで上がって短い無重力状態を作る観測ロケットも、飛行のたびに機体を失う方式が中心です。このままでは、宇宙で実験や観測をしたい大学や企業が、飛行の機会を十分に確保しにくい状況が続きます。

衛星燃料の取り扱いに手間

人工衛星の姿勢や軌道を変える推進機では、毒性の強いヒドラジンが燃料として広く使われてきました。ヒドラジンを扱うには、専用の防護装備や試験設備が必要になります。小型衛星の打ち上げが増えるなかで、燃料の準備にかかる手間と費用が衛星事業者の負担として積み上がっていきます。

  • 観測ロケット
    宇宙空間の手前まで上がって落ちてくる弾道飛行のロケット。数分間の無重力状態を使った実験や、大気の観測に使われる。
  • ヒドラジン
    人工衛星の推進機で長く使われてきた液体燃料。性能は高いが毒性が強く、給油のときは作業者が防護服を着る必要がある。

Dawn Aerospaceが「再利用型スペースプレーン」を研究

Dawn Aerospaceが研究する再利用型スペースプレーンが空港から発着して同じ日に再飛行でき、無毒の推進剤で衛星の準備が容易になることを示す図

課題解決に挑むDawn Aerospace

Dawn Aerospaceは、滑走路から離着陸するロケット推進の「再利用型スペースプレーン」と、人工衛星用の推進機を開発する企業です。2017年に設立され、ニュージーランドのクライストチャーチとオランダのデルフトに拠点を置いています。出発点はデルフト工科大学の学生団体「DARE(Delft Aerospace Rocket Engineering)」でのロケット開発で、共同創業者のイェルン・ヴィンク氏らがその成果を事業にしました。

空港発着で同じ日に再飛行

「Mk-II Aurora」は、飛行機と同じように通常の滑走路から離陸し、ロケットエンジンで上昇したあと滑走路へ戻る無人機です。2024年11月12日にはニュージーランドのグレンタナー飛行場から飛び立ち、マッハ1.1で高度約25kmに到達しました。地上から高度20kmまでを118.6秒で上昇し、1970年代に戦闘機F-15が作った記録を4.2秒更新しています。同社は約4時間で次の飛行の準備を整える設計を掲げており、同じ機体を1日に何度も飛ばせれば、飛行1回あたりの費用を抑えやすくなります。

無毒の推進剤で準備が容易

同社の衛星用推進機は、亜酸化窒素プロピレンという毒性のない推進剤を組み合わせて使います。ヒドラジンのような専用の防護装備や試験設備が要らないため、衛星に燃料を入れる作業を簡素にできます。これまでに200基を超える推進機が宇宙へ打ち上げられ、50機を超える人工衛星で使われています。衛星事業者は、燃料の準備にかかる手間と費用を抑えられます。

  • スペースプレーン
    飛行機のように翼を持ち、滑走路から離着陸して宇宙の近くまで飛ぶ機体。使い捨てのロケットと違い、同じ機体をくり返し使える。
  • マッハ
    音の速さを1とした速度の単位。マッハ1.1は音速の1.1倍にあたる。
  • 亜酸化窒素
    笑気ガスとも呼ばれる気体。医療の麻酔にも使われ、ヒドラジンに比べて扱いやすい。

再利用型スペースプレーンの未来

再利用型スペースプレーンが高頻度の宇宙実験を可能にし、衛星の運用延長を目指し、2,500万ドルの資金を調達したことを示す図

高頻度の宇宙実験が可能に

「再利用型スペースプレーン」が実用化すれば、無重力状態を使う実験を今より高い頻度で行える可能性があります。これまでは観測ロケットや国際宇宙ステーションの、限られた飛行の機会を待つ必要がありました。同社は「Mk-II Aurora」の設計値として、高度100km以上、約15kgの搭載物、最長127秒の微小重力の時間を示しています。材料や医薬品の研究者が、飛行機の便を選ぶような感覚で宇宙実験を計画しやすくなります。

衛星の運用延長を目指す

同社は、宇宙空間で人工衛星に燃料を補給する「Loop」の開発も進めています。「Loop」は、燃料を運んでドッキングする再利用型の宇宙機と、燃料を蓄えておく補給拠点で構成されます。2028年に両方を打ち上げて燃料の受け渡しを実証し、成功すれば2029年に商用サービスを始める計画です。燃料切れで役目を終える衛星が減れば、宇宙ごみの増加を抑えながら、通信や地球観測のサービスを長く使い続けられるようになります。

2,500万ドルの資金を調達

同社は2026年6月、シリーズBで2,500万ドル(約38億円)の調達を完了したと発表しました。調達後の企業評価額は1億9,500万ドル(約293億円)で、米Balerion Space Venturesが主導しました。日本からは、ANAホールディングスが出資者として参加するANA未来創造ファンドも出資しています。調達した資金で米国と欧州の営業・運用の体制を広げ、スペースプレーンと推進機を世界の顧客へ届ける体制を整えます。

  • シリーズB
    製品が市場に出たあと、事業を広げる段階で行う資金調達。創業直後のシードやシリーズAの次にあたる。
  • 微小重力
    重力の影響がほとんど感じられない状態。液体の混ざり方や結晶の育ち方が地上と変わるため、材料や医薬品の研究に使われる。

まとめ

「再利用型スペースプレーン」の利点は、空港の滑走路から同じ機体をくり返し飛ばし、宇宙へ近づく機会を増やせることです。Dawn Aerospaceは「Mk-II Aurora」で超音速飛行を達成し、衛星用推進機でも打ち上げの実績を積み上げてきました。高度100kmへの到達はこれからの目標ですが、2028年には軌道上での燃料補給の実証も控えています。日本でも航空会社グループのファンドが出資し、航空と宇宙をつなぐ動きが始まりました。FrontJournal編集部は、再利用型スペースプレーンが宇宙実験や衛星の運用を身近にすることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Dawn Aerospace の公式サイト各ページ、デルフト工科大学の記事、グローバル・ブレインのプレスリリース。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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