2026.10.09 │ 東京科学大学・東京大学・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.08

東京科学大学ら、ハイエントロピー酸化物触媒でメタン反応を低温化

ニュース紹介

「高性能なハイエントロピーランタノイド酸化物触媒を開発~従来より低温で安定したメタン酸化カップリング反応を実現~」

東京科学大学総合研究院フロンティア材料研究所の鎌田慶吾教授と、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の和知慶樹助教らの研究グループは、5種類以上のランタノイド元素を混ぜたハイエントロピー酸化物のナノ粒子触媒を、研究室独自のゾル-ゲル法で合成したと発表した。この触媒により、メタン酸化カップリング反応が600℃以下で進み、240時間にわたり触媒活性を維持したという。単一のランタノイド酸化物と比べて、エタンとエチレンの収率が高く、長時間安定して働いた。構成元素の平均イオン半径を指標に触媒表面の塩基性を系統的に制御でき、反応に有効な中程度の強さの塩基点を効率よく作れたとしている。従来の触媒は約800℃の高温を必要とし、長時間の反応で活性が低下することが課題だった。研究グループは、ハイエントロピー化による構造と塩基点の安定化が長寿命化につながる仕組みを明らかにした。成果は『Journal of the American Chemical Society』に掲載された。本研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業 CRESTの支援を受けた。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年10月8日 プレスリリース(掲載誌:Journal of the American Chemical Society/DOI: 10.1021/jacs.6c15276)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261008-3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

天然ガスの主成分であるメタンは、量が多く安価な炭素資源です。ただし分子の結合が強く反応しにくいため、多くは燃料として燃やされています。そこで、メタンを直接エチレン(プラスチックなどの原料になる基礎化学品)やエタンへ変える方法として研究されてきたのが、メタン酸化カップリング反応(メタン2分子を酸素の働きでつなぎ、炭素2個の分子をつくる反応)です。

この反応は1980年代初めに報告されて以来、多くの触媒が試されてきましたが、その多くは750〜850℃程度の高温で行われています。高温ではメタンが燃えて二酸化炭素と水になる反応も起こりやすく、目的の生成物を選んで得ることが難しいうえ、触媒も長時間の使用で劣化しやすくなります。

①多元素の混合で表面の性質を調整

ハイエントロピー酸化物(5種類以上の元素を混ぜ合わせた酸化物)は、元素の組み合わせを変えることで性質を細かく調整できる材料として、触媒分野で研究が進んでいます。今回の研究では、ランタノイド元素(周期表で原子番号57〜71の元素群)を組み合わせ、構成元素の平均イオン半径を目安に表面の塩基性を調整しました。反応に有効な中程度の強さの塩基点を効率よくつくれたことが、600℃以下での反応につながったとされます。

②長時間働く触媒への手がかり

化学プロセスで使う触媒には、活性の高さだけでなく、長く性能を保つことが求められます。今回の触媒は240時間にわたって活性を維持し、研究グループは、多くの元素を混ぜることで結晶構造と塩基点が安定し、寿命の延びにつながると結論づけています。反応温度を下げられれば、加熱に要するエネルギーや装置への負担を抑える方向にも働くと考えられます。一方で、今回の発表は実験室規模の成果であり、工業規模での収率や運転条件は今後の検証課題です。

編集部からひとこと

メタンから化学品をつくる研究は長い歴史を持ちながら、高温と触媒の劣化という壁が残ってきました。今回の成果は、元素の組み合わせという設計の自由度を使い、低温化と長寿命化を同時に狙った点に特徴があります。天然ガスを化学原料として活用する道を広げる研究として、今後の展開に注目したい成果です。

FrontJournal編集部

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