2026.08.26 科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.08.24

京都大学・九州大学、超分子ヒドロゲルで進行波による自律構築を実証

ニュース紹介

「生物に倣うスクラップ&ビルドの超分子建築~進行波による人工ソフト材料の空間制御~」

京都大学大学院工学研究科の浜地格教授(現エネルギー理工学研究所特任教授)、京都大学(現九州大学大学院工学研究院教授)の窪田亮講師らの研究グループは、ペプチドファイバーからなるヒドロゲル内に界面活性剤を拡散させ、濃度勾配に応じた分解と再構築のサイクルを進行波として伝播させることで、複雑な空間構造を自律的に組み上げる超分子建築の新手法を開発したと発表しました。従来の分子自己組織化は熱力学的に安定な均一で静的な構造しか作れないという制約がありましたが、本研究はその制約を非平衡な組み替えで乗り越えた成果です。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年8月24日 プレスリリース(掲載誌:Nature Communications/DOI: 10.1038/s41467-026-76336-3)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260824/index.html

FrontJournalの解説

超分子ヒドロゲルと自己組織化

超分子ヒドロゲルとは、共有結合ではなく水素結合や静電相互作用などの弱い力で分子同士が集まり、繊維状のネットワークを作って水を保持したゲル材料です。ペプチドや低分子が水中で自ら集合する自己組織化を利用するため、細胞培養の足場、薬物徐放、再生医療など、生体との相性が求められる用途で研究が進んでいます。

ただし、従来の自己組織化は最終的に落ち着く「熱力学的に最も安定な形」に向かって静的に集まるため、生き物の体内で見られるような複雑で動的なパターンを人工的に作ることが難しいという課題がありました。

①「作っては壊す」を波として伝える設計

研究グループは、ペプチドファイバーで作られたヒドロゲルの一端から界面活性剤を拡散させる仕組みを組み込みました。界面活性剤の濃度が高い場所ではファイバーが分解され、濃度が下がると再構築されるため、ゲル内で「分解と再構築」のサイクルが起きます。研究グループはこのサイクルが進行波としてゲルの中を伝わることを示し、波の通り道に沿って構造が組み替わっていくことで、非平衡状態のまま複雑なマクロ構造を作り分けられることを実証しました。

②生物に倣う「スクラップ&ビルド」型の材料

生き物の体内では、細胞骨格や組織が絶えず作られては壊されるスクラップ&ビルドのサイクルによって形が保たれ、変化しています。今回の手法は、この動的な組み替えを人工分子の系で再現するもので、ゲル内部で反応が伝わる方向や速度によって、出来上がる構造を切り替えられる点が特徴です。掲載誌はNature Communicationsで、次世代のソフトマテリアル設計指針として位置付けられます。

編集部からひとこと

本発表は非平衡状態を利用した分子構造制御の基礎研究であり、具体的な応用製品や実用化時期には言及されていません。ただし、動的に形が変わる材料設計の原理は、細胞培養の足場や刺激応答型ソフトロボットなど、静的な構造では実現しにくかった用途の研究基盤となる可能性があります。詳細な実験条件や解析データは、掲載誌および京都大学・九州大学・JSTの公式発表を参照してください。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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