EX-Fusion|燃料の粒にレーザーを照射して発電を目指すレーザー核融合の大阪大学発ディープテック

株式会社EX-Fusion(イーエックスフュージョン)

EX-Fusion「レーザー核融合」を研究|研究領域=レーザーで燃料を圧縮し発電する/強み=10ジュール・毎秒10回の照射を1時間続けて実証/将来性=発電の実証から商用炉の実現へ

企業紹介|EX-Fusionとは?

わずかな燃料から大きなエネルギーを取り出す技術として、注目を集める「レーザー核融合」。EX-Fusionは、その「レーザー核融合」の社会実装を目指す大阪大学発のエネルギー系ディープテック企業です。研究で培った高出力レーザーの制御技術を応用した加工システムと部品を、自動車や航空機の製造現場へ提供しています。

キーワード「レーザー核融合」

レーザー核融合は、燃料の粒に強力なレーザーを照射し、圧縮と加熱によって核融合反応を起こす、研究段階の発電方式です。特徴は、ごく短時間の反応を繰り返して発電するため、その回数で出力を調整できる点にあります。太陽光や風力の発電量が落ちる時間帯にも、需要に合わせて電力を送れます。

市場課題|脱炭素電源と核融合の実証

現状の脱炭素電源の課題|現状は、天候で出力が変動し調整しにくい/脱炭素電源は天候で出力が変動/核融合は連続運転の実証が課題

脱炭素電源は天候で出力が変動

電力の脱炭素化を担う主力は太陽光と風力ですが、発電量は天候と時間帯で変わります。需要が高まる時間帯に発電量が下がると、その不足を補う主力はいまも火力発電です。出力を調整できる脱炭素電源が増えなければ、電源構成の脱炭素化は進みにくくなります。

照射間隔が長く連続運転が難しい

レーザー核融合で発電するには反応を続けさせる必要がありますが、照射の間隔が長く、連続運転を確かめにくい状況が続いています。従来の大型レーザーは1時間に1発の照射が中心で、発電に求められるのは毎秒10回(0.1秒に1発)の照射です。この差が縮まらないかぎり、実験室で得た成果を発電所の運転へつなげにくくなります。

他にも、直径1ミリメートル前後の燃料ターゲットを大量に用意する難しさ、飛んでいる的へ焦点を合わせ続ける精度、反応で生じる熱を運転中に逃がす仕組み、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 核融合軽い原子核どうしが結びつき、より重い原子核に変わる反応。その際に大きなエネルギーを放出するため、燃料の量あたりの発生エネルギーが大きい次世代の発電方式として研究されている。

EX-Fusionの強み|毎秒10回の連続照射

EX-Fusionが「レーザー核融合」を開発|今後は、連続照射で繰り返し運転が可能に/反応の回数を変えて電力の量を調整/毎秒10回の連続照射を実証

反応を繰り返す方式で出力調整

核融合による発電では、磁場でプラズマを閉じ込める方式が主流です。この方式は長時間の連続運転を前提に設計されますが、出力を細かく増減させるには工夫を要するとされています。

レーザー核融合は、燃料の粒を1発ずつ照射して反応を起こし、それを毎秒繰り返す方式です。繰り返す回数を一定に保てばベースロード電源(一定量を供給し続ける電源)として、回数を増減させればピーク電源(需要が多い時間帯に出力を増やす電源)としても運用できるとされています。同社が土台に置くのは、大阪大学レーザー科学研究所が提案した高速点火方式実験炉「LIFT」の設計です。燃料ターゲットを炉の中心へ射出し、全方向からのレーザーで圧縮したうえで、別のレーザーで一点を加熱する仕組みです。

毎秒10回の連続照射を実証

実験の成果は1発ごとに評価されてきたため、装置を止めずに動かし続けたときの安定性を確かめる機会は限られてきました。

2025年7月、10ジュールのパルスレーザー(短時間だけ強く光るレーザー)を毎秒10回、1時間照射しました。支えるのはターゲット供給・追尾・レーザー制御の自社技術です。供給装置は、燃料の代わりの直径1ミリメートルの鉄球を真空チェンバー(空気を抜いた実験容器)へ射出し、落下位置と時刻をセンサーが読みます。ステアリングミラー(角度を変えられる反射鏡)で光路を合わせ、照射の誤差は約500マイクロメートルに収まりました。この実験とは別に、自社施設の連続照射でプラズマの継続的な生成を確認しています。

FrontJournalの解説
  • 高速点火方式燃料をレーザーで球状に圧縮したあと、別の短パルスレーザーで一点を集中的に加熱して反応を起こす方式。圧縮と加熱を分けて担わせるため、必要なレーザーの規模を抑えられるとされる。

レーザー核融合の未来|加工から発電へ

レーザー核融合が変える発電の未来|核融合の研究から加工まで、応用が広がる/レーザー加工で難加工材に対応/中性子を連続で発生させる検証へ/2030年の発電の実証へ

レーザー加工で難加工材に対応

核融合の研究で培った高出力レーザーの制御技術は、すでに産業用のレーザー加工の製品になっています。同社が開発しているのは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のような加工が難しい材料を、速さと仕上がりを両立して切断する技術です。加工システムのほか、光源や加工ヘッドといった部品の単体供給にも応じ、既存設備への組み込みも扱います。2025年3月には京都大学桂ベンチャープラザに拠点を設け、航空・自動車・エネルギーの各産業へ検証試験を提供しています。

中性子の連続発生を検証

次の目標は、核融合反応で生じる中性子(原子核を構成する粒子)を1時間以上連続して発生させることです。検証の場は、2024年4月に静岡県浜松市へ開設した自社の実証研究施設です。この施設ではターゲットの射出、追尾、照射を1つの装置系として動かし、統合した状態で実証を進めています。中性子が連続して出ているかどうかが、核融合反応が続いているかを確かめる指標になります。

2030年の発電実証を目指す

同社が目指すのは、2030年ごろの発電の技術的な実証です。そこでは毎秒10回の運転を長く続け、電力を取り出す装置を組み合わせる構成が必要になります。並行して進めているのが、電気を光へ変える効率が高い青紫色半導体レーザーの研究です。効率が上がれば、発電に必要なエネルギー増倍率(投入した分の何倍を取り出せるかを示す指標)は低くても発電が成立し、商用炉に求められる条件が下がります。

会社概要|EX-Fusionの事業内容・設立背景

大阪大学の研究から事業化

EX-Fusionは、2021年7月大阪府吹田市で設立されました。創業の中心となったのは、大阪大学で高速点火方式のレーザー核融合を研究してきた松尾一輝氏です。同氏は在学中からこの方式に取り組み、カリフォルニア大学サンディエゴ校でも研究しました。代表取締役CEOは松尾氏で、取締役ファウンダーの森芳孝氏がCTOとして技術開発を率いています。

国の事業と企業連携が進む

同社は、国の2つの事業に採択されて開発を進めています。2023〜2024年度には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」に採択され、CFRPのレーザー切断技術の開発が支援されました。2026年2月には、森氏がプロジェクトマネージャーを務める科学技術振興機構(JST)の「ムーンショット型研究開発事業」目標10のプロジェクトが始動しています。連続ターゲット照射実験は、浜松ホトニクスと共同で実施しました。東京科学大学とも協働研究の拠点を設けています。

累計約60億円を調達

同社は2025年10月時点で累計約60億円を調達しています。内訳は2023年7月のシードラウンドで18億円、2024年11月のプレシリーズAで11億円、シリーズAが累計約30億円です。シリーズAは2025年6月に総額約26億円、2025年10月の追加ラウンドで4億円を調達しています。シリーズAは、事業の核となる技術を実証する段階の資金調達にあたります。

会社情報

会社名株式会社EX-Fusion(EX-Fusion, Inc.)
所在地大阪府吹田市山田丘2-8 大阪大学テクノアライアンスC棟 C806。浜松開発拠点=静岡県浜松市中央区和地山3-1-7 浜松イノベーションキューブ。京都桂拠点=京都大学桂ベンチャープラザ
設立2021年7月
代表松尾 一輝(代表取締役CEO)。森 芳孝(取締役ファウンダー・CTO)
調達2025年10月時点で累計約60億円(シリーズAは累計約30億円)。内訳はシード18億円(2023年7月)、プレシリーズA 11億円(2024年11月)、シリーズA 約26億円(2025年6月・第三者割当23億円と融資3億円)、シリーズA追加ラウンド4億円(2025年10月)。引受先は大阪大学ベンチャーキャピタル、MPower Partners、EQT Foundation、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みやこキャピタル、デライト・ベンチャーズ、フジクラ ほか
事業レーザー核融合による発電の研究開発。レーザー加工事業=加工システムの構築、光源や加工ヘッドなどの部品供給、京都桂拠点でのサンプル加工と検証試験
技術領域レーザー核融合、慣性核融合、高速点火方式、ターゲット供給装置、ターゲット追尾、レーザー制御、高出力レーザー、CFRPのレーザー加工
連携浜松ホトニクス(大出力パルスレーザーの連続ターゲット照射実験)。東京科学大学(協働研究拠点・最終光学系と液体金属技術)。大阪大学レーザー科学研究所(共同研究部門)。光産業創成大学院大学(ターゲット追尾システム)
採択NEDO「ディープテック・スタートアップ支援事業」(2023〜2024年度)。JST「ムーンショット型研究開発事業」目標10(2026年2月始動・森芳孝氏がプロジェクトマネージャー)
URLhttps://ex-fusion.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

核融合は、巨大な実験装置遠い未来のイメージで語られます。同社が向き合うのは、もっと手前の課題でした。落ちてくる1ミリメートルの粒に、光をどう当て続けるか。

積み上げているのは、出力の記録ではなく、同じ動作を止めずに繰り返す実績です。1時間の連続照射は地味ですが、発電所は動き続けてこそ意味があります。運転の確からしさを先に取りにいった判断に、現実感があります。

大阪で生まれた技術が、浜松の装置と京都の加工現場を経て、電気という日常に届く日を待ちます。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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