サーモンテック|熊本大学発の「ウェアラブルエコー」を開発する医療機器系ディープテック企業

株式会社サーモンテック

サーモンテック「ウェアラブルエコー」を開発|研究領域=体に貼って使う薄いプローブ/強み=手で当てずに長時間撮影/将来性=自宅でのエコー検査を目指す

企業紹介|サーモンテックとは?

体に貼ったまま、体の中の様子を長時間撮影できる技術として、注目を集める「ウェアラブルエコー」。サーモンテックは、その社会実装を目指す、熊本大学発の医療機器系ディープテック企業です。薄くて柔軟なエコープローブを、医療・ヘルスケア・スポーツの現場へ届けるために開発しています。

キーワード「ウェアラブルエコー」

ウェアラブルエコーは、体に貼り付けたまま超音波で体内の様子を画像にする計測機器です。特徴は、プローブ(体に当てて超音波を送受信する部品)が薄く柔軟で、手で押し当てずに長時間の撮影ができる点にあります。健康管理やスポーツの現場で、体の中の状態をリアルタイムで確かめる用途が想定されています。

市場課題|エコーのプローブは長時間撮影と量産が難しい

現状のエコー検査の課題|現状は、手で当てるため長時間撮影が難しく、量産も困難/手で当てるため長時間撮影は困難/製造が一部手作業で量産しにくい

手で当てるため長時間撮影は困難

エコー(超音波診断装置)の検査では、プローブを手で持って体に押し当てる必要があり、長時間の撮影が困難です。エコーは、がん検診や血流の計測、胎児の成長の確認など幅広い場面で使われています。一方で市販のプローブは大きく重く硬く、部位によっては痛みや不快感を伴うため、体の変化を長い時間追いかける用途には不向きです。

製造が一部手作業で量産しにくい

市販のプローブは一部の工程を人の手で組み立てており、大量生産が難しい部品です。エコー装置の部品のうち、特別な製造工程を要するのはプローブだけといわれています。プローブが壊れると装置全体が使えなくなり、発展途上国では、故障した装置が使われないまま置かれる例もあるといわれています。

他にも、体重や腹囲の測定だけでは把握しにくい内臓脂肪、介護の現場での排便ケア、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • プローブ超音波診断装置のうち、体に当てて超音波を送り、体内で跳ね返った音を受け取る部品である。受け取った信号から断層画像がつくられるため、検査の画質と使い勝手を大きく左右する。

サーモンテックの強み|「ウェアラブルエコー」を開発

サーモンテックが「ウェアラブルエコー」を開発|今後は、貼るエコーで長時間撮影が可能に/薄く曲がるセンサを体に貼る/量産しやすい製法で価格を抑える

薄く曲がるセンサを体に貼る

従来のプローブは硬くて曲がらないため、体に押し当てると、体の側が押しつぶされた状態での撮影になります。

同社のプローブは、ゾルゲル複合圧電体(電気と振動を相互に変換する圧電材料の一種)を使う、薄く柔軟な超音波センサです。このため、プローブは体の曲線に沿って曲げられる構造です。心電図の電極パッドのように体に貼ったままにできるため、手で押し当てずに、長時間の撮影に対応できるよう設計されています。骨ばった部位や入り組んだ部位でも不快感を抑えて検査でき、体の変化を時間の経過とともに観察できるようになります。

量産しやすい製法で価格を抑える

市販のプローブは一部の工程を人の手で組み立てているため、大量生産が難しいとされています。

同社のプローブは、ラインを用意すれば10万個や100万個の単位でも生産ラインで量産できる作り方を採っていると、代表が述べています。大量に生産できるため、プローブを安く製造できるとしています。装置のうち電子基板やバッテリーは汎用の部品で、特別な製造工程が要るのはプローブだけです。故障したプローブを低い費用で交換できれば、病院の検査室に限らず、自宅やトレーニングの場へとエコーを使える場面が広がります。

FrontJournalの解説
  • 圧電体電圧をかけると形が変わって振動し、逆に振動や圧力を受けると電圧を生む材料である。エコーのプローブでは、電気信号を超音波に変えて体内へ送り、跳ね返った超音波を電気信号に戻す役割を担う。

未来|体に貼るエコーで医療とスポーツの計測が広がる

薄いウェアラブルエコーが変える未来|貼るエコーを病院から自宅の検査へ広げる/研究用の試作機を提供開始/医療機器として販売を計画/自宅で受けるエコー検査を目指す

研究用の試作機を提供開始

同社は2025年3月、NOK株式会社(自動車や電子機器向けの部品を手がけるメーカー)とウェアラブルエコーセンサの共同研究を始め、両社で研究開発用の試作機の提供を開始しました。試作機は、人体に着けることを前提にした、薄く軽く柔軟なセンサです。NOKが持つ生体に優しい導電性のゴムやFPC(折り曲げられる薄い電子回路基板)の技術を、同社のゾルゲル複合圧電体と組み合わせます。製品は、日常生活やスポーツの場面など、幅広い利用を想定して開発されています。

医療機器として販売を計画

両社は2025年3月の発表で、2026年に医療機器として販売する目標を掲げました。医療機器として販売するには、薬機法(医薬品医療機器等法)に基づく承認や認証などの手続きが必要です。想定する分野は医療・ヘルスケア・スポーツで、将来はクラウド上でのデータ活用やAI解析との連携も視野に入れています。疾患の早期発見やリハビリの効率向上、アスリートのパフォーマンス向上への活用が期待されています。

自宅で受けるエコー検査を目指す

同社が目指すのは、患者が自宅でエコーを使って計測し、医師がリモートで診断する医療です。胎内の赤ちゃんの様子を自宅で確かめることや、自宅での乳がん検査、内臓脂肪の計測も応用の候補です。壊れても交換しやすいプローブは、医療機器を導入しにくい発展途上国でも役立つ可能性があります。通院しなくても体の中の状態を確かめられるようになれば、病気の兆しに早く気づける機会が広がります。

会社概要|株式会社サーモンテック

熊本大学の超音波研究から創業

サーモンテックは、熊本大学で超音波を研究してきた田邉将之氏と、企業経営の経験を持つ山本千晴氏が共同で2022年3月に設立した企業です。田邉氏は博士(工学)を取得したのち、熊本大学大学院自然科学研究科の助教として超音波の研究に取り組み、株式会社CASTの取締役CTOも務めました。設立と同じ月に、熊本大学発ベンチャーの認定を受けています。現在は田邉氏が代表取締役、山本氏と本藤孝氏が取締役を務めています。

NEDO採択と表彰を重ねる

同社は設立直後から、国や自治体の支援制度への採択や、ビジネスコンテストでの受賞を重ねてきました。2022年4月にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「NEDO Entrepreneurs Program(NEP)」に採択され、同年7月には第7回熊本テックプラングランプリで優秀賞と「Taisho FRC賞」を受けました。2024年9月には、九州経済産業局による「J-Startup KYUSHU」の第3次選定で、熊本県から唯一の企業に選ばれています。

約1億円のシード調達を実施

同社は2024年6月、第三者割当増資で総額約1億円の資金調達を実施しました。シードラウンド(事業の立ち上げ期に行う初期の資金調達)にあたり、引受先はQB第二号投資事業有限責任組合と肥銀大学発ベンチャーシード投資事業有限責任組合です。同社は、この調達で医療機器とヘルスケアの事業化を一層加速するとしています。

会社情報

会社名株式会社サーモンテック(Salmontech Inc.)
所在地熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1 熊本大学SOIL 3-1室
設立2022年3月
代表田邉 将之(代表取締役・共同設立者)。山本 千晴(取締役・共同設立者)。本藤 孝(取締役)
調達約1億円(2024年6月・第三者割当増資)。引受先=QB第二号投資事業有限責任組合(運営:QBキャピタル合同会社・NCBベンチャーキャピタル株式会社)、肥銀大学発ベンチャーシード投資事業有限責任組合(運営:肥銀キャピタル株式会社)
事業医用超音波診断装置および周辺機器・ソフトウェアの開発。薄く柔軟なウェアラブルエコープローブの開発
技術領域ゾルゲル複合圧電体の製造技術、超音波センシング
連携熊本大学(熊本大学発ベンチャー認定・2022年3月)。NOK株式会社(ウェアラブルエコーセンサの共同研究・2025年3月〜)
採択NEDO Entrepreneurs Program(NEP)(2022年4月)。第7回熊本テックプラングランプリ 優秀賞・Taisho FRC賞(2022年7月)。FFGキューテックアクセラレーションプログラム(2022年8月)。熊本県 次世代ベンチャー創出支援事業化可能性調査委託事業(2022年10月)。FFGキューテック研究開発助成 ベンチャー企業・中小企業部門(2023年10月)。J-Startup KYUSHU(2024年9月)
URLhttps://www.salmontech.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

エコーは、体を切らずに中を見られる身近な検査ですが、多くの場合、プローブを手で当てている短い時間に使う装置でした。サーモンテックは、そのプローブを薄く柔らかくすることで、体に貼ったまま見続けるという新しい使い方を開こうとしています。検査の時間だけでなく、検査の場所まで変わる可能性を感じさせる取り組みです。

興味深いのは、プローブの柔らかさと量産しやすさを両立させようとしている点です。単に装置を小さくするのではなく、エコーを病院の外へ持ち出すための部品として作り直しています。熊本大学からは、熊本大学発スタートアップ10選で紹介したように、研究の成果を事業に育てる企業が生まれています。

自宅で体の中を確かめる日常が、どこまで近づいていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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