サウンドウェーブイノベーション「超音波治療」を開発|椅子に座ってヘッドセットを着けた人のイラスト

サウンドウェーブイノベーション株式会社

サウンドウェーブイノベーション「超音波治療」を開発|研究領域=アルツハイマー病に・低出力の超音波/強み=血管内皮に働き・座って照射を受ける/将来性=認知症以外の・疾患へも応用

企業紹介|サウンドウェーブイノベーション株式会社とは?

頭部への照射で認知機能の低下を抑えることを目指す治療として、注目を集める「超音波治療」。サウンドウェーブイノベーション株式会社は、その社会実装を目指す、東北大学発の医療機器系ディープテック企業です。早期アルツハイマー病の治療装置「LIPUS-Brain」を、医療機関向けに開発しています。

キーワード「超音波治療」

「超音波治療」は、超音波を体の外から当てて治療を目指す方法で、同社は低出力のパルス波超音波(LIPUS、断続的に出す超音波)を使います。特徴は、心エコー検査(心臓の超音波検査)と同程度の低い出力で、麻酔をせずに照射できる点にあります。照射は、ヘッドセット型の装置を着け、椅子に座ったまま受ける形です。

市場課題|患者が増える一方、点滴と検査の負担が続く

現状のアルツハイマー病の課題|現状は、患者が増え、点滴と検査の負担が続く|認知症の患者が・増え続ける/抗体薬は点滴と検査・通院の負担が続く

認知症の増加で治療需要が拡大

認知症の高齢者は増え続け、2040年には約584万人と推計されています。認知症の原因疾患の一つであるアルツハイマー病では、脳にアミロイドβ(Aβ、タンパク質の一種)が蓄積し、神経細胞が傷つくと考えられています。患者が増えるほど、治療の選択肢を広げる必要性は高まる一方です。

抗体薬は点滴と検査の負担

進行を抑える抗体薬(Aβに結合して除去する薬)のレカネマブは、点滴と検査の負担が伴う治療です。点滴は2週間に1回、約1時間です。投与前にはアミロイドPET(脳内のAβを画像で調べる検査)などでAβの蓄積を確かめ、投与中は副作用のARIA(アミロイド関連画像異常)を画像検査で調べる必要があります。投与は所定の要件を満たす医療機関で行うため、通院と検査の負担は続きます。

他にも、長期の通院、家族の介護負担、診断から治療へつなぐ体制の整備、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • アミロイドβ脳内で作られるタンパク質の一種である。凝集して蓄積すると神経細胞の働きを妨げ、アルツハイマー病の進行に関わると考えられている。抗体薬は、この蓄積を標的にする。

サウンドウェーブイノベーションの強み|「超音波治療」を開発

サウンドウェーブイノベーションが「超音波治療」を開発|今後は、低出力の超音波で治療が可能に|血管内皮細胞に・超音波で働きかけ/座ったまま・ヘッドセットで照射

血管内皮に働きかける超音波

進行の抑制を狙う既存の抗体薬は、脳内のAβを標的に除去する方式です。

同社の「LIPUS-Brain」は、250mW程度の低出力超音波を、32回の波を1組とするパルス波にして頭部へ照射する治療装置です。超音波の物理的な刺激は血管内皮細胞(血管の内側を覆う細胞)に働き、血管を広げる一酸化窒素を作る酵素(eNOS)の量を増やすとされています。その結果、Aβの蓄積の低減などが生じ、認知機能の低下を抑えると考えられている仕組みです。今後、検証的治験(最終段階の有効性試験)で有効性が確かめられ、承認を得た場合には、抗体薬とは作用の異なる治療を、患者が選べるようになります。

座ったままヘッドセットで照射

抗体薬の投与には、副作用のARIAを確かめる画像検査が欠かせません。

「LIPUS-Brain」は、ヘッドセット型の装置を頭部に装着し、椅子に座ったまま照射を受ける仕組みです。出力は心エコーなどの診断装置と同程度で、照射中の痛みはないとされ、麻酔も必要ありません。治験の照射は、1回20分を休憩をはさんで3回行う1セット(約1時間)を、1日おきに3セット行う1クールとし、12週間ごとに計6クール繰り返します。機器は小型で、医療機関の規模を問わず設置できるとされ、承認されれば、治療を受けられる場所が広がる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 血管内皮細胞血管の内側を覆う細胞である。血流の変化などの刺激を受けて、血管を広げる一酸化窒素を作り、血管の太さと血流を調節する。LIPUSはこの細胞に作用する。

超音波治療の未来|検証的治験の完了を予定し、他の疾患への応用を目指す

低出力の超音波治療が変える未来|治験の完了へ、他の疾患への展開も目指す|検証的治験で・220例を登録/2026年中の・治験完了を予定/他の疾患へ・応用を目指す

検証的治験で220例を登録

「LIPUS-Brain」の検証的治験は、2024年11月に目標の220例の登録を完了しています。対象は早期アルツハイマー病と軽度認知障害(認知症の前段階)の患者で、全国19施設が参加しました。先の探索的治験(少人数で安全性や有効性を調べる試験)では、安全性が確認され、有効性を示唆する結果が得られました。2022年9月30日には、厚生労働省の先駆的医療機器(承認審査で優先的に扱う制度)の第1号に指定されています。

2026年中の治験完了を予定

検証的治験は、2026年中の完了を予定しています。完了後は、住友重機械工業が薬事承認申請(国に製造販売を認めてもらう手続き)を行う予定です。2025年9月の発表時点では、承認取得後の2028年春ごろに販売する計画です。承認後は、全国の医療機関での治療開始を目指します。

他の疾患への応用を目指す

同社は、超音波や衝撃波といった音波を使う、低侵襲(体への負担が小さい)の治療技術を、認知症以外の疾患にも広げることを目指しています。重症狭心症(心臓の血管が狭くなる病気)では、LIPUSを使った医師主導の探索的治験の結果が、2023年6月に論文で発表されました。不整脈では、レーザー誘起衝撃波で原因となる心筋の一部の働きを止めるカテーテルアブレーション(細い管を心臓へ入れて行う治療)の開発を、スパークリングフォトン株式会社と2026年3月に基本合意して進めています。同社は、世界の人々の健康福祉の向上への貢献を、経営理念に掲げています。

会社概要|2020年設立の東北大学発企業サウンドウェーブイノベーション

東北大学の研究から事業化

サウンドウェーブイノベーション株式会社は、東北大学の研究成果をもとに、2020年4月1日に設立されました。同社は低侵襲の治療技術を事業化しており、創業者は東北大学名誉教授の下川宏明です。下川は2014年に認知症への応用を着想して基礎研究を始め、2018年には認知症のマウスモデルでの有効性と安全性を論文で発表しました。2025年4月1日からは、下川が代表取締役社長CEO・CMOを務めています。

住友重機械工業との提携と受賞

2025年9月には、住友重機械工業との資本業務提携(出資と業務の協力を組み合わせた提携)を発表しました。住友重機械工業が製造と販売を担い、サウンドウェーブイノベーションが検証的治験の推進と、機器に関する知的財産の使用許諾を担います。2025年5月には、東北大学循環器内科の論文が日本超音波医学会の学会賞(菊池賞)に選ばれました。同年10月には、同社がジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2025の最優秀賞に選ばれました。2026年3月には、東京都の外国特許出願費用助成事業(令和7年度)の採択を公表しています。

シリーズCで約26.5億円調達

2026年5月18日、同社は第三者割当増資(特定の相手に新株を割り当てる増資)によるシリーズC(研究開発の後期から事業化にかけて行われる資金調達のラウンド)で、総額約26.5億円の調達を完了したと発表しました。引受先は、Fiducia GrowthTech投資事業有限責任組合や住友重機械工業、iGlobe Partnersなどです。資金は、早期アルツハイマー病患者を対象とした検証的治験の完遂に使われます。

会社情報

会社名サウンドウェーブイノベーション株式会社(Sound Wave Innovation CO., LTD.)
所在地東京都千代田区大手町1丁目6番1号 大手町ビル6階 Inspired.Lab内。立川開発センター(東京都立川市)、仙台ラボ(仙台市青葉区)
設立2020年4月1日
代表代表取締役社長CEO・CMO 下川宏明(創業者・東北大学名誉教授)
資本金465,000,000円(公式サイト記載)
調達2026年5月にシリーズCで約26.5億円。引受先はFiducia GrowthTech投資事業有限責任組合、住友重機械工業、iGlobe Partnersなど
事業医療機器とその周辺機器の研究・開発・製造・販売。早期アルツハイマー病の治療装置「LIPUS-Brain経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置」を開発中
技術領域低出力パルス波超音波(LIPUS)、衝撃波アブレーションカテーテルシステム(SWCS)
連携東北大学(研究成果の事業化)、国際医療福祉大学(創業者が特任教授を務める)、住友重機械工業(2025年9月に資本業務提携を発表)、スパークリングフォトン株式会社(2026年3月に基本合意書を発表)
採択ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2025最優秀賞(2025年10月)。外国特許出願費用助成事業(令和7年度)に採択(2026年3月に公表)
URLhttps://sw-innovation.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

アルツハイマー病の治療というと、脳に蓄積したタンパク質を狙う薬が思い浮かびます。LIPUS-Brainは、頭に当てた超音波で血管の細胞に働きかけるという、別の切り口からこの病気に向き合う装置です。検証的治験の結果は、その切り口の有効性を測る材料になります。

認知症の領域は、研究の方向が広がる分野です。大阪公立大学発のセレブロファーマは、生薬などの植物素材を使った予防の研究を進めています。植物素材、抗体薬、超音波と、アプローチが分かれていく様子が見えてきます。

2026年中に予定される治験の完了は、同社にとって大きな節目です。患者と家族が選べる治療が増えていく日を、期待して待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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