2026.07.23
│
株式会社日立製作所
│
元発表:2026.07.22
日立、インテル・産総研と協力しシリコン量子コンピュータの研究開発を開始(FrontJournal解説)
ニュース紹介
「日立、学術実証から産業応用への展開の加速に向け、インテル株式会社および産業技術総合研究所との協力によりシリコン量子コンピュータの研究開発を開始」
日立製作所は、インテルおよび産業技術総合研究所(産総研)と協力し、シリコン量子ビットを用いた量子コンピュータの研究開発を開始したと発表した。本取り組みはNEDOの公募事業「社会課題解決に向けた量子コンピュータ次世代機開発・実証の加速」に採択されたもので、実施予定期間は2029年3月まで。日立が量子ビットチップの設計・製造・実装基盤技術の確立とシステム全体の統合を、インテルが18Aプロセス技術を活用した製造プロセスとプロセスデザインキット(PDK)の開発を、産総研がクラウドシステムの開発と公開運用を担う。100量子ビット向けのチップ設計・パッケージング技術やPDKの開発に加え、1,000量子ビット向けの3次元実装技術の開発を進め、2027年度にクラウド公開、2028年度に100量子ビット規模の試作機、2030年度に1,000量子ビット規模の試作機の実現を目指すとしている。
出典:PR TIMES(株式会社日立製作所) 2026年7月22日 プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000152541.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせや量子もつれといった性質を使って計算する新しい方式のコンピュータです。シリコン量子ビットは、半導体のシリコン上に電子1個のスピン(磁石のような性質)を閉じ込めて量子ビットをつくる方式で、既存の半導体製造技術(ファウンドリの微細加工)をそのまま活用できる点が特徴とされます。
量子コンピュータには超伝導方式やイオントラップ方式など複数の実現方式がありますが、シリコン方式は量子ビットのサイズが小さく、将来的に多数の量子ビットを一つのチップに集積しやすいと考えられています。実用的な計算には数千〜数百万の量子ビットが必要とされるため、集積のしやすさが重視されています。
①3社が役割を分けて開発する体制
今回の取り組みは、日立・インテル・産総研の3者がそれぞれの強みを持ち寄る形で進みます。日立が量子ビットチップの設計・製造と、複数の技術を束ねてシステムにまとめる統合を担当し、インテルは半導体の量子デバイスを作り込むための18Aプロセス技術(先端の半導体製造プロセス)とプロセスデザインキット(設計に必要な部品集)を提供します。産総研はでき上がった量子コンピュータを外部から使えるようにするクラウドシステムを開発し、G-QuAT(産総研の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)を通じて公開・運用します。半導体の製造技術と、それを計算機として動かすシステム開発を分担する構成です。
②100量子ビットから1,000量子ビットへの段階的な目標
開発は段階的なマイルストーンとして示されています。まず2027年度にクラウド公開、2028年度に100量子ビット規模の試作機、2030年度に1,000量子ビット規模の試作機の実現を目標に掲げています。1,000量子ビットに向けては、量子ビットチップを縦方向に積み重ねる3次元実装技術の開発も進めるとしています。研究段階の学術実証から、実際に産業で使える量子コンピュータへとつなげることが今回の目的に位置づけられています。
編集部からひとこと
量子コンピュータ開発というと超伝導方式が話題になりがちですが、シリコン方式は「いまある半導体の量産技術をそのまま使える」という現実的な利点があります。日立の設計・製造、インテルの先端プロセス、産総研の公開運用という分担は、それぞれの得意分野がはっきり分かれている点が印象的でした。掲げられた100→1,000量子ビットという数字はあくまで目標であり、実現に向けては量子ビットの精度(エラーの少なさ)をどこまで高められるかが鍵になります。今後の進捗を追っていきたいテーマです。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
この企業の方へ
内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。
掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら