そなえ「母子保健DX」を開発|スマートフォンで母子健康手帳を撮影するイラスト

そなえ株式会社

そなえ「母子保健DX」を開発|研究領域=母子健康手帳を・デジタルでつなぐ/強み=冊子を残して・情報をつなぐ/将来性=全世代向け手帳の・調査に参加

企業紹介|そなえ株式会社とは?

記録と連絡を途切れさせずにつなぐ技術として、注目を集める「母子保健DX」。そなえ株式会社は、その社会実装を目指す、岡山大学発の医療IT系ディープテック企業です。ハイブリッド母子健康手帳「ウィラバ」を自治体や医療機関向けに提供し、かつては妊産婦緊急搬送補助システム「iPicss」の普及も担いました。iPicssの事業は終了しています。

キーワード「母子保健DX」

「母子保健DX」は、母子健康手帳の記録や、妊産婦を搬送する医療機関どうしの連絡を、デジタルでつないで活用する技術です。同社の「ウィラバ」は、冊子の手帳の使いやすさを残したまま使えます。スマートフォンで撮影するだけで、記録をデータにできます。

市場課題|紙の記録と搬送時の連絡が分断され、母子の情報を活用しにくい

現状の母子の情報連携の課題|現状は、紙の記録とFAXで情報が活用されにくい|手帳の記録は・集めにくい/搬送の情報共有は・遅れやすい

紙の手帳は記録を活用しにくい

冊子の母子健康手帳に書かれた記録は、データとして集めにくく、将来の健康管理や予防医療に生かしにくい状態です。手帳には、妊娠中の経過や乳幼児の成長など、母子の健康を長く追える情報が詰まっています。このままでは、母子の将来の疾病予防に役立つといわれる記録が、活用されないままになりかねません。

搬送時の情報共有が遅れやすい

周産期(妊娠22週以降から生後7日未満の期間)の緊急搬送では、岡山県で従来、紹介状のFAX(ファクシミリ)送付や、搬送先への到着後の情報交換によって患者情報を共有していました。情報の伝え方が不便なうえに過不足も起きやすく、医療従事者の業務負担は大きくなります。受け入れる病院も、到着前に対応を準備しにくい状況です。

他にも、災害時の病院どうしの情報連携、感染症患者の搬送への対応、救急隊との情報連携、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 周産期妊娠22週以降から生後7日未満までの期間を指す。母子の生命に関わる緊急事態が高い割合で起こる時期とされ、搬送の判断が必要になる場面も多い。

そなえの強み|「母子保健DX」を開発

そなえが「母子保健DX」を開発|これまでに、紙とデジタルで情報連携を実現|撮影だけで・手帳をデータ化/撮影による・搬送情報の共有

撮影だけで手帳をデータ化

冊子の母子健康手帳は書き込みが手軽な一方で、記録をデータとして集めるには入力し直す作業が要ります。

同社のハイブリッド母子健康手帳「ウィラバ」は、冊子の手帳を残したまま、アプリで記録をデータにする仕組みです。利用者が手帳のページをスマートフォンで撮影すると、記録がデジタル化されます。健康診断や採血、超音波検査などの医療データも保存できます。電子化した記録は、RWD(リアルワールドデータ、実際の診療や生活で得られるデータ)との連携も可能にする仕組みです。冊子の使いやすさを保ったまま、記録を将来の予防医療に生かしやすくなります。

撮影による搬送情報の共有

紹介状のFAXは、受け入れ側が到着前に患者の状態を把握する手段として、限られていました。

岡山大学で開発され、同社がかつて普及を担った妊産婦緊急搬送補助システム「iPicss」は、搬送元の産科施設が専用の搬送用チェックシートに記入し、あらかじめ各施設に配備されたスマートフォンなどのカメラで撮影して、搬送先の病院へ送信する仕組みでした。受け入れ側は、到着前に受け取った情報をもとに、対応の準備を進められました。災害時の病院施設の状況を把握するための「災害モード」も備えた設計でした。医療機関どうしの連絡の手間を抑えられるようになっていました。

FrontJournalの解説
  • RWDリアルワールドデータの略で、実際の診療や日常生活の中で得られるデータを指す。現場の実態を反映するため、医療の研究や予防への活用が期待される。

母子保健DXの未来|自治体への導入と、全世代向け手帳の調査への参加

紙とデジタルをつなぐ母子保健DXが変える未来|県内の導入から全世代向け手帳の調査へ|吉備中央町と・県内施設に導入/全世代向け手帳の・調査に参加/産み育てやすい・社会を目指す

吉備中央町と県内施設に導入

ウィラバとiPicssは、岡山県内で導入されてきました。ウィラバは、2022年9月に吉備中央町が導入した母子健康手帳アプリで、導入後に予防接種スケジュールの作成や、一時保育の予約へと機能を広げています。2023年10月には、ウィラバ岡山全県版のリリースを記念する講座が開かれました。iPicssは、2019年に県の事業として岡山県内の全分娩(出産)取り扱い施設へ導入されましたが、2025年4月から休眠状態となり、現在は事業が終了しています。

全世代向け手帳の調査に参加

そなえは、全世代に交付できる「デジタル健康手帳」の調査に、構成員として参加しました。この調査は内閣府地方創生推進事務局の令和6年度の事業の一つで、代表者は岡山大学、対象は吉備中央町です。唾液検査の結果や歩行姿勢の測定結果といった健康データを、アプリで分かりやすく本人に返す仕組みが検証されました。紙とデジタルを併用することで、他の疾患や領域にも広げやすい交付のモデルを構築できたとされています。

産み育てやすい社会を目指す

同社は、ウィラバを軸に、安心して産み育てられる社会の基盤を全国へ広げることを目指しています。iPicssは、妊産婦の緊急搬送という場面でこの基盤の整備を担ったシステムで、現在は事業終了です。母子健康手帳のデータ化は、母子の将来の疾病を防ぐ先制医療(発症前に手を打つ医療)や、創薬(新しい薬の開発)、オーダーメイド医療(一人ひとりに合わせた治療)にも役立つ可能性があります。記録の蓄積が進めば、自治体や医療機関が母子一人ひとりに合った支援を検討しやすくなると期待されます。

会社概要|2020年に設立された岡山大学発の医療ITベンチャー

岡山大学の研究から事業化

そなえ株式会社は、2020年9月に設立されました。岡山大学発の医療ITベンチャーで、2017年3月に岡山大学で開発された妊産婦緊急搬送補助システム「iPicss」などを広く普及させることを目的に創業されました。創業者は正野隆士氏で、現在の代表取締役は、2026年5月1日付で就任した産婦人科専門医の大羽輝氏です。iPicssとウィラバの開発を担当した岡山大学病院の牧尉太氏は、同社の研究主任アドバイザーを務めています。

受賞と大手企業との連携

同社は、大手企業との提携と、コンテストでの受賞を公表しています。2020年11月に丸紅と丸紅新電力との、2022年10月に東京海上日動火災保険と東京海上日動あんしん生命との、戦略的パートナーシップ契約が、それぞれ公表されています。2021年11月には、「岡山イノベーションコンテスト2021」でグランプリを受賞しました。

代理店事業も併せて展開

同社は、新電力と保険の代理店事業を、医療機関や医療従事者に向けて展開しています。丸紅新電力とは、医療機関向けの電力小売メニューとiPicssの普及を組み合わせる形で提携しました。東京海上日動火災保険・東京海上日動あんしん生命とは、医療機関や医療従事者への保険の提案と合わせてiPicssを普及させる枠組みを組みました。ウィラバの利用者には、医療相談サービスやファイナンシャルプランナーへの無料相談が提供される内容です。

会社情報

会社名そなえ株式会社(SONAE Corporation)
所在地岡山県岡山市北区鹿田町2丁目5番1号 岡山大学病院鹿田会館SK102
設立2020年9月
代表代表取締役社長 大羽輝(2026年5月就任)。創業者は正野隆士
従業員8名
事業ハイブリッド母子健康手帳「ウィラバ」の開発。妊産婦緊急搬送補助システム「iPicss」の普及(現在は事業終了)。新電力の代理店事業。生命保険・損害保険の代理店事業
技術領域母子健康手帳の撮影によるデータ化。過去には妊産婦の緊急搬送情報の撮影による共有(事業終了)
連携岡山大学、吉備中央町(ウィラバを導入)、丸紅・丸紅新電力(2020年11月に公表)、東京海上日動火災保険・東京海上日動あんしん生命(2022年10月に公表)
採択岡山イノベーションコンテスト2021 グランプリ(2021年11月)
URLhttps://sonae.ltd/

編集後記|FrontJournal編集部より

紙の母子健康手帳は、持ち歩いて書き込める手軽さがある一方で、記録をデータとして生かす場面が限られがちです。ウィラバは、冊子を残したまま写真で記録をデータにするという、利用者の習慣を変えずに済む入口を選びました。冊子の良さを残す設計は、現場に受け入れられやすい考え方だと感じます。

そなえは、かつて搬送の連絡という緊急の場面を、いまは母子健康手帳という日常の場面を、同じ「情報をつなぐ」発想で扱ってきた会社です。同じ岡山大学発では、B型肝炎ウイルスの外殻から作るバイオナノカプセルを手がけるビークルが、薬を肝細胞へ届ける技術を開発しています。医療の現場に近い大学の研究から、事業が生まれる土壌が伝わってきます。

産む場所や暮らす地域が違っても、記録と連絡が途切れない。その土台が岡山から全国へ広がっていく日を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月3日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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