PRD Therapeutics「SOAT2阻害剤」を開発

PRD Therapeutics(ピーアールディー)

PRD Therapeutics「SOAT2阻害剤」を開発|研究領域=SOAT2だけを阻害する経口薬/強み=受容体なしで脂質を下げる/将来性=希少疾患から脂肪肝へ展開

企業紹介|PRD Therapeutics株式会社とは?

コレステロールの合成と吸収を抑える薬として、開発が進む「SOAT2阻害剤」。PRD Therapeutics株式会社は、その創薬に取り組む、北里大学発のバイオ系ディープテック企業です。経口薬「PRD001」を開発し、2025年6月に健常な成人を対象とする第1相試験を始めました。

キーワード「SOAT2阻害剤」

「SOAT2阻害剤」は、コレステロールを扱う酵素SOAT2の働きを選んで抑える薬です。SOAT2は、肝臓と小腸でコレステロールエステル(コレステロールが蓄えられる形)をつくる過程に関わります。阻害剤はこの働きを抑え、LDL-C(動脈硬化につながるコレステロール)の血中濃度を下げることを狙います。

市場課題|脂質代謝の異常が、血管と肝臓の病気につながる

現状の脂質代謝の病気の課題|受容体の変異で動脈硬化が進む/脂肪肝が進み肝硬変の恐れ

コレステロールが増え動脈硬化に

遺伝性の希少疾患「ホモ接合体家族性高コレステロール血症」(HoFH)では、発症頻度が17万〜30万人に1人とされ、血中のLDL-Cが幼少期から極めて高くなり、若くして動脈硬化が進みます。LDL受容体(血中のLDL-Cを取り込むタンパク質)が変異しているため、LDL-Cを取り込めず、血中に過剰にたまります。動脈硬化が進み、心筋梗塞などの危険が高まる点が、この病気の特徴です。

脂肪肝から肝硬変や肝がんへ

脂肪肝が進行すると、肝硬変や肝がんのリスクが高まります。この脂肪肝疾患「MASH/MASLD」(肝臓に脂肪がたまる病気)のうち、MASLDは世界の有病率が3割超で、患者数の多い病気です。

他にも、一般的な脂質異常症への対応、小腸でのコレステロール吸収の抑制、脂肪肝の進行の抑制、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • LDL受容体血中のLDL-Cを取り込む役割を持つタンパク質を指す。この受容体が変異で働かないと、LDL-Cが血中に過剰にたまり、動脈硬化が早く進む。

PRD Therapeuticsの強み|「SOAT2阻害剤」を開発

PRD Therapeuticsが「SOAT2阻害剤」を開発|受容体なしでLDL-Cを下げる/肝臓の脂質を下げ脂肪肝を抑える

受容体なしでLDL-Cを下げる

LDL受容体を欠くHoFHのモデルマウスにPRD001を投与したところ、血中と肝臓の脂質が下がりました。

PRD001は、SOAT2だけを選んで阻害する経口薬(口から飲む薬)です。肝臓でのコレステロールの合成を抑え、小腸での吸収を抑え、血中のLDL-Cを肝臓へ取り込む働きを促す、という3つの作用を、一つの薬で担います。LDL受容体に頼らない作用が特徴です。また、分子の小さい化合物(低分子薬)として設計されています。受容体が働かない患者でも、飲み薬で血中のLDL-Cを下げることができるようになる可能性があります。

肝臓の脂質を下げ脂肪肝を抑える

SOATの2種類(SOAT1とSOAT2)の両方を阻害した薬では、LDL-Cの上昇や心疾患の増加が見られ、相次いで開発が中止されました。

LDL-Cの上昇などの原因は、SOAT1の阻害と考えられています。SOAT2を欠くマウスでは、小腸と肝臓での脂質の合成が下がり、動脈硬化と脂肪肝が改善しました。PRD001は、SOAT2に選択的に働く化合物で、経口薬として開発されています。MASH(脂肪肝が進んだ状態)のモデルマウスでは、血中と肝臓の脂質が下がり、脂肪肝の進行が抑えられました。肝臓の脂質を直接減らせれば、脂肪肝から肝硬変へ進む流れを抑えられる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • SOAT1SOATの2種類のうち、SOAT2とは別の酵素を指す。SOAT1を欠くマウスで、動脈硬化の病変の増加などの毒性が報告され、過去の両方を阻害する薬の中止の原因と考えられている。

SOAT2阻害剤の未来|希少疾患から脂肪肝、脂質異常症へ

SOAT2阻害剤が変える未来|ヒトでの第1相試験を開始/希少疾患の次は脂肪肝へ拡大/脂質代謝疾患全般を目指す

ヒトでの第1相試験を開始

PRD001は2025年6月に、健常な成人のボランティアを対象とする第1相試験(薬を初めて人に投与し、安全性などを調べる試験)を開始しています。試験では、安全性と忍容性(副作用などへの耐えやすさ)、薬の体内での動き、効果の兆しを評価します。効果の兆しの指標は、LDL-Cの低下と、MRI(磁気を使って体内を撮影する検査)で測る肝臓の脂肪量です。予定する参加者は86人です。

HoFHの次にMASHへ広げる

PRD001は、HoFHの次にMASHとMASLDへ対象を広げる計画です。HoFHは世界の患者数が2万〜5万人程度の希少疾患で、MASLDは患者数の多い疾患に当たります。対象を広げる根拠は、MASHのモデルマウスで血中と肝臓の脂質が下がり、脂肪肝の進行が抑えられた結果です。開発中の薬の一覧では、PRD002もHoFHとMASHを対象にしています。

脂質代謝疾患全般を目指す

PRD Therapeuticsは、一般的な脂質異常症を含む、脂質代謝に関わる病気全般への展開を目指しています。開発中の薬には、SOAT2を標的とするPRD003と、PCSK9(LDL受容体を分解するタンパク質)を標的とするPRD004があり、PRD004の対象は脂質異常症などです。SOAT2の働きを選んで抑える薬が実現すれば、脂質代謝の病気に対する治療の選択肢が広がります。まず希少疾患のHoFHで有効性と安全性を確かめる段階を踏みます。

会社概要|北里大学の研究から生まれたPRD Therapeutics

北里の研究から創薬ベンチャーへ

2021年9月設立の、北里大学薬学部発の創薬ベンチャーです。1993年に、供田洋氏らが北里研究所で、真菌の培養液からピリピロペンA(PPPA)を発見しました。2003年にSOAT2を選んで阻害する性質が確認され、2011年にPPPAを改良して、PRD001に仕上げる最適化が行われました。代表取締役社長は細田莞爾氏です。

採択と受賞、学会発表を重ねる

2022年度に、AMED(日本医療研究開発機構)の希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業に採択されました。2024年度には、AMEDの創薬ベンチャーエコシステム強化事業に採択されています。2025年11月発売のForbes JAPAN 2026年1月号では「2026年注目の日本発スタートアップ100選」に選ばれ、2026年にはEASL Congress 2026でポスター発表を行いました。

シリーズAで13億円を調達

2022年6月にシードラウンドを実施し、2023年10月のシリーズAで総額13億円を調達しました。シリーズAは、研究成果をもとに、臨床試験などの開発を本格的に進める段階の資金調達にあたります。引受先は、大鵬イノベーションズ、ジャフコグループ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルです。

会社情報

会社名PRD Therapeutics株式会社
所在地東京都港区白金5-9-1 北里大学白金キャンパス 1506
設立2021年9月
代表代表取締役社長 細田莞爾
調達シリーズA 総額13億円(2023年10月)。引受先は大鵬イノベーションズ、ジャフコグループ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル
事業SOAT2選択的阻害剤を中心とする、脂質代謝制御剤の研究開発
技術領域SOAT2選択的阻害剤による脂質代謝の制御(経口薬PRD001ほか)
採択AMED 希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業(2022年)。AMED 創薬ベンチャーエコシステム強化事業(2024年)
URLhttps://prdtherapeutics.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

PRD Therapeuticsの「SOAT2阻害剤」は、コレステロールの合成、吸収、取り込みという別々の流れを、一つの酵素への働きかけで扱おうとする試みです。SOAT2は、肝臓と小腸の両方で脂質の流れに関わる酵素です。血管の病気と肝臓の病気を同じ入口から見る発想に、期待します。

1993年に見つかった化合物が、30年以上を経て、ヒトへの投与を始める段階に進みました。大学の基礎研究が創薬へ育つ長い道のりを感じます。まだ安全性などを確かめる初期の段階ですが、希少な難病の患者にとって、新しい選択肢の候補が現れた意義があると考えます。

試験の結果が積み重なり、HoFHからMASHへと対象が広がっていくことを期待します。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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