北海道バイオインダストリー「BRC製法」を研究|タマネギの辛味を旨味と機能成分に変える加工法を描いたイラスト

株式会社北海道バイオインダストリー

北海道バイオインダストリー「BRC製法」を研究|研究領域=タマネギの辛味を・機能成分に変える/強み=目的の成分を・選んで作り出す/将来性=農水産物の・用途を広げる

企業紹介|株式会社北海道バイオインダストリーとは?

タマネギの辛味を旨味と機能成分に変える技術として、注目を集める「BRC製法」。株式会社北海道バイオインダストリーは、その社会実装を目指す、東海大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。機能性調味料「北海道タマネギドレッシング」などを、家庭の食卓や食品メーカーへ提供しています。

キーワード「BRC製法」

「BRC製法」(バイオラショナルコントロール)は、ネギ属(タマネギやネギの仲間)の植物がもつ酵素とアミノ酸の反応を制御して、辛味成分を旨味と機能成分へ変える加工法です。特徴は、植物がもつ防御の仕組みを利用し、目的の成分を選んで作り出せる点です。家庭の調味料に用いれば、毎日の料理にかけるだけで機能成分を摂取できます。

市場課題|健康に役立つ成分は、毎日続けて摂ることが難しい

現状の機能成分の摂取の課題|現状は、続ける負担の重さで摂取が途切れる|認知機能の維持は・続けにくい/タマネギの成分は・摂りにくい

認知機能の維持は続けにくい

認知機能の低下を抑えるための習慣は、毎日続けること自体が難しいといわれています。厚生労働省の研究班の推計では、2025年の認知症の高齢者は約472万人で、65歳以上の約12.9%にあたります。高齢化とともに食生活や運動の習慣は保ちにくくなり、なかでも食事とは別に摂る習慣ほど途中で途切れやすいです。

野菜の機能成分は摂りにくい

野菜がもつ機能成分は、そのまま食べるだけでは十分な量を摂りにくいです。タマネギの硫黄化合物(辛味のもとになる成分)は、切ったときに酵素が働いて生じるため、生のままでは辛味が強く出ます。辛味が強いほど一度に食べられる量は限られ、必要な量に届きにくいです。

他にも、収穫した年で変わる原料の品質のばらつき下ごしらえの手間、産地から離れた加工場までの輸送の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 機能成分栄養素としての働きとは別に、体の調子を整える作用があるとされる食品中の成分を指す。含まれる量が少なく、調理で失われるものも多いため、食品の形で摂り続けることが難しい。

北海道バイオインダストリーの強み|「BRC製法」を開発

北海道バイオインダストリーが「BRC製法」を開発|今後は、調味料で機能成分の摂取が可能に|毎日の調味料で・摂り続ける/酵素反応で・辛味を旨味へ

毎日の調味料で摂り続ける

機能成分を補う手段として広く使われているのは、粒やカプセル状のサプリメントです。食事とは別に摂る習慣が要るため、続かなくなると摂取そのものが途切れます。

同社が選んだのは、食卓の調味料そのものに機能成分を持たせる方法です。主力の「北海道タマネギドレッシング」には、さいの目に切った加工タマネギを1本あたり約50g配合しています。サラダのほか、しゃぶしゃぶやローストビーフ、魚介のマリネにもかけられる和風の醤油ベースに仕上げ、毎日の料理に使えるようにしました。サプリメントを別に用意する手間が要らなくなり、いつもの食事のまま機能成分を摂り続けられるようになります。

酵素反応で辛味を旨味へ

ネギ属の野菜の辛味のもとになる硫黄化合物揮発しやすく、通常の調理では機能成分ごと失われやすいです。

「BRC製法」は、タマネギが持つ酵素アミノ酸の反応を、温度と時間の管理で進める加工法です。原料に選ぶのはもみじ系(辛味成分が多い品種)のタマネギで、その辛味が反応の材料です。この反応で「DPTS」(ジプロピルトリスルフィド)が生まれ、その生成量は従来のペーストやソテーの5倍から15倍以上とされています。辛味を抜かずに活かせるため、生では辛くて食べにくいタマネギを、毎日の食事でおいしく摂取できます。

FrontJournalの解説
  • DPTSジプロピルトリスルフィドの略で、タマネギの硫黄化合物が反応して生じる成分である。記憶をつかさどる脳の海馬で、加齢による酸化を防ぐ働きがあるとされる。

「BRC製法」の未来|北海道の農産物を機能性食品へ広げる

北海道の「BRC製法」が変える未来|農水産資源を活かし健康寿命の延伸を目指す|地域の農水産物を・調味料へ展開/未利用の資源を・原料に活用/健康寿命の・延伸を目指す

地域の農水産物を調味料へ

タマネギドレッシングのシリーズは、北海道各地の農水産物を使った調味料に広がっています。2016年9月に加えたのは、「北海道深み玉葱ドレッシング」の羽幌甘エビ香味ととうもろこし香味の2品です。2020年4月の山わさびのように、素材を替えた品目も増えています。産地ごとの素材を使う商品は、地域の農水産物の売り先になります。

未利用の資源を原料に活用

同社は、使われずに残る農産物の部位を原料にする開発を進めています。2018年3月には、捨てられることの多かったかぼちゃの種から搾った食用油を発売しています。北海道産の小果樹アロニアでは、果汁を搾ったあとに残る搾りかすを使う機能性食品の開発に取り組んできました。捨てられていた部位が商品になれば、生産者の収入源も広がります。

健康寿命の延伸を目指す

同社が目指すのは、「北海道の農水産資源を活かした食品で、健康寿命の延伸に役立つこと」です。生活習慣病の予防を狙った機能性食品と機能性志向食品(日常の食事の形で機能成分を摂れる食品)を、研究開発から販売まで一貫して手がけています。ヘルシーDo(北海道食品機能性表示制度)の認定を受けた商品もあり、道内の制度と歩調を合わせて広げてきました。生産から加工、流通までを地域でつなぐ形は、農業と食品産業の結びつきを強めます。

会社概要|株式会社北海道バイオインダストリーの事業内容・設立背景

異業種交流から1997年に設立

株式会社北海道バイオインダストリーは、1997年9月に札幌市で設立されました。出発点は、北海道東海大学(現・東海大学)の西村教授らの研究シーズ(事業化の種となる研究成果)をもとに、北海道中小企業家同友会の異業種交流部会「一水会」で立ち上がった起業化プロジェクトです。会員企業などの共同出資で有限会社として発足し、1999年1月に株式会社へ組織を変えています。創業者佐渡 宏樹氏の死去に伴い、2015年10月から村上 季隆氏が代表取締役を務めています。

補助事業の採択を重ねる

国や自治体の補助事業の採択を重ねてきました。2010年12月と2012年7月には、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業に採択されています。2014年7月には、経済産業省と農林水産省の農商工連携事業として、北海道産タマネギを使う調味料の開発・製造・販売が認定されました。このほか、2006年と2014年の北海道地方発明表彰、2015年のものづくり日本大賞などを受けています。

増資を重ね生産体制を整備

開発と生産の体制は、増資を重ねて整えてきました。設立時の資本金310万円から、2000年12月に2,060万円、2014年1月に3,060万円へ増やしています。事業の柱は、機能性食品と機能性志向食品の研究開発・製造・販売と、他社向けのOEM(相手先ブランドによる製造)の規格開発です。札幌市の本社とは別に、夕張事業所に食品加工研究所と試験農園を置いています。

会社情報

会社名株式会社北海道バイオインダストリー(Hokkaido Bio-Industry Corporation)
所在地〒062-0937 北海道札幌市豊平区平岸7条14丁目3-43。夕張事業所:〒068-0424 北海道夕張市千代田9-4
設立1997年9月(有限会社として設立)。1999年1月に株式会社へ組織変更
代表代表取締役:村上 季隆(2015年10月就任)。創業者:佐渡 宏樹(2015年10月死去)
資本金3,060万円(2014年1月増資)。法人番号 8430001025359
従業員10名(パート含む)
事業北海道の農水産資源を活用した機能性食品・食素材の研究開発および販売。機能性食品・機能性志向食品のOEM規格開発。主な製品は「北海道タマネギドレッシング」「北海道深み玉葱ドレッシング」「北海道のかぼちゃの種から搾ったオイル」
技術領域ネギ属植物の酵素とアミノ酸の反応を温度と時間で制御し、タマネギの辛味成分を旨味と機能成分(DPTS)へ変える加工法「BRC製法」
連携北海道東海大学(現・東海大学)の研究成果をもとに設立。北海道中小企業家同友会 異業種交流部会「一水会」会員企業などの共同出資。北海道庁「令和3年度北海道地域食農連携プロジェクト」参画(2022年3月)
採択戦略的基盤技術高度化支援事業(2010年12月/2012年7月)。経済産業省・農林水産省 農商工連携事業(2014年7月)。北海道地方発明表彰 特許庁長官奨励賞(2006年9月)・中小企業庁長官奨励賞(2014年10月)。第6回ものづくり日本大賞 ものづくり地域貢献賞(2015年10月)。北海道食品機能性表示制度「ヘルシーDo」認定(2014年2月/2015年3月)
URLhttps://www.bio-do.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

辛いから食べにくい、という素材の弱みを、そのまま強みに読み替えている点に感心しました。辛味の正体である硫黄化合物を取り除くのではなく、反応の材料として使い切る発想です。辛い品種をあえて選ぶという原料選びまで、その考え方で一貫しています。

面白いのは、成果の受け皿にドレッシングを選んだことです。単なる機能性食品の開発ではなく、毎日続けられる形まで含めて設計されていると受け取ると、和風の醤油ベースという味づくりに手間をかけた理由も見えてきます。研究の成果が食卓にたどり着くまでの距離を、味で縮めた事例だといえます。

北海道の畑から生まれた一本が、どこまで健康づくりを支えるのか、楽しみに見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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