2026.09.28 │ 東京大学・理研 │ 元発表:2026.09.25

東京大学ら、ヒト膜タンパク質の動きをNMRで4倍高感度に観測

ニュース紹介

「ヒト膜タンパク質のダイナミックな動きを高感度でとらえる技術を開発-創薬標的分子が機能するメカニズムの解明に期待-」

東京大学 大学院薬学系研究科の竹内恒教授らと、理化学研究所 生命医科学研究センターの嶋田一夫チームディレクター(研究当時)、千葉大学、大阪大学らによる研究チームは、溶液中での生体分子の動きを原子分解能で解析できる核磁気共鳴(NMR)法を用いて、ヒトの膜タンパク質のダイナミックな動きを高感度に観測する技術を新たに開発しました。

本研究では創薬標的の50%を占めるとされるヒト膜タンパク質を高効率に生産できるヒト細胞を用いて、従来は困難であるとされた高度な重水素標識を可能とする技術を開発し、NMR法を用いたヒトの膜タンパク質の解析で従来の約4倍の高感度化を達成しました。

本技術は、重要な創薬標的である膜タンパク質の機能解明に役立つ他、生きた細胞内のタンパク質を原子分解能で解析するインセルNMR法にも応用できることから、創薬研究を含めた様々な応用研究が期待できるとしています。論文は2026年9月25日に「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

出典:東京大学・理化学研究所ほか 2026年9月25日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260925_2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

膜タンパク質は、細胞を包む膜に埋め込まれ、外からの信号を受け取ったり物質を出し入れしたりするタンパク質です。発表資料によると、ヒトの膜タンパク質は創薬標的のおよそ半数を占めています。

結晶構造解析や電子顕微鏡の進歩で、多くの膜タンパク質の形が分かってきました。一方で、薬の効き方は形だけでは決まらず、構造の揺らぎのような動きにも左右されることが分かっています。溶液の中の動きを調べられるNMR法が必要とされてきたのはこのためです。

①重水素標識をヒト細胞で実現

NMR法では、タンパク質の水素を重水素(中性子を1つ多く持つ水素)に置き換えると、測定の感度が上がることが知られていました。ただし、これまで適用できたのは大腸菌、酵母、昆虫細胞で作れるタンパク質に限られていました。

研究チームは、ヒト由来細胞の一種であるExpi293F細胞を使い、培養条件や培地のアミノ酸組成を最適化しました。その結果、平均標識率約70%の高度な重水素標識を可能にし、発表資料ではこれを世界で初めての成果としています。

②見過ごされていた状態をとらえる

この技術で、代表的な創薬標的であるヒトβ2アドレナリン受容体を解析したところ、重水素標識をしない場合に比べて感度が約4倍に向上しました。従来は見過ごされていた、存在割合の低い状態も観測できたとしています。

さらに、ヒト細胞でしか作られた実績のない免疫受容体CD19とCD81の複合体について、NMRスペクトルを初めて観測しました。ヒト細胞の中でタンパク質を標識し、そのまま観測するインセルNMRでも、高感度な測定が可能になることを示しています。

編集部からひとこと

薬の候補がどれだけ効くかは、標的の形だけでなく、その形がどう揺れ動くかにも関わります。今回の成果は、これまでNMRで調べにくかったヒト細胞でしか作れない膜タンパク質に測定の道を開くものです。創薬研究の現場でどこまで使われるか、今後の展開に注目します。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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