自律飛行するドローンで荷物を最短約10分で届けるドローン配送を実用化した Zipline(米国発)

最短約10分で荷物が届く「ドローン配送」を実用化【Zipline|米国発】

都市でも地方でも、注文された荷物や医薬品を家庭や医療機関まで早く確実に届ける配送の担い手の確保が課題になっています。この課題に挑むのが、自律飛行するドローンで医薬品や食事、日用品を届ける「ドローン配送」を実用化した米国のジップライン(以下Zipline)です。2026年1月時点で累計200万回を超える商用配送を重ね、同月には6億ドル超(約900億円)の資金調達を発表しています。

荷物配送の課題

Ziplineの紹介と、離島の医薬品配送に数時間かかり、宅配ドライバーの人手が不足している課題を示す図

離島の医薬品配送に数時間

島が点在する地域では、医薬品が医療機関に届くまでに時間がかかることがあります。長崎県の五島列島では、医薬品の配送に数時間かかっていたと豊田通商が発表しています。急な処置で必要になった薬が間に合いにくい状況が続けば、住民が受けられる医療に地域差が残ります。

宅配ドライバーの人手が不足

都市部では、ネット通販や食事の宅配が増えるなか、物流拠点から家庭へ荷物を届けるラストワンマイル配送を担うドライバーの確保が難しくなっています。トラック輸送全体でも人手の制約は大きく、国土交通省の資料では、何も施策を講じなかった場合、2030年度に平均で約7%、最大で約25%の輸送力不足が生じうるとされています。このままでは、注文した荷物が希望の日時に届きにくくなり、配送の遅れや費用の増加を招く恐れがあります。

FrontJournalの解説
  • ラストワンマイル配送物流拠点から最終的な届け先の家庭や店舗までをつなぐ、配送の最後の区間。距離は短いが届け先が分散するため、人手と時間が最もかかる工程とされる。
  • 輸送力トラックなどで一定期間に運べる貨物の量。ドライバーの人数や労働時間が減ると、需要に対して運べる量が足りなくなる。

Ziplineが「ドローン配送」を実用化

Ziplineのドローン配送が、自律飛行で最短約10分の配達を実現し、吊り下げ配達で庭先に荷物を届けることを示す図

課題解決に挑むZipline

Ziplineは、ドローンの機体と配送網を自ら設計・製造・運用し、「ドローン配送」を事業として展開する米国の企業です。2014年3月にカリフォルニア州で創業し、現在はサウスサンフランシスコに本社を置きます。出発点はアフリカのルワンダ政府との協定で、2016年10月に同国ムハンガの拠点から地方の診療所へ輸血用の血液を届ける配送を始めました。

自律飛行で最短約10分

Ziplineのドローンは、店舗や倉庫の拠点から届け先までを自律飛行で結び、道路の渋滞に左右されずに荷物を運びます。同社によると、飛行時間の中央値(小さい順に並べて真ん中にくる値)は約3分で、注文から最短約10分で届けられます。米国の住宅地向けの機体「P2」は、拠点から半径約16km(10マイル)の範囲へ、最大約3.6kg(8ポンド)の荷物を運べると報じられています。電動の機体について、同社は飛行中の排出ゼロを掲げています。

吊り下げ配達で庭先に届く

「P2」は届け先の上空にとどまり、配達用の小型機(ドロイド)をひもで吊り下げて降ろし、荷物を届けます。ドロイドは推進装置(位置や向きを変える小型のファン)とセンサーで位置を補正しながら降り、直径約1mの範囲に着地できるため、庭先や玄関前のような狭い場所にも配達できます。機体本体が上空にとどまったまま配達するため、住宅地でも騒音を抑えられる点が特長です。

FrontJournalの解説
  • 自律飛行人が操縦せず、機体に載せたセンサーとソフトウェアが経路や姿勢を判断して飛ぶこと。遠隔の管制は監視と例外対応を担う。
  • ドロイド「P2」がひもで吊り下げて降ろす、荷物を収めた小型の配達機。自らの推進装置で横風を受けても位置を合わせられる。

ドローン配送の未来

ドローン配送で食事や日用品の即配が広がり、へき地医療の支援を目指し、大手投資家から資金を調達したことを示す図

食事や日用品の即配が広がる

「ドローン配送」が広がれば、食事や日用品を注文してから短時間で受け取れる地域が増えます。同社はすでに、小売大手のウォルマートや、チポトレ、ウェンディーズなどの飲食チェーンと組み、テキサス州ダラス周辺などの家庭へ届けています。2026年8月にはZiplineとUberが提携し、「Uber Eats」のアプリから「ドローン配送」を選べるようにすると発表しました。サービスはダラスとヒューストンから始まり、Ziplineはこの提携を通じて1日100万回の配送を目指すとしています。

へき地医療の支援を目指す

同社は、医療機関への配送網を広げ、住む地域によって受けられる医療の差を縮めることを目指しています。同社によると、配送先の病院や医療施設は4大陸で5,000か所以上にのぼり、アフリカではルワンダやガーナ、ナイジェリア、ケニアなどで血液やワクチンを届けています。日本では2022年に、豊田通商のグループ会社が同社の配送網を使い、五島列島で医薬品の配送を始めました。へき地の診療所でも必要な薬を短時間で受け取れる体制が整えば、離島の住民が受けられる医療の選択肢が増えます。

大手投資家から資金を調達

同社は2026年1月、前述の資金調達により企業評価額が約76億ドル(約1兆1,400億円)に達したと発表しました。出資したのは、フィデリティやベイリー・ギフォード、ヴァラー・エクイティ・パートナーズ、タイガー・グローバルといった大手投資家です。同年8月には、前述のUberも戦略的な出資を行いました(金額は非公表)。同社は、調達した資金で2026年中に米国の少なくとも4つの州へ配送地域を広げ、「ドローン配送」を使える地域を増やす計画です。

FrontJournalの解説
  • 企業評価額投資家が出資の条件を決める際に算定した、会社全体の価値。上場前の企業では、調達ラウンドごとに見直される。
  • 戦略的な出資配当や売却益だけでなく、事業での協業を目的とした出資。今回はUberの配達アプリとZiplineの配送網を組み合わせる提携と一体になっている。

まとめ

荷物や医薬品を届け先まで運ぶ配送の担い手の確保は、離島の医療から都市の宅配まで共通する課題です。Ziplineはルワンダでの血液配送から始め、自律飛行とドロイドを吊り下げて降ろす仕組みを組み合わせた「ドローン配送」を、米国の家庭向けにも広げてきました。累計200万回を超える商用配送の実績に加え、6億ドル超の資金調達やUberとの提携を得て、米国で配送地域の拡大を進めています。日本でも2022年に、五島列島で医薬品の配送が始まりました。FrontJournal編集部は、「ドローン配送」が離島の医療や都市の身近な買い物を支える物流の一つになることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値で、円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Ziplineのニュースリリース(2026年1月21日・2026年8月17日)、TechCrunch(2026年1月21日)、IEEE Spectrum、豊田通商のニュースリリース(2022年4月21日)、国土交通省「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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