プラチナバイオ株式会社は国産のゲノム編集ツールを開発する広島大学発の企業

プラチナバイオ株式会社

プラチナバイオ「国産ゲノム編集」を研究|研究領域=広島大学発の・国産ゲノム編集ツール/強み=特許の権利関係が明確・狙い以外を切りにくい/将来性=食品から・遺伝子治療へ

企業紹介|プラチナバイオ株式会社とは?

特許の権利関係が明確で、産業で使いやすい技術として研究が進む「国産ゲノム編集」。プラチナバイオ株式会社は、その社会実装を目指す、広島大学発のバイオ系ディープテック企業です。ゲノム編集ツール「Platinum TALEN」「ZF-ND1」の作製と、生物の遺伝情報の解析を、食品や医薬品の研究開発を行う企業などへサービスとして提供しています。

キーワード「国産ゲノム編集」

「国産ゲノム編集」は、国内で開発されたツールを使うゲノム編集(生物の遺伝子の狙った場所を切って書き換える技術)です。特徴は、基本特許(技術の土台となる特許)の権利関係が明確で、産業利用の契約を結びやすい点にあります。品種改良や創薬を行う企業は、権利の争いに左右されにくくなり、開発計画を立てやすくなります。

市場課題|ゲノム編集の産業利用は特許と安全性が壁

現状のゲノム編集の課題|現状は、特許使用料と安全性の懸念で開発が進みにくい|海外特許の使用料が・開発を圧迫/狙い以外の切断が・安全性の懸念

海外特許の使用料が開発を圧迫

ゲノム編集で広く使われるCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)は、米国の大学などが基本特許を持ち、創薬領域での使用料が数百億円に達する場合があるとされます。基本特許の権利をめぐる訴訟もあり、支払う相手と金額の見通しが立ちにくい状況です。資金の少ない企業ほど、製品開発に踏み出しにくくなります。

狙い以外の切断が安全性の懸念

オフターゲット(狙った場所以外のDNAを切断してしまう現象)は、ゲノム編集の安全性を左右する問題です。CRISPR-Cas9は、ガイドRNA(標的へ案内する短いRNA)が読む約20塩基の配列から、数塩基だけ違う場所も切ることがあり、オフターゲットが起きやすいとされます。食品や医薬品では意図しない変化の有無を確かめる必要があり、開発が長期化する恐れがあります。

他にも、編集の成否を調べる解析の手間、品種改良に使うゲノムデータの不足、切断酵素を安定して精製する難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • CRISPR-Cas9RNAを目印にして、狙ったDNAの場所へ切断酵素を運ぶゲノム編集ツールを指す。設計が簡単で研究に広く使われる一方、基本特許をめぐる争いがあり、産業利用では使用料が課題になる。

プラチナバイオの強み|「国産ゲノム編集」を開発

プラチナバイオが「国産ゲノム編集」を開発|今後は、国産ツールで産業利用が可能に|権利関係の明確な・国産ツールを提供/狙い以外を・切りにくい仕組み

権利関係の明確な国産ツール

創薬などでCRISPR-Cas9を使って製品化するには、基本特許を持つ複数の権利者へ使用料を支払う必要が生じることがあり、支払いの総額が膨らみやすくなります。

「Platinum TALEN」は、植物病原細菌由来のDNA結合部分に切断部分を付けたTALEN(ターレン)の、広島大学による改良版です。結合部分のアミノ酸に周期的な規則性を持たせて効率を高めました。同社はTALENの基本特許の実施権を海外企業から得ており、権利関係が明確です。「ZF-ND1」は、基本特許の切れたZFNジンクフィンガーに切断酵素を付けたもの)と、広島大学発の切断酵素「ND1」を組み合わせたもので、使う企業は使用料を抑えやすくなります。特許の争いに巻き込まれる心配も減らせます。

狙い以外を切りにくい仕組み

DNAを切るツールは、見分ける配列が短いほど、似た配列を持つ別の場所まで切ってしまう恐れがあります。

TALENやZFNは2つで1組になり、DNAの2本の鎖の近い場所にそれぞれ結合します。切断部分は2つそろって初めて働くため、両方が長い配列を正しく読み取った場所だけが切られ、狙った場所以外を切りにくくなります。アレルギー低減卵(原因物質を除いた鶏卵)の研究では、「Platinum TALEN」で遺伝子を働かなくしたニワトリの全ゲノム(すべての遺伝情報)を解析し、狙った場所以外に明確な変異は見られませんでした。意図しない変化が起きにくく、食品などで安全性を確かめる負担を減らせる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • ジンクフィンガーDNAの短い並びを見分けて結合する、指のような形をしたタンパク質の部品を指す。いくつもつなげると長い配列を認識できるため、DNAを切る酵素と組み合わせてゲノム編集ツールに使われる。

国産ゲノム編集の未来|食品から遺伝子治療への応用

食品と医療の「国産ゲノム編集」が変える未来|鶏卵の開発から遺伝子治療の研究まで|卵の加熱に強い・原因物質を除去/ゲノムデータで・狙う遺伝子を探索/遺伝子治療への・応用を目指す

卵の加熱に強い原因物質を除去

「Platinum TALEN」は、オボムコイド(加熱しても性質が失われにくい、卵アレルギーの原因物質の一つ)を含まない鶏卵の開発に使われています。広島大学やキユーピーなどの研究グループはオボムコイドの遺伝子を働かなくし、2023年にこの鶏卵がオボムコイドを含まないことを確かめました。2024年には、相模原病院が主体の臨床試験で、この鶏卵の加熱粉末を摂取した卵アレルギーの患者17人全員に、アレルギー反応が出なかったとされています。試験は現在も続き、同社はこのアレルギー低減卵を社会に届ける取り組みを進めています。

ゲノムデータで狙う遺伝子を探索

編集する遺伝子を選ぶ手がかりになるのが、同社のゲノムデータの解析です。産業に役立つ生物の高精度なゲノムデータを取得し、狙う遺伝子や目印の配列を探すサービスを提供しています。赤紫蘇のデータを活用した育種(品種改良)や、水産養殖に向けたゲノムデータの解析も、同社が手がける分野です。キユーピーとは、微生物のゲノム解析基盤を共同で構築中です。

遺伝子治療への応用を目指す

同社は、「ZF-ND1」を遺伝子治療細胞治療(体の外で加工した細胞を体に戻す治療)へ応用することを目指しています。マウスの実験では、「ZF-ND1」がCRISPR-Cas9に匹敵する切断の効率を示し、受精卵での有効性も確認されています。応用先の一つが、眼の希少疾患である網膜色素変性(視細胞が失われて視力が低下する遺伝性の病気)の遺伝子治療です。広島大学などと組み、有効性と安全性を確かめる研究を進めています。

会社概要|プラチナバイオの事業内容と設立背景

広島大学の研究から事業化

プラチナバイオ株式会社は、広島大学の山本卓教授らが開発した「Platinum TALEN」を核に、2019年8月に広島県東広島市で設立された広島大学発スタートアップです。山本氏は広島大学ゲノム編集イノベーションセンターのセンター長を務め、同社では取締役・最高技術責任者として技術開発を担っています。代表取締役は、同センターの客員教授でもある奥原啓輔氏です。2025年3月には、マレーシアに子会社「PtBio Asia」を設立しました。

企業との連携と表彰

2021年には凸版印刷、広島大学と、ゲノム編集の解析を簡単にするクラウドサービス「Genome Editing Cloud」の試作版を開発しました。2024年には、JST(科学技術振興機構)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主催する「大学発ベンチャー表彰」で特別賞を受けました。2025年9月にはキユーピー資本業務提携(出資を伴う事業上の提携)を結び、アレルギー低減卵の研究体制を強化しています。

累計5億円を資金調達

同社は2021年12月に、スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESとヤンマーベンチャーズから2.8億円を調達しました。2023年10月にはシリーズA(事業を本格的に広げる段階の資金調達)を完了し、この時点で調達額は累計5億円になりました。資金は、研究開発と事業推進の人員の拡充や、ゲノムデータを活用するバイオDX(生物のデータを解析して研究開発に生かす取り組み)のプロジェクトに充てられます。

会社情報

会社名プラチナバイオ株式会社(PtBio Inc.)
所在地広島県東広島市鏡山三丁目10番23号
設立2019年8月30日
代表代表取締役:奥原 啓輔。取締役・最高技術責任者:山本 卓
資本金3億8365万円
従業員46名(2026年1月1日時点)
調達2021年12月:2.8億円(FOOD & LIFE COMPANIES、ヤンマーベンチャーズ)。2023年10月:シリーズAを完了し累計5億円。2025年9月:キユーピーと資本業務提携。2026年2月:富田薬品が出資
事業ゲノム編集ツール「Platinum TALEN」「ZF-ND1」の作製。生物のゲノムデータの取得と解析。ゲノム編集の解析ソフトウェア「PtWAVE」の提供
技術領域国産のゲノム編集ツール(TALEN・ジンクフィンガー)。ゲノムデータの解析。特許第7923550号(ゲノム編集ツールによる変異の導入効率の推定方法・2026年9月登録)
連携キユーピー(アレルギー低減卵の研究)。凸版印刷・広島大学(ゲノム編集の解析基盤「Genome Editing Cloud」を2021年に共同開発)。東広島市(し尿処理施設の効率化)
採択大学発ベンチャー表彰 特別賞(2024年・JST/NEDO)
URLhttps://www.pt-bio.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

ゲノム編集は、品種改良から医薬品の開発まで使われる基盤技術になりました。一方で、主流の技術は海外の特許に結び付いており、使う側の企業には使用料の見通しという課題が残っています。プラチナバイオは、その課題に国産のツールで向き合っています。

注目したいのは、ツールの作製に加えて、狙う遺伝子を探すゲノムデータの解析も自社で扱っている点です。アレルギー低減卵のように、研究の成果を食卓に届く形へ近づけている事例もあります。卵アレルギーには「Platinum TALEN」、眼の病気には「ZF-ND1」と、性質の違う課題にそれぞれ別のツールで取り組んでいる点も特徴です。

国内で生まれたゲノム編集が、国内の産業を支える技術になる日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。