青山モータードライブテクノロジー|電流と電圧からモーターの回転位置を推定する「センサレス制御」を開発する青山学院大学発のディープテック企業

有限会社青山モータードライブテクノロジー

青山モータードライブテクノロジー「センサレス制御」を開発|研究領域=回転の位置を計算で推定する/強み=位置センサを省き部品代を抑える/将来性=医療や発電の開発にも携わる

企業紹介|青山モータードライブテクノロジーとは?

モーターの回転位置を電流と電圧から推定し、エアコンの圧縮機などを制御する技術として、注目を集める「センサレス制御」。青山モータードライブテクノロジーは、その開発に取り組む、青山学院大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。モーターを動かす制御ソフトウェアとインバータ(直流を任意の周波数の交流に変える装置)を、家電や車載の開発現場へ提供しています。

キーワード「センサレス制御」

センサレス制御は、モーターに流れる電流と電圧から、回転子(モーターの中で回る部分)の位置と速度を計算で推定し、回転を制御する技術です。エンコーダ(回転の角度を測るセンサ)などの位置センサを省けるため、部品の費用を抑え、センサの配線に入るノイズの影響も減らせます。高温の圧縮機の中や、高速で回るモーターにも適用できます。

市場課題|モーターの省エネと低価格の両立が難しい

現状のモーター駆動の課題|現状は、センサの部品代がかさみ省エネ機器が広まりにくい/モーターが電力の約55%を消費/省エネ機器は部品代がかさむ

モーターが電力の約55%を消費

日本の消費電力量の約55%は、モーターが使っていると推計されています。モーターは家庭用・業務用・産業用を合わせて国内に約1億台あるとされ、産業部門に限ると消費電力量の約75%を占めます。モーターを効率よく回す技術が広まらなければ、国内の電力消費は減りにくいままです。

省エネ機器は部品代がかさむ

モーターを効率よく回す機器ほど、センサや制御の部品が増え、価格が上がりやすくなります。効率の高い永久磁石同期モーター(回転子に磁石を使うモーター)をインバータで細かく制御するには、回転の位置や流れる電流を測り続ける必要があるためです。価格の競争が激しい家電では、部品1つの費用も省エネ製品を広める妨げになります。

他にも、センサの配線に電気的なノイズが入りやすい、高速で回るモーターではセンサの性能で回転数が左右される、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • インバータ直流の電気を、周波数と電圧を変えた交流に変換する装置。モーターに送る交流の周波数を変えると回転数が変わるため、必要な分だけモーターを回して電力の無駄を減らせる。

青山モータードライブテクノロジーの強み|「センサレス制御」を開発

青山モータードライブテクノロジーが「センサレス制御」を開発|現在は、センサレス制御でインバータを提供/電流と電圧から回転位置を推定/1本の抵抗から電流を再現

電流と電圧から回転位置を推定

永久磁石同期モーターを回すには回転子の位置が必要で、従来は位置センサで検出してきました。ただし位置センサは高価で、高温の圧縮機の中では耐熱性の高い品種が要ります。

青山モータードライブテクノロジーが開発した位置センサレス制御は、モーターの電流と電圧から回転子の位置と速度を推定するソフトウェアです。温度で変わる巻線の抵抗や磁石の強さも運転中に推定し直すため、モーターの個体差や温度変化があっても推定がずれにくくなります。推定に使うモーター定数(巻線の抵抗など、モーターごとに決まる値)を自動で測る測定ソフトと計測用インバータも、同社が開発しました。位置センサが要らなくなり、高温になる圧縮機の中でもモーターを制御できるようになります。

1本の抵抗から電流を再現

モーターの電流を制御するには各相(三相モーターの3組の巻線)の電流を測る必要があり、一般にはホール素子(磁界の強さを電圧に変える素子)を使った高価な電流センサを2個使います。

同社の電流センサレス制御は、インバータの直流側に置いたシャント抵抗(電流を電圧に変えて測る抵抗)1本の電圧から、交流電流を再現するアルゴリズムです。1本の抵抗では電流を測りにくい区間が生じますが、PWM(電圧を細かくオン・オフする方式)の信号の作り方を工夫し、電流波形のひずみや高調波ノイズ(基本の周波数の整数倍の成分による乱れ)を抑えています。その結果、車載用やファン用のモーターの駆動回路にも使えるようになりました。電流センサが要らなくなり、回路基板を小さくし、家電の価格を抑えられます。

FrontJournalの解説
  • 永久磁石同期モーター回転子に永久磁石を埋め込み、固定子のコイルが作る回転磁界と同じ速さで回転子が回るモーター。効率が高く、エアコンの圧縮機をはじめ、家電や産業機器の駆動に広く使われる。

未来|センサレス制御が家電から車載へ広がる

センサレス制御が変える未来|センサレス制御が家電から車載へ広がる/エアコンの圧縮機で量産/SiCインバータを出荷可能に/モーター駆動の高効率化を目指す

エアコンの圧縮機で量産

同社のモーター制御技術は、すでに家電の量産品で使われています。位置センサレス制御を載せたエアコン用の圧縮機ドライバ(圧縮機のモーターの駆動回路)は、年間500万セットの規模で量産されています。同社の技術を採用した家庭用エアコン向けの圧縮機ドライバは、2017年に累計生産台数が3,000万台に達しました。同社の技術を載せた製品の累計搭載実績は、DigiPower社(中国・青島の電子機器メーカー)の製品を含めて、2023年に7,000万台を超えています。

SiCインバータを出荷可能に

2025年、同社はDC800VやDC1000Vに対応するフルSiC(炭化ケイ素)インバータ3機種を順次出荷できる体制を整えました。SiCは、電力変換の損失を抑えられるとされる半導体材料です。位置センサレス制御も、産業用や車載用のモーターコントローラに採用されています。3機種は、実機での評価を早く始めたい高出力モーターの開発現場に向けた標準品です。

モーター駆動の高効率化を目指す

同社が目指すのは、モーターとインバータを一体で設計する駆動システムの技術を開発し、モーター駆動の効率を高めることです。企業ビジョンには、太陽光や風力の発電と、電源やバッテリーの制御技術の開発も掲げています。すでに手がけているのが、医療用ポンプの駆動回路や、パワーコンディショナ(発電した直流を交流に変える装置)の開発です。電力の多くを使うモーターの効率が上がれば、家庭や工場で使う電力を減らすことにつながります。

会社概要|有限会社青山モータードライブテクノロジー

青山学院大学の研究から創業

青山モータードライブテクノロジーは、2006年3月に設立されました。当時、青山学院大学理工学部教授だった林洋一氏が、研究成果を実社会で役立てる受け皿として立ち上げた会社です。事業は、中国市場向けのインバータエアコン用の圧縮機ドライバの開発から始まりました。2007年から2014年にかけては、林氏と福本哲哉氏らの連名でセンサレス制御の論文を発表しています。現在は福本氏が取締役社長を務めています。

DigiPower社と量産連携

同社は、中国・青島のDigiPower社と組み、量産向けのモーター駆動製品を日本の顧客へ届けています。DigiPower社が量産設計と製造を担い、同社が用途に合わせてモーター制御と製品の仕様を決める分担です。両社の協業は、2020年にDigiPower社の標準製品の国内販売を始めたところから広がりました。2021年にはDigiPower社製品の専用サイトを公開しています。

受託と自社開発で1,000件超

受託開発と自社開発を合わせた実績は、累計1,000件以上にのぼります。事業の柱は、顧客の要求に合わせたインバータとモーター制御の受託開発です。受託開発の件数は、2014年に400件に達しました。2013年には50kW・毎分1万回転、2015年には100kW・毎分1万5000回転のモーターベンチ(モーターの性能を測る試験装置)を導入しました。仕様の検討から試作、評価、量産の立ち上げまでを一貫して請け負っています。

会社情報

会社名有限会社青山モータードライブテクノロジー(Aoyama Motor Drive Technology Co.,Ltd.)
所在地神奈川県相模原市中央区上溝1880番-2 さがみはら産業創造センターSIC3-116
設立2006年3月
代表福本 哲哉(取締役社長)。創業者は林 洋一(青山学院大学理工学部教授〈設立当時〉)
資本金440万円
従業員正社員10名(役員を除く)
事業パワーエレクトロニクス製品のハードウェア開発・販売。モーター制御などのソフトウェア開発・販売。パワーエレクトロニクス関連のコンサルティング。標準インバータ(フルSiC水冷タイプなど)の販売
技術領域位置センサレス制御、電流センサレス制御、モーター定数の測定技術、インバータの回路・組み込みソフトウェア
連携青山学院大学(創業時の研究成果)。DigiPower社(青島三源泰科電子科技有限公司/量産製品の設計と製造)
URLhttps://www.amdt.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

モーターは、家電や工場の機械を動かし、国内の電力の半分以上を使っていると推計されています。青山モータードライブテクノロジーは、そのモーターを回す手順を、センサに頼らない計算へ置き換えてきました。大学の研究室で磨いた制御の理論が、エアコンの量産品の中で動き続けている点に、この会社の特徴があります。

興味深いのは、同じ制御の知見が、家電の圧縮機から車載向けの高電圧のインバータまで、規模の大きく異なる機器に使われている点です。受託開発で積み上げた経験は、次の製品の設計に生かされています。インバータの性能を左右する半導体の分野では、FLOSFIAのように新しい材料を開発する企業も生まれています。

目に見えない回転の位置を計算で捉える技術が、モーターの省エネをどこまで進めていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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