プロテインウエーブ|「X線結晶構造解析」を支える結晶用ループなどの測定ツールを開発するバイオ系ディープテック企業

プロテインウエーブ株式会社

プロテインウエーブ「X線結晶構造解析」を研究|研究領域=結晶にX線を当て分子の形を調べる/強み=結晶をすくう極小の輪を作製/将来性=測定の幅を広げ食品開発にも

企業紹介|プロテインウエーブとは?

病気の原因となるタンパク質の形を、原子の並びまで調べる手法として、注目を集める「X線結晶構造解析」。プロテインウエーブは、その研究を道具で支える、バイオ系ディープテック企業です。結晶をすくい取る測定用ループ「LithoLoops」などの研究用ツールと受託研究サービスを、国内外の医薬系企業や大学、公的研究機関へ提供しています。

キーワード「X線結晶構造解析」

「X線結晶構造解析」は、分子が規則正しく並んだ結晶にX線を当て、生じた回折斑点(X線が特定の向きに強め合ってできる点)の位置と濃さから分子の形を復元する手法です。光学顕微鏡では見えないほど小さなタンパク質でも、原子の配置まで調べられます。病気に関わるタンパク質の形は、そこに結合する薬を設計する手がかりになります。

市場課題|タンパク質の結晶は測定前の扱いが難しい

現状のX線結晶構造解析の課題|現状は、小さな結晶の扱いと凍結時の液が測定を妨げる/貴重な結晶は小さく扱いにくい/凍結時に残った液が分子の並びを乱す

貴重な結晶は小さく扱いにくい

高品質なタンパク質の結晶は得にくく、作製の条件を探すだけで数年かかることも珍しくありません。苦労して得た結晶には、ごく小さなものや細長い柱状のものも含まれます。こうした結晶を測定の前に損なうと、構造解析の研究全体が遅れる恐れがあります。

凍結時に残った液が並びを乱す

測定では、結晶を小さな輪で溶液ごとすくい取り、低温の気流で凍らせるのが一般的です。このとき輪に残った余分な母液(結晶を育てた溶液)は、凍る際に結晶を圧迫し、分子の並びを乱します。さらに輪の素材や残った液もX線を散乱させるため、測定データに雑音が混じりやすくなります。

他にも、粘り気の強い溶液から結晶を取り出しにくい、室温で測ると結晶が乾きやすい、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 母液タンパク質の結晶を育てた溶液のことで、沈殿剤などを含む。結晶は測定まで母液に浸した状態で保たれるが、すくい取る際に余分な母液が残ると、凍結時の変形やX線の散乱によって測定データの質を下げる原因になる。

プロテインウエーブの強み|「X線結晶構造解析」を研究

プロテインウエーブが「X線結晶構造解析」を研究|現在は、微細加工で測定用のループを提供/結晶をすくう極小の輪を作製/溝で余分な液を自然に排出

結晶をすくう極小の輪を作製

ナイロン製の従来のループでは、直径0.04mm以下の輪や、結晶の形に合わせた自由な形の輪を作るのが困難でした。

同社の「LithoLoops」は、半導体の回路製造に使う「フォトリソグラフィー」(光で薄い膜に微細な模様を焼き付ける加工法)で作るループです。素材には薬品に強い感光性のポリイミド樹脂を使い、輪と首、柄を一体で作るため、低温の気流の中でも曲がりや振動が起きにくい構造です。輪の大きさは本体に刻まれており、結晶に合う輪を見分けやすくなっています。小さな結晶や細長い結晶に合う輪を選べるため、研究者は貴重な結晶を無駄にせず測定できるようになります。

溝で余分な液を自然に排出

平らな輪だけのループでは、すくい上げた結晶のまわりに表面張力で母液が多く残り、凍結時に結晶を圧迫していました。

同社の「ActiLoops」は、輪に溝と液溜めを加えた立体のループです。表面を親水化(水になじみやすくする処理)しているため、母液は幅0.05mm(50μm)の溝を伝って液溜めへ自然に流れ出ます。凍る際に結晶へかかる力が弱まり、分子の並びが乱れにくくなる仕組みです。素材はLithoLoopsと同じポリイミドで、素材由来のX線の雑音も抑えられます。その結果、分解能(どこまで細かく見分けられるかの度合い)の高いデータを得やすくなり、創薬の研究者は、薬の設計に使う構造をより精密に求めやすくなります。

FrontJournalの解説
  • フォトリソグラフィー光に反応する材料の膜に、模様を描いたマスク越しに光を当て、光の当たった部分と当たらない部分の違いを利用して微細な形を作る加工法である。半導体の回路製造の基本技術で、同じ形を高い精度で大量に作れる。

X線結晶構造解析の未来|測定の幅を広げ食品開発にも

精密なX線結晶構造解析が変える未来|測れる対象が広がり、成果は食品開発へ/割れない試料管で粉末も測定/室温での測定を手軽に/認知症予防の食品を目指す

割れない試料管で粉末も測定

同社の割れないポリイミド製チューブ「SPICA」は、粉末試料などのX線回折の測定向けに販売されています。粉末などを詰めてX線回折で測るための試料管で、散乱による雑音が小さい点が特長です。素材には割れないポリイミドを使っています。2024年7月には直径0.3mmの細い管が加わり、研究者は試料の量に合わせて太さを選べるようになりました。

室温での測定を手軽に

結晶を凍らせずに室温のまま測る方法が、研究の現場で手軽な選択肢になりつつあります。同社が提供する道具「MOIST」は、ループに載せた結晶をポリイミドのチューブで覆い、20℃・湿度30〜50%の環境なら結晶を1か月以上乾燥させません。結晶を載せたまま、化合物を染み込ませる処理や凍結防止剤への置き換えも行えます。凍結で結晶を傷めずに済むため、凍らせると並びが乱れやすい結晶も測定に回せます。

認知症予防の食品を目指す

タンパク質研究の成果を生かし、同社は日常の飲食によるアルツハイマー病の予防を目指して、機能性食品の研究開発を進めています。標的は、脳の神経細胞でアミロイドβ(アルツハイマー病の原因とされるタンパク質の断片)を切り出す酵素「BACE1」です。同社はこの酵素を組み換えタンパク質(遺伝子を組み込んだ細胞に作らせたタンパク質)として大量かつ高純度に精製することに成功し、その働きを妨げる候補物質を探してきました。日々の食事による予防が実現すれば、薬とは別の、認知症への備えの選択肢が増えます。

会社概要|プロテインウエーブ株式会社

半導体の技術を構造解析に応用

プロテインウエーブは、2000年5月に奈良県で設立された企業です。代表取締役の三城明氏のもと、マイクロエレクトロニクス(微細な電子部品を作る技術)とバイオ技術を組み合わせた技術を中核にしています。同社は、タンパク質の結晶構造解析で手間のかかる結晶化やデータ収集の工程を、道具の力で容易にすることを目指してきました。社名のとおり、タンパク質を軸にした医薬品開発や生命現象の研究に必要な手法と道具を提供しています。

販売会社と放射光施設を活用

同社のループを研究者に届けているのは、国内外の販売会社です。「ActiLoops」は海外では「ActiLoop」の名称で英国のMolecular Dimensions社が販売し、国内ではワケンビーテック株式会社が同じ製品を「LithoLoop-3D」の名称で販売しています。受託研究では、SPring-8(兵庫県にある大型放射光施設)などの放射光施設も使ってX線回折データを収集します。

道具の販売と受託研究が柱

事業の柱は、構造生物学(生体分子の形から働きを調べる学問)の研究用ツールの販売と、構造解析の受託研究サービスです。受託研究では、組み換えタンパク質の調製から、最大1,000条件の結晶化の探索、X線回折データの収集までを、個別にも一括でも請け負います。顧客の希望に合わせたサイズと形のループを設計・製作する「Customized-LithoLoops」も手がけ、納期は標準で約6週間です。加えて、タンパク質研究の成果を生かした機能性食品の研究開発も進めています。

会社情報

会社名プロテインウエーブ株式会社(Protein Wave Corporation)
所在地奈良県奈良市西登美ヶ丘1-16-5
設立2000年5月11日
代表三城 明(代表取締役)
資本金3,500万円(2005年4月1日現在)
事業構造生物学の研究用ツールの開発・販売(結晶用ループ「LithoLoops」「ActiLoops」「LithoLoops-Viscous」「Customized-LithoLoops」、室温測定用ツール「MOIST」、ポリイミドチューブ「SPICA」、結晶化デバイス)。構造解析の受託研究サービス。機能性食品の研究開発
技術領域フォトリソグラフィーによるポリイミド製ループの製造、マイクロ流体デバイス、組み換えタンパク質の調製と結晶化
連携Molecular Dimensions(英国・「ActiLoops」の海外販売)。ワケンビーテック株式会社(「LithoLoop-3D」の国内販売)
URLhttps://www.pro-wave.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

X線結晶構造解析というと、大型の放射光施設や高度な計算が注目されがちです。しかし測定の成否は、直径1mmに満たない輪で結晶をどうすくい取るかという、目立たない工程にも左右されます。プロテインウエーブは、その小さな道具に半導体の微細加工を持ち込んだ企業です。

興味深いのは、電子部品の技術が、そのまま生命科学の研究の質を高める道具になっている点です。AIによるタンパク質の構造予測が進む今も、実際の結晶から得る精密なデータは、薬の設計を支える確かな土台であり続けています。結晶を扱う道具が変われば、同じ測定装置からでも得られる構造の精度が変わります。

奈良から世界の研究室へ届く小さな輪が、次の新薬の発見をどう支えていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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