株式会社SEGNOS|検査の前処理に使う刺激応答性磁性ナノ粒子を開発するスピンアウトのディープテック

株式会社SEGNOS(セグノス)

SEGNOS「刺激応答性磁性ナノ粒子」を開発|検査の前処理に磁性ナノ粒子を提供/温度や塩で凝集と分散を切替/血液1滴の検査や創薬の応用を目指す

企業紹介|SEGNOSとは?

検査の前処理で、標的を素早く分離する技術である「刺激応答性磁性ナノ粒子」。SEGNOS(セグノス)は、その社会実装を目指す、JNC株式会社からのスピンアウトのディープテック企業です。診断の前処理に使う磁性ナノ粒子「Therma-Max」を製品化し、診断薬メーカーなどの協業先を募っています。

キーワード「刺激応答性磁性ナノ粒子」

刺激応答性磁性ナノ粒子は、温度や塩のわずかな変化で集まったり、ばらけたりを繰り返す磁性の粒子です。SEGNOSの粒子は直径が約100ナノメートルで、30℃以上に温めるか添加剤を入れると凝集し、磁石で素早く分離できます。冷やすと再び分散します。

市場課題|検査の感度と分離の速さが両立しにくい

現状の磁気ビーズの課題|現状は、大きさの制約で感度と速度が両立しにくい/数ミクロンの粒で感度に課題/小さくすると分離が遅くなる

数ミクロンの粒子で感度に課題

粒子径が数ミクロンの免疫磁気ビーズは、水に分散しにくく、感度に課題を残します。免疫血清学的検査(血液中の抗体や抗原を調べる検査)の前処理で多用され、液を分けて取る際の誤差で偽陰性(本来は陽性なのに陰性と出る結果)が生じることがあります。偽陰性による結果の見落としは、検査全体の信頼性を損ねる要因です。

小さくすると分離が遅くなる

磁気ビーズは小さくするほど、磁石による分離に時間がかかります。粒子径が1ミクロンあたりから、水中でのブラウン運動の影響が強まり、磁石で集める分離の速度が著しく落ちるためです。水への分散性と感度の向上は期待できる一方、感度と診断にかかる時間が引き換えの関係になり、両方を満たす手段が求められてきました。

他にも、早期アルツハイマー病の既存の検査では、検査場所が限られること、大型の分析機器を要すること、体への負担が大きいこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 磁気ビーズ磁石に引き寄せられる性質をもつ微小な粒子。表面に抗体などを付けて検体中の標的物質を捕まえ、磁石で分離する検査の前処理に使われる。

株式会社SEGNOSの強み|「刺激応答性磁性ナノ粒子」を開発

SEGNOSが「刺激応答性磁性ナノ粒子」を開発|現在は、磁性ナノ粒子で迅速な分離を提供/約100nmの粒径で感度を高める/凝集と分散で素早く分離

約100nmの粒径で感度向上

数ミクロンの磁気ビーズは水に分散しにくく、液を分けて取るときの誤差で偽陰性が生じやすい点が弱みです。

SEGNOSは、粒子径が約100ナノメートルの磁性ナノ粒子「Therma-Max」と「Vira-Max」を診断の前処理向けに製品化しました。約100ナノメートルは、0.0001ミリメートルにあたります。ろ過滅菌(フィルターで微生物を除く処理)が可能な磁性ナノ粒子である点も、同社の特長です。粒子径をナノサイズにすると、水への分散性が高まります。分散性が上がると、液を分けて取る際の分注誤差による偽陰性の低減と、感度の向上が期待できます。

凝集と分散で素早く分離

粒子を小さくすると、水中のブラウン運動の影響で、磁石による分離に時間がかかる点が弱みです。

同社の粒子は、室温では水に完全に分散しており、30℃以上への加熱や、塩、PEG(ポリエチレングリコール)といった添加剤で凝集します。Vira-Maxは、このうちPEGによる液液相分離を利用する粒子です。凝集した粒子は磁石で迅速に分離でき、冷却すると再び分散します。高い感度を保ったまま分離を速めることで、感度と診断時間の引き換えを解消する狙いです。従来の磁性粒子で数十分かかった回収が数十秒〜数分で完了するとされ、検査の待ち時間の短縮につながります。

FrontJournalの解説
  • ブラウン運動液体中の微粒子が、周囲の分子との衝突で不規則に動き続ける現象。粒子が小さいほど影響が大きく、磁石で引き寄せても動きに阻まれ、分離に時間がかかる。

SEGNOSの未来|診断と創薬への応用

簡便な早期診断が変える未来|血液1滴の検査と創薬の応用を目指す/血液1滴の検査を共同研究/分離の速さで候補を絞り込む/早期診断を簡便にする

血液1滴の検査を共同研究

同社は、2024年11月に東京都健康長寿医療センターと、早期アルツハイマー病のスクリーニング検査法の共同研究を始めました。使うのは、磁性ナノ粒子と卓上型の検査機器を組み合わせた「ThermaLISA法」です。軽度認知障害(MCI)の時期や、症状が出る前の時期の発見を目的にしています。臨床検体のデータを集め、認知症が疑われる人を判定するアルゴリズムの構築を計画しています。同センターの研究者が掲げる将来像は、血液一滴でのアルツハイマー型認知症の発症リスク判定です。

分離の速さで候補を絞り込む

同社は、創薬のハイスループットスクリーニング(多数の候補を一度に絞り込む手法)に使う「SegnoSCAN法」を開発しました。標的を結び付けたTherma-Maxに候補の分子が結合すると、磁石に引き寄せられるまでの時間が延びます。この分離の速さの違いを、市販の分光光度計(光の吸収を測る機器)で濁度として測ります。装置は、セルホルダー側面に磁石を置くだけの簡素な試作機です。2026年2月に、分析機器や試薬、製薬の各メーカー、大学などを対象に、共同開発パートナーの募集を始めました。

早期診断の簡便化を目指す

未病の段階にある極めて低い濃度のバイオマーカーの検出を、血液1滴で簡便に行えれば、早期診断と早期治療につながり、患者や家族の負担の軽減を見込めると、同社は考えています。診断薬メーカーなどとの協業で、実用化に向けた開発を進める方針です。誰もが自己採血で検査できる状態を、医療DXの一部として目指しています。

会社概要|株式会社SEGNOSの事業内容・設立背景

JNCと東京農工大の技術で独立

SEGNOSは、2024年2月にJNC株式会社と東京農工大学から、磁性ナノ粒子の技術と、DNAアプタマー(特定の分子に結合する短いDNA)を使う診断技術の独占的ライセンスを受けて独立した企業です。代表取締役の大西徳幸氏は、磁性ナノ粒子技術の発明者です。拠点は千葉市の千葉大亥鼻イノベーションプラザに置いています。

助成と認定を重ねる

2024年11月に、第23回ベンチャー・カップCHIBAのビジネスプラン部門でグランプリを受けました。Therma-MaxとVira-Maxは、千葉ものづくり認定製品(第197号)に認定され、2026年1月15日に認定証が授与されています。小笠原敏晶記念財団の2025年度インキュベンチャー助成にも採択されました。

診断薬メーカーとの協業を募る

同社は、ThermaLISA法の実用化に向け、診断薬メーカーをはじめとする協業企業を募集しています。小笠原敏晶記念財団からは1,000万円の助成を受けました。Therma-Maxの販売は、コスモ・バイオ株式会社が代理店として担っています。SegnoSCAN法の開発には、千葉県産業振興センターの助成金も活用しました。

会社情報

会社名株式会社SEGNOS(セグノス)
所在地千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-15 千葉大亥鼻イノベーションプラザ308
設立2024年2月22日
代表大西 徳幸(代表取締役)
事業各種試薬、分離診断材料の製造販売。刺激応答性磁性ナノ粒子Therma-MaxとVira-Maxの提供、ThermaLISA法とSegnoSCAN法の開発
技術領域刺激応答性磁性ナノ粒子、免疫診断、バイオセパレーション、ハイスループットスクリーニング
連携東京都健康長寿医療センターと共同研究(2024年11月)/JNC株式会社・東京農工大学から技術ライセンス(2024年2月)/コスモ・バイオ株式会社が代理店
採択出向起業補助金(経済産業省)採択(2024年7月)/千葉市創業支援補助金 採択(2024年8月)/第23回ベンチャー・カップCHIBA グランプリ(2024年11月)/千葉ものづくり認定製品 第197号(2026年1月)/小笠原敏晶記念財団 2025年度インキュベンチャー助成 採択
URLhttps://segnos.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

診断は、検体から標的を取り出す前処理の質に左右されます。その前処理に、粒子の性質そのものを切り替える発想で向き合う姿勢が印象に残ります。SEGNOSは、その切り替えを磁性ナノ粒子で実現しようとする企業です。

SEGNOSの粒子は、温度や塩のわずかな変化で凝集と分散を行き来します。小さくて感度が高く、集めるときは素早いという性質を、1つの材料で両立させる考え方です。素材の改良が、検査全体の速さと感度に効いていく点は、材料開発らしい価値といえます。

血液1滴の検査や創薬への応用が、今後どう具体化していくかに注目したいところです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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