ファイトケミカルプロダクツ株式会社|米ぬかの副生油からイオン交換樹脂法で機能性素材を回収する東北大学発の企業

ファイトケミカルプロダクツ株式会社

ファイトケミカルプロダクツ「イオン交換樹脂法」を研究|研究領域=副生油から・機能性成分を回収/強み=樹脂に通して・選択的に抽出/将来性=食品・化粧品・へ用途拡大

企業紹介|ファイトケミカルプロダクツ株式会社とは?

抗酸化成分トコトリエノール(ビタミンE類)を高濃度に含み、食品・化粧品原料として販売される「米ぬか由来スーパービタミンE」。ファイトケミカルプロダクツ株式会社は、その製造を担う、東北大学発の素材系ディープテック企業です。米油の製造過程で生じる未利用の副生油から、「イオン交換樹脂法」で機能性成分を取り出し、食品・化粧品メーカーへ供給しています。

キーワード「イオン交換樹脂法」

水処理に使われてきたイオン交換樹脂(水中のイオンを吸着・交換する粒状の材料)は、油の中では触媒としても働きます。樹脂を詰めたカラム(筒状の容器)に原料を通すと、反応と吸着分離が同じ装置で同時に進む仕組みです。ファイトケミカルプロダクツは、この反応分離技術を使い、米ぬかの未利用資源を高付加価値の素材へ変えています。

市場課題|米ぬか油の副生油が持つ課題

現状の米ぬか副生油の課題|現状は、成分を活かせないまま処理される|副生油は・低価値で扱われる/高温抽出で・成分が壊れる

副生油は低価値なまま扱われる

米油の製造工程で生じる副生油(主産物とともに生じる二次的な油)は、そのままでは食用に使いにくく、多くが飼料や廃棄物として低い価値のまま処理されてきました。廃棄に回る分には、処理の費用もかかります。この状態が続くと、副生油に含まれる機能性成分もそのまま活かされずに終わります。

高温抽出は成分が壊れやすい

ビタミンEなどの機能性成分は熱や酸化に弱く、従来の蒸留・抽出法では成分を壊しかねない高温を使うことが多く、成分の一部が損なわれます。溶媒を使う方法も、残留溶媒の除去や排水処理に工程とコストがかかります。そのため、副生油から成分を高純度のまま取り出す技術は限られてきました。

他にも、廃液処理の環境負荷、天然由来の抗酸化成分の代わりに化学合成品を使用せざるを得ない状況、未利用資源を活用する技術者の不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 副生油植物油の製造工程で主産物とともに生じる、脂肪酸やロウ分を含む二次的な油を指す。従来は飼料や廃棄物として処理されてきた。

ファイトケミカルプロダクツの強み|「イオン交換樹脂法」を開発

ファイトケミカルプロダクツが「イオン交換樹脂法」を開発|今後は、一設備で複数素材の生産が可能に|樹脂で成分・を選び回収/1つの設備・で複数生産

樹脂で成分を選んで回収

従来の蒸留・抽出法は、有効成分と不要な油分を分けるために高温や大量の溶媒を必要とし、成分の劣化や環境負荷を招いてきました。

ファイトケミカルプロダクツは、イオン交換樹脂を詰めたカラムに副生油を通し、機能性成分を選択的に回収する「イオン交換樹脂法」を開発しました。使用する溶媒も、バイオマス由来のエタノールに絞り込んでいます。反応は50℃程度の温和な条件で進むため、熱に弱いビタミンEの劣化を抑えたまま抽出できる点が特徴です。この結果、低い価値で処理されていた副生油から高純度の機能性素材を取り出せるようになり、食品・化粧品メーカーが選べる植物由来の原料が広がります。

一つの設備で複数素材を生産

単一の抽出法では回収できる成分が限られ、原料ごとに別々の設備を用意する必要があり、生産コストがかさんできました。

カラムに原料を通すだけで機能性成分を分離回収し、同時に残りの油成分をバイオ燃料や別の素材へ変換できます。同じイオン交換樹脂法の設備を使い、スーパービタミンEに加えて「こめパラフィン」や植物ステロールなど複数の機能性素材を連続して製造できる点が強みです。抽出装置を成分ごとに作り分ける必要がないため、設備投資を抑えながら副生油を多品目の原料へ無駄なく変換できるようになりました。この結果、石油由来原料に代わる化粧品・食品原料の選択肢が広がります。

FrontJournalの解説
  • こめパラフィン米ぬか油の副生油から作るパラフィンワックスを指す。石油由来品の代替として化粧品原料やクレヨンなどに使われる。

イオン交換樹脂法の未来|素材産業への応用

資源循環型の素材供給が変える未来|採用実績から量産・海外展開へ|化粧品・サプリ・原料に採用/実証設備で・量産工程を検証/資源循環を・世界へ広げる

サプリメント・化粧品に採用

米ぬか由来のスーパービタミンEは、すでにサプリメント「おコメのきもち」や化粧品原料として販売されています。食品・化粧品メーカー向けの原料は、ビタミンE混合油「こめトコリッチ」です。昭和産業との資本業務提携により、穀物の副産物を使った新しい原料の共同研究も進んでいます。身近な食品・化粧品の原料が、未利用資源から製造される例が広がりつつあります。

実証設備で量産工程を検証

2026年には、副生油から機能性素材とバイオ燃料を同時に製造する国内初の実証設備が稼働しました。従来のベンチスケール設備(研究室規模の小型装置)を大きく上回る処理量を備え、量産に向けた工程の検証が進んでいます。今後は樹脂の耐久性や自動化技術を磨き、安定した品質で供給できる体制を整えていく計画です。宮城県内での新工場建設も視野に入れています。

資源循環型の素材供給を目指す

ファイトケミカルプロダクツは、実証設備で検証中の製造方式について2028年の商業化を見据え、未利用資源を循環させる素材供給の仕組みづくりを目指します。装置やライセンスの提供を通じて、この技術を海外の油脂産業にも広げる構想です。低い価値で処理されてきた副生油が価値ある原料に変わることで、油脂の生産から消費までの資源循環が進むと考えられます。将来は、米だけでなく多様な植物油の未利用資源にも応用範囲を広げていく方針です。

会社概要|ファイトケミカルプロダクツ株式会社の事業内容・設立背景

東北大学の研究成果から創業

ファイトケミカルプロダクツは、東北大学大学院工学研究科の北川尚美教授が2005年に発表したイオン交換樹脂を用いた反応分離技術をもとに、2018年6月に設立されました。研究室出身でプラントエンジニアの経歴を持つ加藤まきこ氏が代表取締役に就任し、技術の事業化を進めています。設立当初の社名「ファイケム・プロダクツ」から、2020年8月に現在の社名へ変更しました。

受賞と昭和産業との提携

北川教授と廣森浩祐助教、加藤氏は、反応分離技術による資源循環への貢献が評価され、2024年に第56回市村地球環境学術賞の貢献賞を受賞しました。2024年11月には昭和産業と資本業務提携を結び、同社グループの副産物に反応分離技術を組み合わせて穀物由来の新素材を探る共同研究を進めています。両社にとっての開発のスピードアップや販売力の強化も、この提携の狙いに含まれます。

素材販売と技術提供が柱

ファイトケミカルプロダクツは、米ぬか由来の機能性素材の製造・販売と、イオン交換樹脂法を他社の生産設備に導入するための技術提供という、2つの事業を柱としています。資本金は8,000万円です。昭和産業との資本業務提携を通じて量産化に向けた開発を加速しており、宮城県内での新工場建設も計画に含まれます。

会社情報

会社名ファイトケミカルプロダクツ株式会社(Phytochemical Products Inc.)
所在地宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40-103
設立2018年6月
代表代表取締役 加藤 まきこ
資本金8,000万円
技術領域素材(米ぬか由来機能性原料の製造/イオン交換樹脂法の技術提供)
連携東北大学大学院工学研究科(北川尚美研究室)/昭和産業株式会社(資本業務提携)
採択第56回市村地球環境学術賞 貢献賞
URLhttps://phytochem-products.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

これまで低い価値で扱われてきた米ぬかの副生油に価値を見出し、日常の食品や化粧品へとつなげる発想に、地域資源を生かす好例を見た思いがします。水処理で長く使われてきたイオン交換樹脂が、熱に弱い機能性成分を壊さずに取り出す鍵になっている点も印象的です。研究室発の技術が現場の課題を解く様子は、地方発のディープテック企業らしい歩みです。

この技術の根底には、低い価値で処理されてきた原料を無駄にしないという発想の転換があります。昭和産業との資本業務提携や実証設備の稼働は、その発想を実際の生産現場へ広げる歩みです。一つの設備で複数の素材を生み出す仕組みに、他の未利用資源への応用余地も感じます。

米だけでなく多様な植物油の未利用資源へと、この技術が広がっていくことを期待したいです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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