JOCAVIO株式会社|静脈内への繰り返し投与を目指す腫瘍溶解性ウイルスを開発する福岡の企業

JOCAVIO株式会社(ヨカヴィオ)

JOCAVIO「腫瘍溶解性ウイルス」を研究|研究領域=がん細胞を壊すウイルスで治療/強み=細胞膜で覆い静脈内へ反復投与/将来性=人を対象とする臨床開発を目指す

企業紹介|JOCAVIOとは?

JOCAVIOは、静脈内(血管の中)への繰り返し投与を目指す「腫瘍溶解性ウイルス」の治療薬候補を、ヒト由来の細胞膜で覆う設計で研究開発する福岡の創薬企業です。がん細胞を壊すウイルスの性質を治療に生かす療法の、社会実装を目指しています。光による増殖の調節機構を組み込む設計の、全身投与型ウイルスの開発を進めています。

キーワード「腫瘍溶解性ウイルス」

腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞を壊す性質を持つウイルスを、治療に使うものです。国内では2021年6月に、第一三共の「デリタクト」が、腫瘍溶解性ウイルスとして初めて条件及び期限付き承認(条件を付けて期間限定で認める制度)を受けました。対象は悪性神経膠腫(脳腫瘍の一種)です。

市場課題|腫瘍溶解性ウイルスは投与の経路に制約がある

現状の腫瘍溶解性ウイルスの課題|現状は、投与の経路の制約で届く範囲が限られる/静脈内投与は抗体で弱まる場合も/体の深くの腫瘍へ直接注入しにくい

静脈内投与は抗体で弱まる場合も

静脈内投与では、ウイルスの種類によっては体内の抗体で効果が弱まることがあります。例えば腫瘍溶解性の5型アデノウイルス(風邪などの原因にもなるウイルスの仲間)は、多くの人が抗体を持つため、抗体で効果が弱まる場合があるとされています。この点は、全身へ届ける使い方での課題です。

直接注入は届かない場所がある

直接注入は、投与できる場所に限りがあります。国内で初めて承認された「デリタクト」は、悪性神経膠腫の腫瘍の中へ直接注入する薬で、投与は6回までです。体の深くにある腫瘍や転移巣(別の場所へ広がったがん)には、針を届けにくい点が課題です。

他にも、がん以外の細胞へ作用する副作用(オフターゲット効果)、ウイルスの過剰な増殖や遺伝子発現(遺伝子からたんぱく質が合成されること)、がんへの免疫が長く続かない可能性、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 静脈内投与薬を静脈から血液中へ入れる方法を指す。血流に乗って全身へ運ばれるため、体の複数の場所にあるがんへ届けることができる。

JOCAVIOの技術|腫瘍溶解性ウイルスの設計

JOCAVIOが「腫瘍溶解性ウイルス」を研究|今後は、細胞膜で全身への反復投与が可能に/細胞膜で覆い全身へ繰り返し投与/がん細胞を狙い光で増殖を制御

細胞膜で覆い全身へ繰り返し投与

従来の静脈内投与では、ウイルスの種類によっては、血中の抗体や免疫細胞に捕らえられ、効果が弱まることがあります。

同社は、ウイルスの表面をヒト由来の細胞膜で覆うコーティング技術を使います。体の免疫に認識されにくくすることを狙い、静脈内に投与した後も抗腫瘍効果(がんを攻撃する効果)が弱まりにくい、繰り返しの静脈内投与(全身反復投与)を可能にする設計です。あわせてウイルスに免疫刺激性遺伝子(免疫の働きを高める遺伝子)を導入し、がんへの免疫反応を長く続ける狙いです。静脈内投与が実現すれば、腫瘍への直接注射が難しい場合にも薬を届けられる可能性があります。実現には検証が必要です。

がん細胞を狙い光で増殖を制御

全身へ投与するウイルスは、がん以外の細胞にも作用する可能性があり、増殖の制御も課題になります。

同社は、ペプチド(アミノ酸がつながった短い分子)やナノ抗体(極小の抗体断片)をウイルスに付け、がん細胞を狙う性質を持たせる設計です。さらに、体の外から光を当ててウイルスの増殖と遺伝子の働きを調節する「光スイッチ」を組み込む設計です。体の外から調節できるようにすることで、ウイルスの過剰な増殖や遺伝子発現に備えます。同社は、がん細胞への特異性を高める工夫と光による調節の仕組みを組み合わせています。患者の負担が減るかどうかを含め、効果と安全性は今後の検証が必要です。

FrontJournalの解説
  • 免疫刺激性遺伝子ウイルスに組み込み、感染した細胞に免疫の働きを高める物質をつくらせる遺伝子を指す。がんに対する免疫反応を強め、長く続ける狙いで使う。

未来・開発計画|全身投与型ウイルスで臨床開発を目指す

全身投与型ウイルスが変える未来|臨床開発を目指し、治療の選択肢の拡大へ/国や福岡県の支援で研究が始動/動物実験とオルガノイドで確認/直接注射が難しい患者の選択肢の拡大へ

公的支援を得て研究が始動

同社は、設立の2021年から、国や福岡県の支援を受けて研究開発を進めています。福岡県のリーディングプロジェクトと、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業に採択されており、詳細は会社情報の表のとおりです。NEDOの「NEDO Entrepreneurs Program(NEP)」は、研究開発型のスタートアップを対象にしています。公式サイトには、候補品の薬効評価を行う工程が示されています。

動物実験とオルガノイドで確認

公式サイトのトップページ(2026年10月6日確認)には、2024〜2025年に動物実験とオルガノイド実験で効果を確認し、2026年をめどに臨床開発(人を対象とする試験)を目指すと記載されています。オルガノイド(がん組織を模して培養した立体的な細胞の塊)は、培養した細胞で薬の効き方を調べられる実験系です。同社の工程の進捗は確認できていません。人での有効性と安全性は、臨床開発の段階で確かめることになります。

治療の選択肢の拡大を目指す

同社が目指すのは、静脈内投与で体の複数の場所のがんに働きかけるウイルス療法です。その実現には、細胞膜によるコーティングと光スイッチが、実際の体の中でも働くことを示すことが前提です。同社は、「患者さんのかけがえのない人生に希望を」を使命に掲げ、患者の生存率の改善を目指しています。仮に実現した場合は、腫瘍へ直接注射できない患者にも、ウイルス療法という治療の選択肢が加わると想定されます。

会社概要|JOCAVIO株式会社

福岡で腫瘍溶解性ウイルスを開発

JOCAVIOは、2021年8月に設立された福岡市の創薬企業で、代表取締役は井上朋子氏(Ph.D.)です。事業は、腫瘍溶解性ウイルス療法の医療研究開発です。社名は「JOCAVIO(よかヴィオ)」で、「優れた(よか)技術でがんの克服を目指したい」という想いを掲げています。本社は、福岡市東区名島に置いています。

採択と国際ピッチの結果

同社は、2021年12月に、令和3年度の九州・大学発ベンチャー振興シーズ育成資金(ギャップ資金)と、福岡県バイオ技術研究開発環境整備支援事業に採択されました。2022年6月開催の国際ピッチイベント「Digital RESI 2022」で、「Innovator's Pitch Challenge」の発表企業に選ばれました。2022年8月16日には、RESIでの2位の獲得を公表しています。採択の一覧は、会社情報の表にまとめています。

信念と目指す姿

同社は、「がんで苦しむ患者さんに人生の希望を与え苦痛を取り除く」という信念を掲げています。九州発の新しいがん療法で、がんの克服と生存率の改善を目指しています。使命の英訳は「Hope for the irreplaceable life of patients」です。

会社情報

会社名JOCAVIO株式会社(よかヴィオ)
所在地〒813-0043 福岡県福岡市東区名島4-26-37
設立2021年8月
代表井上 朋子(代表取締役)
事業医療研究開発。腫瘍溶解性ウイルス療法の開発(ヒト由来細胞膜によるコーティングで静脈内への繰り返し投与を目指す。免疫刺激性遺伝子で抗腫瘍免疫の誘導を狙う)
技術領域腫瘍溶解性ウイルス、がん免疫療法、全身投与、細胞膜コーティング、ナノ抗体
採択福岡県リーディングプロジェクト(2021年8月)/NEDO Entrepreneurs Program 助成金(2021年10月)/福岡県バイオ技術研究開発環境整備支援事業(2021年12月)/九州・大学発ベンチャー振興シーズ育成資金(ギャップ資金)(2021年12月)/Digital RESI 2022 2位(2022年8月16日公表)
URLhttps://jocavio.jp/
出典:JOCAVIO公式サイト(トップ/会社案内/更新情報/会社概要/コア技術)、デリタクト承認(ケアネット)、用法・用量(ケアネット)、国内初の腫瘍溶解性ウイルス(日刊薬業)、5型アデノウイルスと静脈内投与(大阪大学ResOU)。確認日2026年10月6日

編集後記|FrontJournal編集部より

腫瘍溶解性ウイルスは、国内で初めて承認された製剤が、腫瘍へ直接注入する薬だった分野です。そこに、ウイルスを細胞膜で覆い、静脈内へ繰り返し投与するという設計で挑む点が目を引きます。投与の経路が広がれば、治療を受けられる患者の範囲も広がり得る点に意義があります。

全身へ投与する治療では、安全性の確認が効果と同じだけ重い課題です。がん細胞を狙う仕組みと、体の外から光で調節するスイッチを組み合わせる設計は、その課題に応えようとする試みです。有効性と安全性は今後の検証を待つことになり、動物実験とオルガノイド実験を経た先の動きを見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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