長良サイエンス「高純度標準品試薬」を研究

長良サイエンス株式会社

長良サイエンス「高純度標準品試薬」を研究

企業紹介|長良サイエンス株式会社とは?

分析や研究で、成分の量を測るときの基準となる「高純度標準品試薬」。長良サイエンス株式会社は、その社会実装を目指す、岐阜大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。茶カテキン類などの天然物の成分を高い純度に精製し、研究用の試薬として販売しています。

キーワード「高純度標準品試薬」

「高純度標準品試薬」は、食品や生薬に含まれる成分の量を測るとき、比べる基準として使う純度の高い試薬です。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などの分析では、標準品の測定結果と試料の測定結果を比べて、成分の量を求めます。標準品の純度が低いと、求めた量にも誤差が生じます。

市場課題|天然物由来の標準品は、確保が難しい

現状の標準品試薬の課題

純度が不確かだと定量に影響

天然物に由来する試薬は、純度の確かさが課題です。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開する日本薬局方(医薬品の品質基準を定めた公定書)の資料は、天然物由来の試薬の純度問題を取り上げています。同資料は、この問題を定量NMR(核磁気共鳴を利用して含量を求める方法)で含量を値付けすることで解決できるとしています。

純度を仮定すると定量値がずれる

同資料は、ゲニポシドの試薬を定量NMRで測ると、絶対純度は92%程度だったと示しています。この試薬の純度を100%と仮定して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で求めた定量値は3.0%で、純度を考慮した値は2.8%です。純度が不確かなままでは、定量値に約7%の差が出る例です。

他にも、純度の値付けや計量トレーサビリティの確保といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 定量NMR核磁気共鳴(NMR)の信号の強さが、含まれる原子の数に比例することを利用して、物質の含量を求める方法を指す。純度が分かっている標準物質を基準にして、試薬の含量を値付けするために用いる。

長良サイエンスの強み|「高純度標準品試薬」を研究

長良サイエンスが「高純度標準品試薬」を研究

高純度に精製し規格を明示

天然物には構造のよく似た成分が混在しているため、目的の成分だけを高い純度で取り出すには、精密な分離が必要です。

同社は、液体クロマトグラフィー用の充填カラムを主に同社製のものとして使い、精密な分離精製を行っています。充填剤は精密分級(粒子の大きさをそろえる処理)で微粒子を取り除いているため、低い圧力でも分析と分取(成分を取り出すこと)ができると、同社は説明しています。大豆イソフラボン配糖体のダイズイン、グリシチン、ゲニスチンは、2021年12月に純度規格を「≧99%(HPLC)」へ変更しました。純度が明示されるため、研究者は、規格を確かめた標準品を使えるようになり、分析の根拠を示しやすくなります。

約400種類の品目と受託合成

天然物由来の標準品は、成分ごとに精製の工程が必要で、品目がそろいにくい面があります。

同社の公式サイトには、高純度標準品試薬、有機合成原料試薬、糖鎖(糖が鎖状につながった分子)合成試薬などを合わせて約400種類販売していると記されています。2024年6月には、アオカビ属により産生されることで知られるプベルル酸を合成し、研究用試薬として販売を始めました。純度は「≧98%(HPLC)」で、包装は2mgと10mgで、グラム単位の合成にも対応するとしています。試薬の品目に加えて受託の精製と合成も受けるため、研究者は、市販の標準品が見当たらない成分についても、受託の対象として検討できます。

FrontJournalの解説
  • HPLC高速液体クロマトグラフィーの略称。試料を溶かした液を、充填剤を詰めたカラムに高い圧力で流し、成分ごとの移動速度の違いを利用して分ける分析手法を指す。分取に使うと、成分を取り出して精製できる。

高純度標準品試薬の未来|定量用の品目拡充とイチョウ成分の試薬

高純度標準品試薬が変える未来

日本薬局方向けの定量用試薬

同社は、日本薬局方の「定量用」「薄層クロマトグラフィー用」と表示した試薬を、すでに扱っています。2025年3月には、センソ(ヒキガエルの分泌物を乾燥した生薬)の成分であるブファリン、シノブファギン、レジブフォゲニンで、この表示の品を新製品欄に掲載しました。2024年4月には、ローヤルゼリー成分の10-ヒドロキシ-2-(E)-デセン酸でも同じ表示の品を加えました。いずれも2024年と2025年の新製品・新容量です。

受託の精製・合成・分析に対応

公式サイトは、受託精製、受託合成、受託研究を業務として掲げています。精製、合成、分析、研究のほか、NMRやLC-MS/MS(液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた装置)による機器分析も受託の対象です。トップページでも、受託分析を案内しています。試薬が在庫切れでも、迅速に大量の試薬を生産できると、公式サイトは説明しています。

イチョウ成分の試薬を提供

同社は、ギンコライド(イチョウの葉に含まれる成分)やギンコール酸などのイチョウ成分を、試薬として扱っています。前身のナカハラ科学は、2003年2月にイチョウ葉中のアレルギー物質ギンコール酸6種を世界初として発売しました。イチョウ成分の標準品が整えば、研究機関や企業は同じ基準で品質を確かめられます。基準が共通になることは、イチョウ成分の研究の土台といえます。

会社概要|岐阜大学発の試薬メーカー長良サイエンス

岐阜大学発の試薬メーカー

同社は、1999年9月に有限会社ナカハラ科学として創立され、2003年7月に長良サイエンス株式会社を設立した岐阜大学発の企業です。岐阜大学農学部の中塚進一教授(現・代表取締役、岐阜大学名誉教授)が開発した一連の分離精製法を活用し、地域と創業母体の岐阜大学を活性化するために設立されました。事業内容は、高純度標準品試薬・糖鎖合成試薬の製造販売、受託の精製・合成・分析・研究、微粒子の精密分級です。所在地は岐阜市古市場です。

沿革と受賞

2000年6月に岐阜県の補助事業に認定され、2002年3月には経済産業省の補助事業に認定されました。2006年2月には、安藤百福賞ベンチャー部門優秀賞を受賞しています。2007年11月には、第3回産学官連携ビジネス大賞最優秀賞を受賞しました。2011年6月に、現社屋へ移転しています。2013年7月の時点で、同社は生命科学研究用試薬約200種類のうち約140種を世界初の商品としていました。

体制と設備

公式サイトの会社概要によると、2013年7月時点で社員は役員を含む10名でした。資本金は3,000万円です。設備には、500MHzの核磁気共鳴装置(NMR)、LC-MS/MS、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)システム、分析・分取HPLC装置などを備えます。

会社情報

会社名長良サイエンス株式会社
所在地岐阜県岐阜市古市場840
設立1999年9月創立(2003年7月に株式会社として設立)
資本金3,000万円
事業高純度標準品試薬・糖鎖合成試薬の製造販売、受託の精製・合成・分析・研究、微粒子の精密分級
技術領域天然物成分の分離精製、高純度標準品試薬
採択岐阜県補助事業に認定(2000年6月)/経済産業省補助事業に認定(2002年3月)/安藤百福賞ベンチャー部門優秀賞(2006年2月)/第3回産学官連携ビジネス大賞最優秀賞(2007年11月)
URLhttp://www.nsgifu.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

標準品は、成分を測る分析の基準を支える土台です。長良サイエンスの取り組みは、構造のよく似た成分が混じる天然物から目的の成分を高い純度で取り出し、規格とともに届けている点が特徴です。基準となる試薬が確かであるほど、成分の量を測る研究や品質管理の結果も信頼しやすくなります。

大学の研究室で開発された分離精製の技術を、試薬の製造販売と受託に変えた歩みは、研究成果を事業につなげる現実的な道筋の一つだと考えます。基準となる試薬の品目がさらに広がり、研究者が必要な標準品を見つけやすくなる日を楽しみにしています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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