2026.10.01 │ 北海道大学・東北大学・理化学研究所 │ 元発表:2026.09.30

北大・東北大、核酸を内包し近赤外光で放出する金ナノカプセルを開発

ニュース紹介

「核酸を濃縮内包し、近赤外光放出する金ナノカプセルを開発 -新しい核酸ナノキャリアへの展開に期待-」

北海道大学電子科学研究所の三友秀之准教授、同大学大学院生命科学院博士後期課程の張冬雨氏、東北大学多元物質科学研究所の谷地赳拓助教、米倉功治教授(理化学研究所放射光科学研究センターグループディレクター兼務)らの研究グループは、核酸などの水溶性物質を高濃縮して内包し、近赤外光の照射によって効率的に放出できる金ナノ粒子カプセルを開発しました。理化学研究所のプレスリリースは、詳細について北海道大学のホームページを参照するよう案内しています。

出典:理化学研究所 2026年9月30日 プレスリリース(原論文DOI: 10.1002/smll.75754)
https://www.riken.jp/press/2026/20260930_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

今回の研究は、薬や核酸を体内の狙った場所へ届けるドラッグデリバリーシステム(DDS:薬物送達システム)に関わる分野です。核酸とはDNAやRNAなど遺伝情報を担う分子で、核酸医薬などの形で医療への応用が進んでいます。ただし核酸は水に溶けやすく壊れやすいため、運び手となる「キャリア」の設計が課題とされてきました。

キャリアの一つが、内部に物質を閉じ込める「カプセル」です。金ナノ粒子は、光を吸収して熱に変える性質を持つことから、光で内容物を放出する仕掛けに使えると考えられ、研究が進められています。

①相分離で核酸を濃縮してカプセル化する

東北大学の発表によると、研究グループは、水と水に混ざる有機溶媒を混合する過程で水相が縮小し、溶質が濃縮されて微小な水相ができる現象(相分離)を利用しました。この微小な水相の界面に、棒状の金ナノ粒子である金ナノロッドが集まることでカプセルが形成されます。従来のカプセルは水中で構造を保てず、内包物を外部刺激で放出する機能もなかったとされ、これを解決する狙いです。カプセルはポリエチレングリコール(PEG)で架橋して水中での安定性を高めています。同発表では、サイズは200nm以下、水溶性物質を1,000倍以上に濃縮し、DNAを90%以上の効率で内包したと説明されています。

②近赤外光で熱を生み、カプセルを崩して放出する

金ナノロッドは、吸収した近赤外光を熱に変える性質を持ちます。研究グループはこの性質を使ってカプセル構造を崩壊させ、内包した物質を放出させました。東北大学の発表では、波長810nmの近赤外LED光を用いて、内包したDNAの約97%を数分以内に放出できたとされています。近赤外光は可視光より生体組織を透過しやすい波長帯として知られ、体の深部に作用させる用途で研究対象になっています。

編集部からひとこと

今回の発表は材料開発の段階で、細胞への取り込みや生体への安全性は今後の検証課題とされています。東北大学は、これらを検証することで、核酸医薬などを必要な場所で光により放出する新たなDDSへの展開が期待されると述べています。濃縮して内包する工程と、光で放出する工程を一つのカプセルで両立させた点が、今後の核酸キャリア研究で参照される可能性があります。詳細な実験条件は北海道大学・東北大学の発表および原論文をご参照ください。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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