StapleBio|熊本大学発の「核酸医薬」を開発するライフサイエンス系ディープテック企業

株式会社StapleBio(ステープルバイオ)

StapleBio「核酸医薬」を開発

企業紹介|StapleBioとは?

病気に関わるタンパク質の量を、その設計図であるmRNA(遺伝情報を写し取ったRNA)の段階で調節する薬として、注目を集める「核酸医薬」。株式会社StapleBioは、その社会実装を目指す、熊本大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。mRNAの立体構造を変える「Staple核酸」を使い、希少疾患などを対象とした医薬品の研究開発を進めています。

キーワード「核酸医薬」

「核酸医薬」は、DNAやRNAと同じ構成単位でできた短い人工の核酸で、病気に関わるタンパク質の量を調節する医薬品です。多くの薬がタンパク質に結合して働くのに対し、核酸医薬の多くは設計図にあたるmRNAに結合します。そのため、従来の薬では狙いにくかった分子も標的にできると期待されています。

市場課題|核酸医薬は副作用と体内での分解が課題

現状の核酸医薬の課題

標的外への作用で副作用の恐れ

核酸医薬は、標的のmRNAだけでなく、よく似た配列を持つ別のmRNAにも結合する恐れがあります。こうした標的以外への作用はオフターゲット効果と呼ばれ、副作用の原因になり得ます。副作用のリスクが残ると、開発の途中で薬の設計を見直す必要が生じかねません。

体内の酵素で分解されやすい

核酸は体内の酵素で分解されやすく、薬として使うには分解されにくい人工核酸(化学的に改変した核酸)への置き換えが欠かせません。ところが、既存の核酸医薬の多くは細胞内の酵素と連動してmRNAに作用するため、すべてを人工核酸に置き換えると効き目が弱まることがあります。体内での安定性と効き目を両立させる設計は困難です。

他にも、患者数が少ない希少疾患での治療薬開発の進みにくさや、急速に広がる感染症へ短期間で治療薬を用意する難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • オフターゲット効果薬が狙った標的以外の分子に作用してしまう現象である。核酸医薬では、標的のmRNAとよく似た配列を持つ別のmRNAに結合することで起こり、副作用の原因になる。

StapleBioの強み|「核酸医薬」を開発

StapleBioが「核酸医薬」を開発

2つの条件で標的を選び分け

従来の核酸医薬は、mRNAと配列が合えば作用が始まる仕組みのため、似た配列を持つ別のmRNAへの結合が副作用につながることがありました。

同社の「Staple核酸」は、標的のmRNA上で離れた2か所に結合し、その間にあるグアニン(核酸を構成する塩基の一種)の繰り返し配列をホッチキス留めのように近づけます。近づいたグアニンはrG4構造(グアニンが集まってできる安定な四重鎖の立体構造)を形づくり、タンパク質の合成を抑えたり、増やしたりします。効果が出るには、配列が合うことと、rG4構造ができることの両方が必要です。そのため、狙った遺伝子だけに働きやすくなり、副作用のリスクを抑えた治療薬を設計できるようになります。

分解されにくく体内で安定

従来の核酸医薬の多くは、細胞内の酵素と連動して働くため、分解されにくい人工核酸に置き換えられる範囲が限られていました。

Staple核酸は、mRNAに結合して立体構造そのものを変えるだけで作用し、細胞内の酵素との連動を必要としません。そのため、配列のすべてを体内で分解されにくい人工核酸に置き換えても、効果が弱まらない点が特徴です。人工核酸は体内の酵素に分解されにくいため、投与した薬は体内で形を保ったまま安定して働けます。こうして体内での安定性と効き目の持続を両立でき、患者に長く効く治療薬を設計できるようになります。

FrontJournalの解説
  • rG4構造RNA G-quadruplexの略で、グアニンが多い領域で4つのグアニンが平面に並び、その面が重なってできる四重鎖の立体構造である。安定な構造で、mRNA上にできるとタンパク質の合成に影響する。

核酸医薬の未来|標的を選ぶ治療薬の開発が進む

標的を選ぶ核酸医薬が変える未来

タンパク質を減らす技術を開発

熊本大学、弘前大学、名古屋大学、神戸薬科大学と同社を中心とする研究グループは、Staple核酸で標的タンパク質の合成を選択的に抑える技術「RNAハッキング」を開発しました。成果は2025年10月に学術誌「Nature Biomedical Engineering」に掲載されています。薬の効き目を落とさずに、すべてを人工核酸で作れることも示されました。この技術は、心疾患や希少な遺伝性疾患への応用が期待されています。

希少疾患の治療薬開発を推進

同社は、希少疾患の治療薬開発を沖縄県の拠点で進めます。2026年度には、沖縄県の「沖縄先端医療技術基盤形成促進事業(研究高度化事業)」に採択されました。同社はこの事業で、Staple核酸自身にグアニンの配列を組み込み、理論上ほぼすべてのヒト遺伝子を標的にできる改良型の設計を最適化し、希少疾患の治療への応用を目指します。治療法の限られた希少疾患の患者に、新しい治療の選択肢を届ける足がかりになります。

感染症治療薬の迅速開発を目指す

同社が目指すのは、急速に広がる感染症に対しても、治療薬を迅速に届けることです。Staple核酸には、ウイルスの増殖を抑える働きや、異常なタンパク質の発現パターンを正常化する働きもあるとされています。Staple核酸は配列設計の自由度が高く、短期間で設計から機能検証までを終えられるとされます。2024年5月の発表で、同社は自動設計を可能にするソフトウェアを開発中としていました。

会社概要|株式会社StapleBio

熊本大学の研究から設立

StapleBioは、2021年11月30日に設立された熊本大学発のベンチャー企業です。中核技術のStaple核酸は、熊本大学大学院先端科学研究部の勝田陽介准教授らが開発しました。代表取締役CEOの谷川清氏は、大鵬薬品工業で創薬研究や経営戦略に携わり、大鵬薬品工業のCVC(事業会社が運営するベンチャー投資の組織)である大鵬イノベーションズの設立を担った人物です。勝田氏は取締役CSOとして研究開発を率いています。2022年7月には、沖縄県うるま市の沖縄ライフサイエンス研究センター内に沖縄研究所を開設しました。

国の支援事業と共同研究

同社は2022年10月、経済産業省の「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」に採択され、Staple核酸の自動設計ソフトウェアの開発を始めました。2023年4月には、九州のスタートアップ支援プログラム「J-Startup KYUSHU」に選ばれています。研究面では、熊本大学や弘前大学、名古屋大学、神戸薬科大学と共同研究を進めてきました。

研究体制の拡充へ資金調達

同社は2024年4月、第三者割当増資で総額4.6億円の資金調達を実施しました。引受先は、既存投資家の大鵬イノベーションズと肥銀キャピタルに加え、Diamond Medino Capital、三菱UFJキャピタル、住商ファーマインターナショナルです。助成金を含む累計調達額は、2024年5月時点で約7.1億円です。調達した資金は、研究員の増員や研究所の拡充、Staple核酸を用いた創薬の基盤づくりと新しい開発品の創出に充てます。

会社情報

会社名株式会社StapleBio(StapleBio Inc.)
所在地本社:熊本県熊本市中央区黒髪2丁目39番1号。沖縄研究所:沖縄県うるま市州崎5-8(沖縄ライフサイエンス研究センター内)
設立2021年11月30日
代表谷川 清(共同創業者・代表取締役CEO)。勝田 陽介(共同創業者・取締役CSO、熊本大学大学院先端科学研究部 准教授)
調達シードラウンド:大鵬イノベーションズ。第三者割当増資 4.6億円(2024年4月):大鵬イノベーションズ、肥銀キャピタル、Diamond Medino Capital、三菱UFJキャピタル、住商ファーマインターナショナル。累計調達額 約7.1億円(助成金含む・2024年5月時点)
事業Staple核酸技術に基づく医薬品等の研究開発
技術領域次世代型核酸医薬「Staple核酸」。RNA G-quadruplex構造の誘導によるタンパク質の発現制御(RNAハッキング)。論文:Nature Biomedical Engineering(2025年)、Angewandte Chemie International Edition(2026年)
連携熊本大学(熊本大学発ベンチャー)。弘前大学・名古屋大学・神戸薬科大学(共同研究)
採択経済産業省 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業・2022年10月)。J-Startup KYUSHU(2023年4月)。沖縄県 沖縄先端医療技術基盤形成促進事業(研究高度化事業・令和8年度)
URLhttps://staplebio.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

核酸医薬は、これまでの薬では狙いにくかった分子に働きかけられる手段として、研究と開発が広がっている分野です。一方で、副作用や体内での分解といった課題も抱えてきました。StapleBioは、mRNAの形そのものを変えるという別の道筋で、その課題に向き合っています。

興味深いのは、配列が合うことと立体構造ができることの2つを効き目の条件にして、薬の選択性を高めている点です。人工核酸の設計で安全性を高める大阪大学発のルクサナバイオテクのように、国内では核酸医薬の新しい方式を形にする企業が現れています。熊本県の大学発企業は、熊本大学発スタートアップ10選でも紹介しています。

熊本大学の研究から生まれたStaple核酸が、治療薬を待つ希少疾患の患者のもとへ届く日を、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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