2026.10.24 │ 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) │ 元発表:2026.10.22

東京大学ら、深海でも分解が進む酵素内包プラスチックを開発

ニュース紹介

「深海でも分解が進む酵素内包生分解性プラスチックの開発に成功しました―海洋マイクロプラスチック汚染問題の低減に貢献―」

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のムーンショット型研究開発事業「生分解開始スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチックの研究開発」で、東京大学、海洋研究開発機構、群馬大学は、分解微生物が少ない深海などでも分解が大幅に速く進む「酵素内包生分解性プラスチック」を開発しました。生分解性プラスチックに、自然由来の分解酵素(クチナーゼやリパーゼなど)を熱で溶かしながら練り込んで作ります。酵素を加えても元のプラスチックと同等の強度や柔軟性を保ち、さまざまな製品に熱成形できます。

このプラスチックは岸壁では1カ月以内に、水深757m付近の深海でも5カ月以内に完全に分解しました。分解速度は、酵素を内包しない場合の約30倍でした。低温(4℃)で高い水圧(7.6MPa、大気圧の約75倍)の深海でも、酵素は働きを失いませんでした。また、酵素は水が無い環境では働かないため、製品として使う間はほとんど分解せず、環境中に流れ出て摩耗や破損で酵素に水が触れると分解が始まります。成果は2026年10月21日(ロンドン時間)に英科学誌Natureのオンライン版に掲載されました。

出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 2026年10月22日 ニュースリリース(掲載誌:Nature/DOI: 10.1038/s41586-026-11192-1)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101963.html

FrontJournalの解説

生分解性プラスチックとは

今回のテーマは「生分解性プラスチック」です。微生物が出す分解酵素によって、最終的に二酸化炭素と水にまで分解されるプラスチックを指します。発表では、毎年約800万トンのプラスチックごみが海に流れ出ている可能性があるという報告も紹介されています。NEDOが担当するムーンショット目標4(2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現)では、環境汚染の解決に向けた研究の柱の1つに海洋生分解性プラスチックが挙げられています。

①深海では「分解する微生物」が少ない

同じ事業では2024年に、さまざまな生分解性プラスチックが水深757m~5552mの深海底でも微生物によって分解されることが明らかにされ、Nature Communications誌に掲載されました。一方で、深海での分解は遅く、速いものでも完全な分解に数年かかることも分かりました。そこで今回は、分解に必要な酵素をあらかじめプラスチックの中に入れておき、微生物が少ない場所でも分解を進められるようにしました。

②使う間は分解せず、流れ出ると分解が始まる

今回のプラスチックは、事業名にもある「生分解開始スイッチ機能」(使う間は普通のプラスチックとして使え、環境中に出ると分解が始まる働き)を備えています。乾いた状態では酵素が働かず、割れたり表面が削れたりして水に触れたときに分解が始まります。研究グループがこの材料で作った直径数十ミクロンの小さな粒も、さまざまな海の環境で速やかに分解されました。5ミリ以下のマイクロプラスチック(細かいプラスチック片)が回収しにくいまま広がる問題の低減につながる可能性があります。

編集部からひとこと

今回の成果は、分解を微生物まかせにせず、材料の中に分解の仕組みを組み込むという発想を深海で確かめた点に注目したい研究です。NEDOは今後、実際の使用環境での長期耐久性や安全性の検証、ほかの素材への応用、酵素を入れる工程のコスト低減やスケールアップを進めるとしています。製品として使える強度と、海に出たあとの分解をどう両立させていくのか、今後の検証結果を待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

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