先端半導体の製造費を下げるX線露光装置を研究する Substrate(米国発)

先端半導体の製造費を下げる「X線露光装置」を研究【Substrate|米国発】

AI向けの先端半導体は需要が伸びる一方で、工場と製造装置の費用が膨らみ、製造できる企業が限られています。この課題に挑むのが、米国のスタートアップ、サブストレート(Substrate)です。粒子加速器で生むX線を光源に使い、半導体の回路をシリコンの板に焼き付ける「X線露光装置」を研究しています。同社は、2nm世代の半導体に相当する解像度を得たと公表しました。2025年10月には、約1億ドル(約150億円)の調達と、約10億ドル(約1,500億円)の企業評価額が報じられました。

先端半導体製造の課題

Substrateの紹介と、先端半導体の工場建設費と露光装置の価格が上がり続けていることを示す図

先端工場の建設費が高騰

先端半導体を製造する工場(ファブ)は、世代が進むごとに建設費が膨らんでいます。Substrateが公開した資料によると、1工場あたりの建設費は2010年代前半の約50億ドル(約7,500億円)から、現在は約250億ドル(約3.8兆円)に達しています。同じ資料は2030年に500億ドル(約7.5兆円)を超えると見込んでおり、先端工場を建てられる企業と国はさらに限られます。

露光装置の価格が上昇

回路を描く露光装置の価格上昇も、製造費を押し上げています。最先端の工程ではEUV(極端紫外線)の光で回路を焼き付けており、その最新型の装置は1台約4億ドル(約600億円)と報じられています。装置の価格が上がり続ければ、ウエハー1枚あたりの製造費も上がり、AI向け半導体の価格に跳ね返ります。

FrontJournalの解説
  • 露光装置光を当てて、回路の図柄をウエハーの表面に写し取る装置。写真の焼き付けに近い仕組みで、光の波長が短いほど細かい回路を描ける。
  • ウエハー半導体の材料となるシリコンの薄い円板。直径300ミリメートルが主流で、1枚から数百個のチップを切り出す。
  • EUV(極端紫外線)紫外線の中でも特に波長の短い光(波長13.5nm)。最先端の半導体の露光に使われ、装置は1社がほぼ独占的に供給している。

Substrateが「X線露光装置」を研究

Substrateの研究を示す図。粒子加速器で生むX線で2nm世代に相当する細かな回路を描き、1回の露光で製造工程を短くする

課題に挑むSubstrate

Substrateは、粒子加速器を光源にした「X線露光装置」と、それを使う半導体工場を研究する米国の企業です。2022年に、ジェームズ・プラウド氏とオリバー・プラウド氏の兄弟がサンフランシスコで創業しました。米国の国立研究所とサンフランシスコの自社拠点で技術を実証し、量産工場で使える品質の300ミリウエハー用露光装置を社内で完成させたと公表しています。

加速器の光で2nm級の解像度

「X線露光装置」は、EUVより波長の短い光を使うため、原理上はより細かな回路を描けます。同社の装置では、電子を高周波の電場でほぼ光の速さまで加速し、向きが交互に変わる磁石の列の中で蛇行させて強いX線を取り出します。磁石の列で電子を蛇行させて光を得る仕組みは、大型放射光施設SPring-8の後継となるSPring-8-ⅡやX線自由電子レーザーでも使われています。同社は、回路の最小寸法約12nm、配線をつなぐ穴の中心間隔約30nmの図柄を描き、2nm世代(製品の世代を表す呼び名で、実際の寸法ではない)に相当する解像度を得たと発表しています。

1回の露光で工程を短縮

同社によると、「X線露光装置」は細かな層を1回の露光で描けるため、製造工程を短くできます。現在の最先端の工程では、細かな層を描くために露光を複数回に分けて重ねるマルチパターニングが必要な場合があります。この重ね描きが不要になれば露光の回数が減り、1枚のウエハーを仕上げるまでの日数も短くなります。出資したGeneral Catalystは、EUVに代わる、より速く安い製造方法になり得ると評価しています。

FrontJournalの解説
  • X線EUVよりさらに波長の短い光。病院のレントゲン撮影に使われるものと同じ仲間で、波長が短いぶん、露光ではより細かな図柄を描ける。
  • 粒子加速器電子などの粒子を電場で加速する装置。高速の電子を磁石で曲げると強い光が出る。放射光施設では、この光を物質の分析に使っている。
  • マルチパターニング1回の露光では描けない細かな図柄を、露光を複数回に分けて重ねて描く方法。工程の数が増えるぶん、製造の時間と費用がかかる。

X線露光装置の未来

X線露光装置の未来を示す図。米国内での先端半導体の量産、AI半導体の低価格化をめざし、約150億円の資金を調達した

米国で先端半導体の量産が可能に

Substrateは、自社の「X線露光装置」を備えた工場を米国内に建て、半導体の受託製造を担う計画です。2028年に大規模な量産を始めることを目標にしています。現在、米国の半導体設計企業の多くは、最先端品の製造を海外の工場に頼っています。計画が実現すれば、米国内で先端半導体を調達する選択肢が加わります。

AI半導体の低価格化を目指す

同社は、先端半導体の製造費を下げ、AI向け半導体を入手しやすくすることを目指しています。最先端のウエハー1枚の製造費は2030年に約10万ドル(約1,500万円)に達するとの見方がある中、同社は2020年代の終わりまでに約1万ドル(約150万円)で製造することを目標に掲げています。製造費が下がれば、データセンターで使うAI向け半導体の調達費も下がります。生成AIのサービスを提供する企業にとって、設備投資の負担が軽くなる可能性があります。

約150億円の資金を調達

2025年10月、Substrateによる約1億ドル(約150億円)の資金調達と、約10億ドル(約1,500億円)の企業評価額が報じられました。出資者にはFounders Fund、General Catalyst、Valor Equity Partnersのほか、米国の情報機関系の投資組織In-Q-Telも加わっています。大きなウエハー全体で同じ精度を高速で保てるかは未知数だとして、量産規模への拡大を疑問視する専門家の見方も報じられており、同社は実証を積み重ねる段階にあります。調達した資金で装置と工場の開発を進め、2028年の量産目標に向けた体制を整えます。

FrontJournalの解説
  • 受託製造(ファウンドリ)他社が設計した半導体を、注文を受けて製造する事業。設計だけを行う企業は、この事業者に製造を任せる。
  • 企業評価額投資家が見積もった会社全体の価値。未上場の企業では、資金調達のときの株価をもとに算出される。

まとめ

Substrateは、粒子加速器で生むX線を使い、先端半導体の製造費を下げる「X線露光装置」を研究しています。2nm世代に相当する解像度を得たと公表し、自社工場での量産に向けた準備を進めています。露光装置を含む半導体製造装置の動向は、国内でも12月に東京ビッグサイトで開かれるSEMICON Japan 2026で確かめられます。FrontJournal編集部は、実証を重ねた「X線露光装置」が、露光方式の新しい選択肢に加わることに期待しています。製造費が下がり、AI向け半導体がより多くの企業に行き渡る将来にも注目します。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Substrate 公式(Our purpose)、General Catalyst「Our Investment in Substrate」、SiliconANGLE(2025年10月28日)、TechSpot、TrendForce。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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