CES-Alpha|「自動採点」を開発する新潟大学発の教育系企業

株式会社CES-Alpha(シーイーエスアルファ)

CES-Alpha「自動採点」を開発|研究領域=数式とコードを自動で採点/強み=式が等価なら形が違っても正解/将来性=AI時代の数理教育を目指す

企業紹介|CES-Alphaとは?

提出された数式やプログラムをその場で判定し、教員の採点の手間を抑える技術として、注目を集める「自動採点」。株式会社CES-Alphaは、その社会実装を目指す、新潟大学発の教育系ディープテック企業です。数学とプログラミングの自動採点を備えたクラウド教育プラットフォーム「CES-Alpha」を、大学や高校へ提供しています。

キーワード「自動採点」

「自動採点」は、学習者の解答をコンピュータが正誤判定し、結果をすぐに返す採点方式です。同社の自動採点の特徴は、数式は式の同値性、コードは変数の値を基準に判定し、書き方が違っても中身が正しければ正解にできる点にあります。大学や高校の数学とプログラミングの授業で、解答を提出した学生が、その場で結果を確認できます。

市場課題|数学とコードの演習採点に課題

現状の演習採点の課題|現状は、数式は手間が増え、コードは初心者に使いにくい/数式の採点は手間が増える/コード採点は初心者に使いにくい

数式の採点は手間が増える

数学の授業では、入力された数式をコンピュータで正しく採点するのに手間がかかります。多くの数式処理システムは、式の意味でなく構造の違いで一致を判定し、「x²−1」と「(x−1)(x+1)」を同じ式とみなしません。書き方が違うだけの正答を誤りと判定するおそれがあり、正しく採点するには判定方法の工夫が必要です。

コード採点は初心者に使いにくい

プログラミングの演習でも、コンテストやスキルチェックの形式を中心とするコード自動採点サービスは、初心者に使いにくい面があります。入力された値を受け取り、決まった形式で結果を出力するコードを書ける力が前提とされているためです。入出力の書き方を学ぶまで演習を始められず、授業での活用が限られます。

他にも、学生のパソコンへのソフトウェアの導入、学生からの質問への対応、提出が集中したときの採点、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 自動採点学習者の解答をコンピュータが正誤判定し、結果を返す仕組み。判定の基準は、正解との一致や数式の同値性、プログラムの実行結果など方式で異なる。採点の待ち時間と教員の作業を減らせる。

CES-Alphaの強み|「自動採点」を開発

CES-Alphaが「自動採点」を開発|現在は、数式とコードの自動採点を提供/数式の同値判定で解答を採点/変数の値を直接比べて採点

数式の同値判定で採点する

穴埋めの出題では、教員が学習者の解答を予測し、正解のパターンを用意する必要があります。

同社の「CES-Alpha」は、Python(プログラミング言語)の数式処理ライブラリ「SymPy」(数式を扱うプログラムの部品集)で入力された式を解析し、式が等価であれば正解と判定します。答えが「2(x+1)」の問題に「2x+2」と入力しても正答になり、教員が用意する正解は1つで足ります。問題はTeX(数式を組版する記法)で書き、係数を乱数で変えた出題にも対応している点も特徴です。教員は解答パターンを予測せずに済み、問題の作成にかかる時間を抑えられるようになります。

変数の値でコードを採点する

出力した文字列を正解と照合する方式のコード採点は、出力の形式に縛られます。

同社のコード採点は、学生のコードの後ろに採点用のコードを自動で付け足して実行し、指定した変数の値を正解と直接比べる方式です。文字列に出力する必要がないため、辞書型(キーと値を組で保存するデータ形式)の変数も値どうしで比べられ、数値計算では許容誤差(正解とみなす範囲)を決めた判定にも対応します。学生のコードはサンドボックス(外部に影響しない隔離された実行環境)で実行され、無限ループや不正なアクセスを防ぐ設計です。初心者でも演習をすぐに始められ、教員も問題を簡単に作成できます。

FrontJournalの解説
  • サンドボックス外部のシステムやファイルに影響しないよう、プログラムの動作範囲を隔てた実行環境。学生のコードに誤りや悪意があっても、他の環境やサーバーへの影響を抑えて実行できる。

未来|自動採点とAIが数理教育を支える

自動採点が変える教育の未来|授業と試験、研究計算へ広がる/大規模授業の採点負担を軽減/試験と研究計算へ機能が拡大/AI時代の数理教育を目指す

大規模授業の採点負担を軽減

東北大学では、大規模な授業の採点の負担を抑える使い方が見られます。東北大学は、全学規模の機械学習の演習に「CES-Alpha」を導入し、導入初年度から450名を超えるクラスで運用しました。受講生は提出後すぐに採点結果を受け取り、間違いを直して再提出できます。AIによるヒントで、受講生が教員やTA(授業の補助者)へ質問する前に手がかりを得られ、教員スタッフの負担の軽減を図れるとされています。

試験と研究計算へ機能が拡大

同社は2026年に入り、演習に加えて、試験と研究の計算にも機能を広げました。2026年5月に加えた「プログラミング試験」機能では、学生1人に1台の試験専用の仮想マシン(クラウド上の仮想的なコンピュータ)を割り当て、授業環境から切り離して受験できます。問題の配布と提出物の回収は自動で行われます。研究向けの計算サービス「Academic Cloud」では、GPU(機械学習に使う演算装置)を数分で起動できるようになりました。

AI時代の数理教育を目指す

同社が目指すのは、数理科学とデータサイエンスの教育にAIを取り入れ、教員の負担を減らして学習効果を高めることです。AIの学習サポートは採点とは別の機能で、答えを教えず、つまずきに応じてヒントを示す設計であり、2025年12月に強化されました。早稲田大学高等学院では、プログラミングと数学の授業に使われています。実現すれば、教員は、学生のつまずきを分析して授業を組み立てる時間を確保できるようになります。

会社概要|株式会社CES-Alpha

新潟大学の研究室から創業

株式会社CES-Alphaは、2022年8月に設立されました。システムを開発したのは、当時新潟大学の准教授だった劉雪峰氏です。劉氏は数学と科学技術計算を研究し、2015年に同大学の研究室でクラウド教育システム「Cloud Education System(CES)」の開発を始め、授業で使いながら改良を重ねてきました。現在は東京女子大学の兼業許可を得て、代表取締役として同社の事業に取り組んでいます。

大学認定と部門賞の受賞

同社は2023年4月に、新潟大学発ベンチャー称号の認定第6号を受けました。劉氏は2021年度に、開発したシステムを学長教育助成制度の課題で活用したほか、スタートアップ支援事業「みちのくGAPファンド」(東北・新潟の大学の研究者による起業の準備を支援する制度)に採択されています。2024年には、第21回日本e-Learning大賞(eラーニング分野の表彰制度)で、同社が「プログラミング教育特別部門賞」を受賞しました。

授業1コマから利用できる

同社の事業は、教育機関向けのクラウド教育システムの提供です。大学や学部単位の包括契約のほか、授業1コマの単位からも利用できます。導入実績は2025年度に大学6校と高校1校で、同社のサイトでは東北大学、新潟大学、東京女子大学、早稲田大学高等学院が紹介されています。資本金は205万円、資本準備金は205万円で、金融機関からの借入はありません。

会社情報

会社名株式会社CES-Alpha
所在地神奈川県横浜市港北区新横浜3丁目24番5号 新横浜ユニオンビルANNEX7階
設立2022年8月
代表代表取締役 劉雪峰
資本金205万円(資本準備金205万円)。法人番号 6020001147915
事業クラウド教育プラットフォーム「CES-Alpha」の開発・提供(数学とコードの自動採点、プログラミング環境、AI学習サポート、オンライン試験)。研究・教育向け計算サービス「Academic Cloud」
技術領域数式処理、コードの自動採点、クラウド(Google Cloud)、AI学習サポート
連携新潟大学(2023年4月に新潟大学発ベンチャー称号の認定)。導入校として東北大学、新潟大学、東京女子大学、早稲田大学高等学院
採択第21回日本e-Learning大賞 プログラミング教育特別部門賞(2024年)。みちのくGAPファンド(劉雪峰氏が採択)
URLhttps://www.ces-alpha.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

採点は、教員が学生の理解を知るための手段の一つです。正誤の判定を機械に任せる意義は、教員が時間を使う先を変えられる点にあります。自動採点が広がれば、教員は点数をつける作業から離れ、学生のつまずきを読み取って授業に生かす時間を取り戻せます。

興味深いのは、同社の仕組みが、研究者が授業で使いながら磨いてきたものである点です。数式の同値判定や、変数の値の直接比較といった具体的な工夫は、既存の方式では対応しにくい採点の課題に応えるものです。単なる採点の省力化でなく、初心者が入り口でつまずかない設計にまで踏み込んでいる点に、教育現場への目配りが見えます。

AIの時代に、教える側の時間をどこへ振り向けるのか。同社の今後の歩みに注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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