日本と欧州は次の世界的テック企業を生み出せるか

日本と欧州は次の世界的テック企業を生み出せるか【Global Startup EXPO2026レポート】

日本と欧州には、世界水準の研究と技術を持つディープテックのスタートアップが数多く生まれています。一方で、その技術を世界規模の事業へ育てる段階では、資金と人材の不足が課題になっています。このセッションでは、欧州と日本の投資家が、技術が大きな事業になる条件と、日欧が組む意味を語りました。

Front Journal編集部は、2026年10月6日・7日に大阪で開かれたスタートアップの国際イベント「Global Startup EXPO 2026」に参加しました。本記事では、10月7日のセッション「シリコンバレーの、その先へ:日本と欧州は、次なる世界的テック企業を生み出せるか?」で語られた、成長段階の資金不足、投資家が見る判断基準、海外の投資家を迎える準備を紹介します。

セッション概要:日本と欧州の投資家が語る世界展開

Global Startup EXPO 2026のセッション「日本と欧州は次の世界的テック企業を生み出せるか」の会場

セミナー概要・登壇者

タイトルシリコンバレーの、その先へ:日本と欧州は、次なる世界的テック企業を生み出せるか? ~日欧の資本・技術・市場をつなぎ、さらなるグローバル展開を加速する~
日時・会場2026年10月7日 10:50〜11:35/ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター
登壇者Jean Schmitt氏(Jolt Capital)
Luca Eisenstecken氏(Atomico パートナー)
久村 俊幸氏(株式会社産業革新投資機構 取締役CIO)
司会:河田 美緒氏(日本貿易振興機構(JETRO) 理事)

出典:Global Startup EXPO 2026 公式セッションページ

内容

セッションは2026年10月7日、大阪のナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターで行われました。欧州で成長段階のディープテックに投資するJolt CapitalのJean Schmitt氏、ロンドンを拠点に成長段階の企業へ投資するAtomicoのLuca Eisenstecken氏、産業革新投資機構(JIC)の久村 俊幸氏の3人が登壇し、JETROの河田 美緒氏が司会を務めました。

議論の軸は、優れた技術がいつ、どうすれば大きな事業になるかです。日本と欧州はどちらも技術力が高い一方で、事業を大きく育てる段階の資金が足りないという共通の課題を抱えています。スタートアップで資金調達や海外展開に関わる人、ディープテックへの投資に関心がある人にとって、海外の投資家の考え方を知る手がかりになる内容でした。

【POINT①】日欧に共通する課題は、成長段階の資金不足

日本と欧州では、創業期のスタートアップへの資金はそろってきた一方で、事業を大きくする段階の資金が足りていません。久村氏は、日本では政府と民間のファンドによってディープテックやライフサイエンスの初期の資金が改善したと説明しました。そのうえで、シリーズAとシリーズBの間に資金の空白が残っていると指摘しました。

Eisenstecken氏は、欧州も初期の資金の差は縮まったものの、成長段階の資金は大きく不足していると語りました。海外の資金に頼らないためにも、域内の成長資金を増やす必要があるという指摘です。Schmitt氏は、日本も欧州と同じく技術に強い半面、株主が細かく分散した会社が多く、後の段階の投資家が入りにくいと述べました。久村氏は、売上1億ドル規模から10億ドル規模へ事業を育てた経験を持つ経営人材がまだ少なく、育つまでに3〜5年かかるという見通しを示しました。

【POINT②】投資家が見るのは、技術と実績と「どこまで大きくするか」

投資を決める基準は、投資家の立場によって異なります。Schmitt氏は、成長後期の投資家として、強い知的財産、動く製品、満足している顧客がそろっていることを重視すると語りました。売上がない段階の製品のリスクは取らず、現実的な計画で約5年のうちに大きな売上に届く道筋があるかを見るといいます。

Eisenstecken氏は、世界の投資家は日本の会社にも同じ基準を当てはめると述べました。重視するのは、ファンド全体の成果を左右するほど大きく育つ可能性と、困難があっても挑み続ける野心です。海外の売上は投資の時点で必須ではなく、国内市場が大きく、世界で通用する製品と計画があればよいと語りました。2人とも、投資家の助言に耳を傾け、ともに歩むパートナーになれる経営者かどうかを大切にしていました。

【POINT③】海外の投資家を迎えるには、株主の組み方から準備する

海外の投資家を呼び込むには、国内の段階から株主の組み方を整えておく必要があります。久村氏は、高すぎる企業価値での資金調達を追いかけると、後から入る海外の投資家を遠ざけると指摘しました。追加で出資できる力と、その会社や技術への深い理解を持つ国内の投資家を加えておくことで、海外の投資家からの信頼につながるといいます。大きな追加の資金調達の段階では、海外の投資家が欠かせなくなると述べました。

最後に、日欧の強みを組み合わせる方法として、Schmitt氏は国をまたいだ企業の統合で規模を得ることを挙げました。Eisenstecken氏は、小さく自分で持ち続けるか、投資を受けて大きく育てるかという野心の大きさを決め、その道を貫くことを勧めました。久村氏は、世界でその分野を代表する企業を目指してほしいと呼びかけました。

まとめ:成長段階の資金と人材をどう補うか

本セッションでは、日本と欧州がともに、創業期の資金は整ってきた一方で事業を大きくする段階の資金が足りないという課題を抱えていることが示されました。投資家は、強い技術と顧客の実績に加え、どこまで事業を大きくするかという野心と、投資家とともに歩める姿勢を見ています。海外の投資家を迎えるには、国内の段階から株主の組み方を整えること、そして国をまたいだ統合や日欧の連携で規模を得ることが、選択肢として挙げられました。

編集部の感想

欧州と日本の投資家が、同じ課題を抱える立場から率直に語り合ったセッションでした。シリーズAとBの間の資金の空白と、大きな事業を育てた経験を持つ人材の不足は、日本のディープテックが世界へ出るうえで避けて通れない論点です。早い段階から海外の投資家を見据えた準備をすることが、技術を世界規模の事業へつなぐ一歩になります。引き続きイベントの現場から技術と事業の動きを伝えていきます。

作成:FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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