2026.08.13 理化学研究所・マドリード工科大学・国立台湾大学 元発表:2026.08.13

理研ら、冬の低温が植物の再生能力を高める仕組みを解明

ニュース紹介

「冬の低温が植物再生を促進する仕組みを解明」

理化学研究所環境資源科学研究センターの杉本慶子チームディレクター(東京大学教授)、フン・フユ氏(国立中興大学准教授、研究当時は理研訪問研究員)らと、マドリード工科大学、国立台湾大学による国際共同研究グループは、長期間の低温が植物の再生能力を高める仕組みを解明したと発表しました。園芸分野では冬季の低温を経た後に発根が促進されることや接ぎ木の成功率が上がることが経験的に知られていましたが、その分子メカニズムは未解明でした。研究グループは、シロイヌナズナを1日から8週間にわたり摂氏4度で低温処理し、胚軸を切断した後の茎葉再生と根再生を観察しました。あわせてRNA-seqとChIP-seqにより遺伝子発現と転写因子の結合部位を解析しています。その結果、CBF-HAG1複合体がヒストンアセチル化を介して再生制御因子WOX5の発現を活性化することで再生能力が向上する機構を発見したとしています。促進効果は4〜5週間目から現れ始め、6〜8週間の低温処理でカルス形成が顕著に増加したと報告されています。成果は学術誌 Developmental Cell のオンライン版(2026年8月12日付)に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年8月13日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260813_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

植物は、切り取った断片から個体を再生する能力を持っています。この性質は、苗を大量に増やす組織培養や、遺伝子を導入した細胞から植物体を育てる工程など、農業と植物バイオテクノロジーの基盤になっています。

ただし再生のしやすさは種や条件によって差が大きく、うまく再生しない品種では実用化が進みません。再生能力を高める条件を分子のレベルで理解できれば、狙って条件を整えられるようになります。

①経験則はあっても仕組みは未解明だった

園芸の現場では、冬の低温を経た後に発根が促進されることや、接ぎ木の成功率が上がることが経験的に知られてきました。ただし、なぜそうなるのかという分子の仕組みは分かっていなかったと発表では説明されています。

研究グループはシロイヌナズナを摂氏4度で1日から8週間処理し、胚軸を切断した後の再生を観察しました。処理の長さを変えて比べることで、効果が現れる時間の条件を調べています。

②遺伝子の読み出しを変える経路を特定

解析の結果、CBF-HAG1という複合体がヒストンアセチル化を介して、再生を制御する因子WOX5の発現を活性化することが分かったとしています。ヒストンアセチル化とは、DNAが巻き付くタンパク質を化学的に修飾し、その領域の遺伝子を読み出しやすくする仕組みです。

効果は4〜5週間目から現れ始め、6〜8週間の低温処理でカルス形成が顕著に増加したと報告されています。研究グループは、組織培養による苗生産、遺伝子導入後の個体再生、接ぎ木技術の高度化などへの応用が期待されるとしています。

編集部からひとこと

現場の経験則が分子の言葉で説明されると、条件を再現したり短縮したりする設計が可能になります。効果が出るまで4週間以上という数値は、実際の生産工程を組むうえで具体的な手がかりになります。実験はシロイヌナズナで行われており、作物への適用はこれからの検証課題です。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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