FrontJournalの解説
この研究分野について
ユーイング肉腫は、主に小児・AYA世代の骨や軟部組織に発生する悪性腫瘍で、日本国内での年間発生数は約50人とされる希少がんです。10歳代の思春期に発症する患者が全体の約3分の2を占め、5〜30歳の患者で全体の約9割に達するとプレスリリースは説明しています。抗がん剤による化学療法で腫瘍を縮小させ、手術や放射線治療で原発巣を治療し、その後にも化学療法を行うのが標準的な治療の流れですが、初診時に遠隔転移がある患者の治療成績は不良であり、新たな治療開発が求められてきました。
希少がんは、患者数の少なさから企業単独では大規模な臨床試験が組みにくく、企業主導の新薬開発が進みにくい領域です。そのため、大学・研究機関などのアカデミアが国境を越えて連携し、共通のプロトコルで多国間の患者を集めて試験を行う「国際共同アカデミア主導臨床試験」が、標準治療の底上げに向けた重要な手段となっています。
①INTER-EWING-1試験の設計
INTER-EWING-1は、全ての病期の初発のユーイング肉腫患者を対象とし、4つの治療戦略の有用性をランダム化比較試験によって検証する包括的な臨床研究プログラムとして設計されています。具体的には、分子標的薬の追加、放射線治療の最適化、維持療法の導入など、標準治療に組み込みうる複数のオプションを一つの枠組みの中で並列に評価する構成です。
ランダム化比較試験は、患者を無作為に治療群と対照群などに分けて効果を比較する試験方法で、治療の有効性を科学的に検証するうえで標準的な手法とされています。14か国の施設が参加する規模で、単一国では困難な患者数を確保しつつ、複数の治療戦略を同時に評価できるのが本プログラムの特徴です。
②日本参加の意義と実施制度
今回、日本からは国立がん研究センター中央病院がアジア地域から初めて参加し、先進医療Bの制度下で試験を実施します。先進医療Bは、保険適用外の医療技術を保険診療との併用で提供できるようにする制度で、有効性・安全性のエビデンスを蓄積しながら、将来の保険収載を目指す位置づけです。
プレスリリースでは、日本の施設が参加することで、日本の患者に世界標準の治療開発への参加機会を創出でき、将来的には日本国内での保険収載に向けた重要な科学的根拠となり、ドラッグ・ラグのない臨床実装につながることが期待されるとしています。今後は約10年間かけてAMEDの支援のもとで実施され、日本国内の参加施設を拡大していく方針が示されました。
編集部からひとこと
企業主導の新薬開発が難しい希少がん領域で、国境と大学・研究機関の垣根を越えたアカデミア主導の国際共同治験に日本の中核病院が加わることは、患者アクセスと国内エビデンス構築の両面で意味のある動きです。10年規模のプログラムであるため、途中経過や参加施設の拡大状況、治療戦略ごとの結果を継続的にウォッチする必要があります。制度面(先進医療B)と国際協働のかたちが希少がん領域でどう機能するかを見る上でも参考になる事例です。詳細は国立がん研究センター中央病院のプレスリリースをご参照ください。