大気からCO2を除去する「直接空気回収」を実用化【Climeworks|スイス発】
CO2の排出を減らしても、すでに大気へ出たCO2は自然には減りません。気温上昇を抑えるには、排出削減に加えて、すでに排出されたCO2を除去する手段が要ります。スイスのClimeworks(クライムワークス)は、直接空気回収(DAC)を実用化した企業です。回収したCO2はアイスランドの地下へ注入し、岩の成分と反応させて鉱物に変えます。同社は2025年に大型の資金調達を実施し、回収能力の拡大を進めています。
CO2の排出を減らしても、すでに大気へ出たCO2は自然には減りません。気温上昇を抑えるには、排出削減に加えて、すでに排出されたCO2を除去する手段が要ります。スイスのClimeworks(クライムワークス)は、直接空気回収(DAC)を実用化した企業です。回収したCO2はアイスランドの地下へ注入し、岩の成分と反応させて鉱物に変えます。同社は2025年に大型の資金調達を実施し、回収能力の拡大を進めています。
排出を減らす取り組みが進んでも、これまでに排出されたCO2は大気に残り続けます。IPCCの報告では、排出削減に加えて、すでに排出されたCO2の除去(カーボンリムーバル)も必要だとされています。除去技術が普及しなければ、気温上昇を抑える国際的な目標には届きにくくなります。
陸上でCO2を吸収する代表例は森林ですが、効果の発現までに長い年月が必要です。植林には広い土地が必要で、火災や伐採が起きれば蓄えた炭素の一部は大気へ再放出されます。森林吸収に依存する場合、企業が排出量に相当する回収量を確保するのは難しいと言えます。
Climeworksは、大気からCO2を回収する直接空気回収(DAC)を実用化した企業です。2009年に、ETHチューリッヒ(チューリッヒ工科大学)で機械工学を専攻した2人が創業しました。
同社の装置は大気からCO2を選択的に分離するため、発生源が特定できない排出にも対応できます。コンテナ型の装置に大きなファンを備え、吸い込んだ空気を吸着材(CO2をとらえる材料)に通す仕組みです。吸着材がCO2で飽和したら、アイスランドでは地熱の低温熱で加熱し、高純度のCO2を取り出します。燃焼を使わないため、熱と電力だけでこの工程を繰り返せます。
回収したCO2は地下で炭酸塩鉱物に変え、大気へ戻りにくい状態にします。取り出したCO2はそのままでは再び大気へ広がるため、アイスランドの企業Carbfix(カーブフィックス)と提携しました。CO2を溶かした水を玄武岩の地下へ注入すると、実証では約2年で鉱物に変わったと報告されています。同社がアイスランドを選定した理由は、装置を稼働させる地熱と注入先の玄武岩が併存する点です。
同社は回収したCO2を「除去クレジット」として販売し、購入した企業は自社の排出を相殺できます。購入者は除去された量を、自社の排出量の相殺分として報告に用います。Microsoftは同社と長期の購入契約を結び、除去クレジットを購入しています。製鉄や航空のように排出を減らしにくい分野でも、事後に除去する選択肢を確保できます。
「Mammoth(マンモス)」は2024年5月に稼働し、稼働初年の回収量は約105トンでした。同社は公称能力が年最大3万6,000トンの設備を運転し、長期目標に年100万トン規模の回収を掲げます。同社は2024年発表の第3世代技術について、回収量を2倍にし、必要なエネルギーを半分に減らすとしています。同社が参加する米国ルイジアナ州の「Project Cypress」では、2027年に年25万トン規模を計画しています。
2025年7月、同社は約1億6,200万ドル(約240億円)の資金調達を発表しました。この調達はBigPoint HoldingとPartners Groupが主導し、既存の投資家も加わりました。累計の調達額は約10億ドル(約1,500億円)に達しています。同社は資金を技術の改良と回収コストの低減に充て、採算のとれるプラントをめざすとしています。
これまでの気候対策は、排出量の削減が中心でした。Climeworksの直接空気回収は、すでに排出されたCO2を回収して地下に固定する選択肢を加えます。一方で、公称能力に近い水準まで回収量を拡大できるか、費用を低減できるかは今後の課題です。日本にも火山由来の地熱と玄武岩質の地層があり、適地の条件を満たすかは今後の調査課題です。FrontJournal編集部は、回収量が着実に累積し、産業の選択肢として定着することに期待しています。
※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Climeworks公式(Mammoth/第3世代技術/Project Cypress)/Carbon Herald(2025年7月の資金調達)/IEEE Spectrum(第3世代技術)/Heimildin・CNN(2024年の回収量の報道)。
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