アグロデザイン・スタジオ「分子標的農薬」を開発

株式会社アグロデザイン・スタジオ

アグロデザイン・スタジオ「分子標的農薬」を開発

企業紹介|アグロデザイン・スタジオとは?

標的タンパク質の立体構造をもとに、化合物を設計する農薬「分子標的農薬」。株式会社アグロデザイン・スタジオは、その社会実装を目指す、東京大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。農薬が作用するタンパク質の形を調べ、その形に合う化合物を設計して、新しい農薬の開発に取り組んでいます。

キーワード「分子標的農薬」

「分子標的農薬」は、農薬が作用するタンパク質を標的に定め、その立体構造に合わせて化合物を設計する農薬です。特徴は、効く仕組みを立体構造から確かめながら開発を進められることです。対象の生物に特有のタンパク質を標的にすれば、人や動物への影響を抑えられる可能性があります。

市場課題|新しい農薬の開発に長い年月がかかる

現状の農薬開発の課題

開発に11年以上かかる

新しい農薬は、開発の開始から実用化まで11年以上かかるといわれています。開発の途中では、安全性や環境への影響を確かめる試験を重ねる必要がある状況です。このままでは、新しい農薬を農家が使えるようになるまでの期間が、さらに延びるおそれがあります。

耐性雑草が増えている

同じ標的に作用する除草剤を使い続けると、薬が効きにくい個体が生き残って増え、耐性雑草が広がるといわれています。除草剤の標的の一つであるALS(植物がアミノ酸を合成する酵素)では、遺伝子の一部が1か所変わる点変異によって、薬が効きにくくなる例が知られる状況です。その結果、使える薬が減り、雑草の管理が難しくなるおそれがあります。

他にも、環境や人への影響を確かめる試験の手間、防除対象の生物だけに効く化合物を見極める難しさ、効果が長く続く化合物を探す手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ALS植物がアミノ酸を合成する際に働く酵素である。除草剤の標的として広く使われている。遺伝子の1か所が変わる点変異で、薬が結合しにくくなり、耐性雑草が生じる例が知られる。

アグロデザイン・スタジオの強み|「分子標的農薬」を開発

アグロデザイン・スタジオが「分子標的農薬」を開発

立体構造から化合物を設計

従来の農薬開発は、多数の化合物から効くものを選び出すスクリーニング(網羅的な試験)が中心とされます。

同社の出発点は、農薬が作用するタンパク質の立体構造を、X線結晶構造解析(結晶にX線を当てて原子の並びを調べる方法)で調べることです。その形に合う化合物を計算科学の手法で探索し、構造解析の結果をもとに化合物を改良します。候補を絞り込み、合成と構造解析を繰り返す手順です。標的の形が分かるため、化合物が結合する位置を確認しながら改良を進められます。これにより、合成して試す前に結合しやすい化合物へ候補を絞れるため、合成する化合物の数を減らせます。

酵素への作用を確認

構造の上で結合すると見込まれた化合物でも、実際に効くかどうかは、試験で確かめるまで分かりません。

同社は、設計した化合物を、まず標的の酵素(体内の化学反応を進めるタンパク質)に対する作用の強さで確かめます。酵素に対する作用は、植物の体内での吸収や代謝といった要素を除いて測れるため、化合物と酵素との結合による作用を比べやすい点が利点です。測定の結果は化合物の改良に生かし、構造解析と合わせて候補を絞り込みます。酵素への作用を数値で得られるため、改良の前後で化合物の性能を比べられる点も強みです。これにより、改良の前後を数値で比べて方向を判断でき、植物での試験に進める化合物の数を減らせます。

FrontJournalの解説
  • X線結晶構造解析タンパク質を結晶にしてX線を当て、散らばるX線の模様から原子の位置を計算する方法である。農薬の標的となるタンパク質の形を、原子の並びまで調べられる。

分子標的農薬の未来|解析技術の提供と農薬開発の広がり

構造から設計する農薬が変える未来

解析を受託で提供

同社は、タンパク質の立体構造を調べる受託解析サービス「AgroBox」を提供しています。2024年12月には、DNAやRNAといった核酸(遺伝情報を担う分子)の構造解析サービスの提供も始めました。2026年1月には、小さな化合物の断片(フラグメント)を使うスクリーニングの受託解析も始めています。製薬会社・農薬会社・大学などが、自社で構造解析を行わなくても、標的の形に基づく研究に取り組みやすくなります。

農薬創出の基盤を整備

短期の取り組みは、新しい農薬を生み出す基盤の整備です。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援事業では、2023〜2024年度の計画で、構造解析、計算機による農薬の設計、実験の自動化が掲げられました。これら3つは、新しい農薬の開発に関わる工程です。その整備は、開発を進めやすくする基盤整備にあたります。

新しい農薬の創出を目指す

同社が目指すのは、構造解析と計算機による設計を組み合わせた、新しい農薬の創出です。標的の形から設計する手法が広がれば、作用する相手を絞った農薬の開発を進めやすくなる可能性があります。使える薬が減った耐性雑草の管理の現場にとっても、新しい農薬の選択肢が増える可能性があります。解析の提供と基盤の整備は、その土台となる取り組みです。

会社概要|アグロデザイン・スタジオの事業内容・設立背景

2018年に設立

株式会社アグロデザイン・スタジオは、2018年3月に設立され、千葉県柏市の柏の葉にある東京大学柏IIキャンパスに本社を置いています。代表取締役社長は、創業者の西ヶ谷有輝氏です。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、関連大学として東京大学が掲載されています。

同社が開発する分子標的農薬は、農薬が作用するタンパク質の立体構造を出発点にしています。タンパク質構造解析の受託サービス「AgroBox」も事業の一つです。資本金は約5,800万円です。

採択・連携

同社は、NEDOのディープテック・スタートアップ支援事業に採択され、2023〜2024年度に農薬創出の基盤整備が計画されました。この計画では、構造解析、計算機による農薬の設計、実験の自動化が掲げられました。また、2021年4月に、株式会社Preferred Networks(PFN)との共同研究を始めています。

シードラウンドを実施

同社は、2020年1月に、シードラウンドで総額1億円の資金調達を公表しました。投資家は、リアルテックファンドとインキュベイトファンドなどです。シードラウンドは、事業の立ち上げ期に行う資金調達にあたります。

会社情報

会社名株式会社アグロデザイン・スタジオ
所在地千葉県柏市柏の葉6丁目2番地3 東京大学柏IIキャンパス 産学官民連携棟303
設立2018年3月30日
代表代表取締役社長 西ヶ谷有輝
資本金約5,800万円
調達シードラウンド(2020年1月に公表・総額1億円)。リアルテックファンド、インキュベイトファンドなど
事業分子標的農薬の開発、タンパク質構造解析の受託サービス「AgroBox」
技術領域X線結晶構造解析、計算機による農薬の設計
連携株式会社Preferred Networks(2021年4月に共同研究を開始)
採択NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業(2023〜2024年度)
URLhttps://www.agrodesign.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

新しい農薬の開発には長い年月がかかるといわれる中で、アグロデザイン・スタジオは、標的タンパク質の形を出発点にする設計で、開発の負担軽減に取り組んでいます。同社の技術は、農薬の標的となるタンパク質の形を調べる構造解析が土台です。農薬会社などへ解析を受託で提供している点も、自社の開発にとどまらない広がりを感じさせます。

耐性雑草が増える中で、作用する相手を絞った農薬が現場に届く時期は、農業に携わる人にとって大きな関心事です。構造解析と計算機による設計が、開発の流れをどう変えていくのか、今後の展開を見守りたい取り組みです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。