2026.11.02 │ 京都大学・理化学研究所・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.29

京都大学ら、生態系を左右するキーストーン種の解析手法を開発

ニュース紹介

「生態系を制御する「キーストーン種」を探す~森林地下の共生ネットワークに潜む「隠れた司令塔」~」

「京都大学」大学院理学研究科の野口幹仁元博士課程学生(現 産業技術総合研究所 研究員)、「理化学研究所」バイオリソース研究センターの鈴木健大研究員、京都大学大学院生命科学研究科の東樹宏和教授らの研究グループは、生態系全体の成り立ちを左右する「キーストーン種」を、大量の観測データから統計的に絞り込む新しい解析手法を開発しました。森林の地下で植物に共生する1万種を超える微生物のDNAデータにこの手法を適用し、群集全体を組み替える「隠れた司令塔」とも言うべき菌を見いだしています。

研究グループは、日本の冷温帯林で採取された1,270点の根サンプルから得た真菌(かび・きのこ類)と細菌のDNAデータを分析し、植物根内の微生物叢がとりやすい状態を「ランドスケープ(地形)」として表現しました。この構造を劇的に変化させる種や系統を探索する理論を考案し、スーパー・コンピューターで実装しています。その結果、「内生菌」と呼ばれる真菌類が、植物と微生物たちの共生関係の成り立ちを大きく組み替えている可能性が示唆されました。成果は2026年10月28日(現地時間)付で国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました(DOI:10.1038/s41467-026-78401-3)。

出典:京都大学・理化学研究所・科学技術振興機構(JST) 共同発表 2026年10月29日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261029-4/index.html
https://www.riken.jp/press/2026/20261029_1/index.html

FrontJournalの解説

生態系を左右する「キーストーン種」とは

「キーストーン種」は、個体数の割に生態系へ大きな影響を与える生物を指す言葉です。1969年に米国の動物学者「ロバート・ペイン」が提唱し、海岸でヒトデを取り除くとイガイが増え、生物の構成が大きく変わった観察が出発点とされています。

土の中や植物の根には膨大な数の微生物がすむため、どの種がこの役割を担うかを実験で確かめるのは困難でした。今回の手法は、その候補をDNAデータの統計解析で絞り込む点に特徴があります。

①根の微生物叢を「ランドスケープ」で表して司令塔を探す

研究グループは、1,270点の根サンプルから得た真菌と細菌のDNAデータをもとに、根の中の微生物叢(多様な微生物の集まり)がとりやすい構成を「ランドスケープ」、つまり地形に見立てて表しました。この地形の構造を大きく変える種や系統を探す理論を考え、スーパー・コンピューターで計算しています。

調査地は日本の冷温帯林で、解析の対象になった微生物は1万種を超える規模です。

②「内生菌」が共生関係を組み替える可能性

解析の結果、「内生菌」と呼ばれる真菌類が、植物と微生物の共生関係の成り立ちを大きく組み替えている可能性が示されました。内生菌は植物の組織の内部にすむ菌で、森林生態系の主役としての注目度は比較的低い存在でした。

発表資料によると、この手法は森林のほか農地や水圏、ヒトの腸内細菌叢にも使える汎用的な基盤です。森林再生や農業生産、環境浄化など、微生物叢を活用する分野の管理技術につながることが期待されています。

FrontJournalからのひとこと

微生物の研究では、DNAの読み取りによってどの菌がいるかを大量に把握できるようになりました。今回の成果は、そうした観測結果から全体を動かす菌を絞り込む道筋を示しています。候補に挙がった内生菌の働きを実験で確かめる研究が、次の焦点になりそうです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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