2026.10.03 │ 理研・大阪公立大学・慶應義塾大学 │ 元発表:2026.10.02

理化学研究所ら、肝疾患の重症化に伴う腸内細菌叢の入れ替わりを解明

ニュース紹介

「肝疾患の重症化に伴う腸内細菌叢の『シフト』を解明-エネルギー地形解析で見える肝臓と腸内微生物群集のつながり-」

理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター 統合情報開発室の鈴木健大研究員、桝屋啓志室長、大阪公立大学 大学院医学研究科の大谷直子教授、慶應義塾大学 先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らの共同研究グループは、脂肪肝に伴う炎症の重症度の変化に伴い腸内細菌叢がどのように再編されるかを、環境因子を扱う拡張型のエネルギー地形解析を用いて明らかにしました。

共同研究グループは、成人104人の腸内細菌叢データと、脂肪肝炎の活動度を評価する非侵襲的指標の一つであるFASTスコアの統合解析を行いました。その結果、重症化とともに腸内細菌の多様性が単純に減るのではなく、複数の細菌の組み合わせが入れ替わる「群集の再編」として現れることを明らかにしました。さらに、個々の細菌が特定の群集状態とどの程度強く結び付くかを示す群集形成指数(CSI)を新たに開発しました。

この評価方法は、肝疾患に関わる微生物バイオマーカーの探索や、病態に応じた予防・介入法の開発に貢献すると期待されます。論文は科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版(9月25日付)に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年10月2日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20261002_2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、世界の成人のおよそ4人に1人以上がかかるとされる慢性の肝臓病です。脂肪肝から肝炎、線維化、肝硬変、肝がんへと進むことがあるため、体への負担が少ない方法で早めに状態をつかむことが重要です。

腸と肝臓は、門脈という太い血管や胆汁酸の循環でつながっています。この「腸肝軸」を通じて、腸内細菌が肝臓病の進行に関わると考えられてきました。ただ、これまでの研究は病気の人と健康な人で増減する細菌を比べるものが中心で、群集全体の変化は捉えきれていませんでした。

①細菌の組み合わせを地形で表す

エネルギー地形解析は、各細菌がいるか・いないかの組み合わせを1つの状態として扱い、その起こりやすさを数理モデルで推定する手法です。安定な状態ほど低い「谷」になり、群集の安定性が地形のように表されます。

研究チームは、便の遺伝子解析で全員に共通して見つかる58分類群を使いました。FASTスコアの低い側から高い側へ地形を調べ、代表的な群集状態を3つの型に整理しています。

②多様性ではなく顔ぶれが変わる

種の数などの一般的な多様性の指標は、FASTスコアと有意な関係を示しませんでした。変わっていたのは、細菌の顔ぶれの組み合わせでした。

軽い状態では酪酸をつくる菌を含むSubdoligranulum属が、重い状態では口の中にもいるStreptococcus salivariusが特徴的でした。研究チームは、こうした変化の一部が臨床的には軽いとされる範囲から現れ始めることも報告しています。

編集部からひとこと

研究チームは、より大きな集団での検証や、同じ人を長く追う研究が必要だとしています。腸内細菌の組み合わせで肝臓の状態を早めに見分けられるようになるか、次の検証結果に注目します。

FrontJournal編集部

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