ANSeeN「フォトンカウンティング」を開発

株式会社ANSeeN(アンシーン)

ANSeeN「フォトンカウンティング」を開発|研究領域=X線の<span class=光子を・1つずつ数える/強み=光に変えず・X線を数える/将来性=カラーカメラの・量産を目指す" loading="lazy">

企業紹介|株式会社ANSeeNとは?

X線の光子を1つずつ数え、波長の情報まで画像にする技術「フォトンカウンティング」。株式会社ANSeeNは、その社会実装を目指す、静岡大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。化合物半導体のCdTe(テルル化カドミウム)を使うX線検出器と、光子を数える専用のLSI(大規模集積回路)を、設計から製造、販売まで手がけています。

キーワード「フォトンカウンティング」

「フォトンカウンティング」は、X線を粒子である光子(フォトン)として、1個ずつ数える方式です。X線の光子が検出素子に当たると1,000〜10,000個の電荷が生じ、その量から光子のエネルギー(波長)も分かります。明暗だけでなく波長の情報も画像にできるため、材料の識別などに使えます。

市場課題|X線検査に残る、感度と大面積化の壁

現状のX線検査の課題|現状は、光への変換で感度が下がり大面積化も難しい|変換の損失で・感度が下がる/レンズが使えず・受光面が大きい

変換の損失で感度と解像度が低下

従来のX線センサは、X線を光に変える段階の損失で、感度と解像度が下がります。シンチレータ(X線を可視光に変える高密度の材料)で光に変え、CMOS(回路を組み込んだ撮像素子)で撮る方式で、変換効率が低く光も散乱します。この劣化は原理的に避けられず、画質向上の限界です。

集光できず受光面が大きくなる

X線は波長が非常に短く、可視光のカメラのようにレンズで集められません。そのため、センサの受光面は撮像対象より大きくなり、空港の手荷物検査では約60cm、CT(断層撮影)では約90cmの長尺センサが要ります。従来は液晶テレビと同じTFT(薄膜トランジスタ)で大型の受光素子を作ってきましたが、性能でCMOSに大きく劣ります。

他にも、X線はカラーフィルタで色を分けられず波長の情報を得にくいこと、光子を数える装置が大がかりになること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • シンチレータX線などの放射線を受けて、可視光を出す物質の総称である。X線を直接は測れないセンサで、X線を光に変える役割を担う。

ANSeeNの強み|「フォトンカウンティング」を開発

ANSeeNが「フォトンカウンティング」を開発|現在は、光子を数えるX線検出器を提供|半導体で光子を・直接数える/センサを並べ・大面積に対応

CdTeで光子を直接数える

シンチレータと可視光カメラを組み合わせる従来の方式では、X線を光に変える段階で、感度と解像度が下がります。

同社は、X線を電気信号に直接変えるCdTeを検出素子に使います。静岡大学が開発したレーザーによるドーピング(不純物を加える加工)で、素子の内部にpn接合(電気を流す向きをそろえる境界)を作り、受光素子としての性能を引き出しました。専用の集積回路は、全画素で光子を同時に数え、光子1個ごとの電荷量からエネルギーも読み取る仕組みです。同社のセンサは、従来のセンサの100倍以上の感度を持つといわれています。埋もれていた情報を取り出せるため、コントラストの高い画像が得られ、見分けられる違いが広がります。

タイリングで大面積に対応

従来の大型受光素子は、液晶テレビと同じTFT技術で作られ、CMOSイメージセンサより性能が大きく劣ります。

同社は、CdTe検出器と光子計数用の集積回路を組み合わせたセンサモジュールを、近年実用化が始まった3D LSI(回路を立体に積み重ねる技術)で敷き詰めて、大面積化します。この構成は、化合物半導体とCMOSを3次元に積み重ねた構造で、微細な画素ごとに光子を数える仕組みです。この「タイリング」(敷き詰め)で、長尺のラインセンサから40×40cmのパネルセンサまで、用途が求める形とサイズに対応できます。実装コストの面でも、従来の方法より優位とされる点も特徴です。

FrontJournalの解説
  • タイリングセンサモジュールを敷き詰めるように並べて、1つの大きな受光面を作る実装技術である。用途に合わせて形とサイズを変えられる。

フォトンカウンティングの未来|X線カラーカメラの量産へ

X線の波長情報が変える未来|波長情報と大面積化で検査を広げる|波長の違いを・画像で見分ける/X線カラーカメラを・量産へ/放射線を可視化・安心を届ける

X線の波長の違いを画像で取得

産業用途でも使えるX線スペクトルカメラを、同社は実現しています。光子を1つずつ数える方式は、システムが大がかりで、従来は素粒子物理学や天文物理学でしか使われていませんでした。同社の公開画像では、カメラレンズをX線で撮り、3つの波長帯域を赤・緑・青に割り当てて合成しています。波長ごとの違いが色の差として現れるため、材料を識別するX線検査への応用が見込まれます。

大面積X線カラーカメラの量産

化合物半導体とCMOSを3次元に積み重ねた構造の、大面積X線カラーカメラの量産が進んでいます。2025年1月に調達したシリーズCの資金も、この量産に充てる方針です。X線のカメラは撮像対象より大きな受光面が要るため、大面積化は実用化の条件です。X線による画像検査は非接触で内部を観察でき、食品、工業製品、医療などで使われています。

放射線を可視化し安心を目指す

同社は「見えない不安を見える安心に」を掲げ、放射線を可視化することで安心を届けることを目指しています。シリーズCの資金調達の発表では、半導体の3次元インテグレーション技術を活用した受託生産体制の構築も、同発表で示された柱の1つです。大面積X線カラーカメラの量産は、2025年1月のシリーズCで調達した資金の使途にも位置づけられています。X線による画像検査は非接触で内部を観察できるため、可視化できる情報が増えるほど、現場で判断に使える材料も増えます。

会社概要|ANSeeNの事業内容・設立背景

静岡大学の研究シーズから設立

同社は、2011年4月に浜松市で設立されました。静岡大学の化合物半導体放射線センサの製造技術を核とする大学発の企業です。同年7月にはエネルギー弁別型(放射線のエネルギーの違いを区別する方式)の放射線計測器を発売し、2012年4月から小池昭史が代表取締役を務めています。拠点は、浜松市の浜松イノベーションキューブです。

事業の採択と製品の範囲

2013年から2020年にかけて、経済産業省、AMED、NEDOなどの事業に採択され、しずぎん起業家大賞も受けています。2017年10月と2018年9月には、NEDOのシード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援にも採択されています。2020年9月にはNEDOの「研究開発型スタートアップ支援事業」に採択されました。事業内容は、X線検出器の設計開発と製造販売、フォトンカウンティングLSIの設計開発、放射線計測機器の試作・販売などです。

シリーズCで5億円を調達

2025年1月に、シリーズCラウンドで総額5億円を調達しました。シリーズCは、製品の量産を進め、事業を広げていく段階にあたります。日本化薬などを引受先とする第三者割当増資で、資金は化合物半導体とCMOSの3次元積層構造による大面積X線カラーカメラの量産に充てる方針です。

会社情報

会社名株式会社ANSeeN(ANSeeN Inc.)
所在地静岡県浜松市中央区和地山三丁目1番7号
設立2011年4月
代表代表取締役 小池 昭史
資本金2億1,000万円
調達2025年1月にシリーズCラウンドで総額5億円
事業X線検出器の設計・開発・製造・販売、フォトンカウンティングLSIの設計・開発、計測システムとソフトウェアの開発、放射線計測機器の試作・販売
技術領域化合物半導体CdTe検出器。フォトンカウンティング。タイリング
連携静岡大学の化合物半導体放射線センサの製造技術を核に設立
URLhttps://anseen.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

X線の画像は、白黒の濃淡だけでも、内部の様子を非接触で見せてくれます。そこに波長の情報が加われば、見えるものが材料の違いにまで広がります。フォトンカウンティングは、その土台になる技術です。

ANSeeNの特徴は、検出素子のCdTe、光子を数えるLSI、大面積化のタイリングを、1社で組み合わせている点です。どれか1つが欠けると、感度、波長情報、大きさのどこかで制約が残ります。3つを組み合わせる難しさは外から見えにくいものの、検査装置の性能を左右します。

大面積のX線カラーカメラが量産されれば、検査装置を作る側の選択肢が増える点が重要です。見える情報が増えるほど、検査や診断の判断を支える材料も増えます。放射線を可視化して安心を届ける同社の姿が、現場に根づく日を期待します。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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