ノベルジェン「カキの短期肥育」を開発

株式会社ノベルジェン

ノベルジェン「カキの短期肥育」を開発|研究領域=藻類を餌に・カキを短期肥育/強み=陸上の水槽で・水質と水温を管理/将来性=輸出に向けた・実証を推進

企業紹介|株式会社ノベルジェンとは?

高水温や餌不足で衰弱しやすい養殖カキを、陸上の水槽で短期間に肥育する技術である「カキの短期肥育」。株式会社ノベルジェンは、その技術を微細藻類の培養とあわせて開発する、長浜バイオ大学発のバイオ系ディープテック企業です。培養した植物プランクトンを餌に肥育したカキ「Bloom Oyster」を、長浜市内のレストランや近畿ブロック知事会議で提供しました。研究領域は「カキの短期肥育」と微細藻類の培養で、将来性として日本産カキの輸出に向けた実証を進めています。

キーワード「カキの短期肥育」

「カキの短期肥育」は、水揚げしたカキを陸上の水槽へ移し、短期間で身入りを良くして出荷する方法です。従来の海面養殖は海の水温や餌の量に左右されますが、この方法は水槽の水質と水温を整え、培養した植物プランクトンを餌にします。その餌の藻類を、赤潮の仕組みを参考にした培養技術「ABC」で高密度に増やしています。

市場課題|カキ養殖に残る、高水温と餌不足

現状のカキ養殖の課題|現状は、高水温と餌不足で供給の安定が難しくなる|高水温でカキが・大量に死ぬ/餌不足でカキの・身が痩せる

高水温でカキが大量に死ぬ

養殖カキは、高水温を背景に、大量に死ぬ年があります。水産庁が2025年のカキの大量死について各県から聞き取った調査では、高水温が共通の要因とされました。平時は一般に3〜5割のへい死が、瀬戸内海の各県では多いところで7〜9割に達しました。この状況が続くと、出荷できるカキが減り、供給の安定が難しくなります。

餌不足でカキの身が痩せる

国内のカキ養殖場では、近海の清浄化などに伴って、カキの身は小ぶりになっていることが課題です。水産庁も、大量死の推定要因の一つに餌不足を挙げています。

他にも、貧酸素、高塩分、餌不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • へい死養殖や飼育の途中で、魚介類が病気や環境の変化などにより死ぬことである。カキの養殖では、高水温などの環境変化によって、大量のへい死が起きることがある。

ノベルジェンの強み|「カキの短期肥育」を開発

ノベルジェンが「カキの短期肥育」を開発|現在は、陸上の水槽でカキの短期肥育を研究|陸上の水槽で・水質と水温を管理/藻類を餌として・カキに与える

陸上の水槽で水質と水温を管理

従来の海面養殖は、海の水温や水質の変化を直接受けるため、高水温の年には管理が難しくなります。

ノベルジェンの短期肥育は、水揚げしたカキを陸上の水槽へ移して育てる方法です。長浜地方卸売市場内の実証設備では、培養した植物プランクトンを人工海水の肥育水槽へ送ります。陸上施設では、水質と水温を管理しながら短期間で肥育します。設備は1トン規模の水槽2基で、藻類を与える水槽と与えない水槽を比べる対照実験で、藻類の効果を確かめる設備です。この仕組みにより、水揚げ後のカキを、海の水温や餌の量に左右されにくい形で肥育できるようになります。

藻類を餌としてカキに与える

従来は、海に含まれる餌の量で育ち方が決まるため、餌が足りない海域では身が痩せやすくなります。

ノベルジェンの培養技術「ABC」(Algal Bloom Capture)は、赤潮の発生メカニズムに着想を得て、微細藻類を人工的に急速に増やす技術です。水に合う藻類の株(培養する系統)をライブラリから選び、IoT(機器をネットワークにつなぐ技術)とAIで光・温度・栄養塩を自動で制御し、高密度に培養する流れです。同社の餌料生産装置は、カキ・アサリ・ホタテ向けの二枚貝専用ブレンドの餌を供給できます。水揚げした衰弱したカキや未成熟のカキを、この餌で肥育してから出荷できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 栄養塩海水中に溶けている窒素やリンなどの養分である。植物プランクトンが増えるために欠かせず、貝などの餌となる藻類の量を左右する。

カキの短期肥育の未来|提供から輸出へ

短期肥育が変える未来|提供実績から輸出の実証へ|短期肥育のカキを・会食で提供/流通DXと輸出の・実証を推進/琵琶湖の水での・肥育を目指す

短期肥育のカキを会食で提供

短期肥育したカキ「Bloom Oyster」は、提供実績として、すでにレストランや会議の場で提供されています。2025年4月には、兵庫県室津産のカキにこの技術を適用してテスト出荷し、長浜市内の「びわこレストランROKU」で提供されました。2026年5月28日には、近畿ブロック知事会議でも提供されています。ノベルジェンは、炭酸カルシウムでできた殻を、土壌改良剤や海洋浄化剤、コンクリートの基材などに再資源化できるとしています。

流通DXと輸出の実証を推進

今後は、SBIR(国がスタートアップなどの研究開発を支援する制度)フェーズ3の期間内に、カキの短期肥育システムと流通DX(デジタルによる業務の変革)プラットフォームの開発と実証を進めます。日本産カキの輸出増加を目的とした事業で、農林水産省の助成の限度額は12億4,700万円で、2028年3月までの設定です。輸出に向けた品質向上の対象は、日本産の冷凍生食用カキとされています。生産から流通までをデジタルで管理し、東南アジア・欧州・北米への輸出増加を図る計画です。

琵琶湖の水での肥育を目指す

琵琶湖の水を使ったカキの肥育にも、取り組みたいとの考えです。実現すれば、琵琶湖の水質浄化にも役立つ見通しです。同社の拠点は、琵琶湖に面した長浜市にあります。

会社概要|ノベルジェンの事業内容・設立背景

長浜バイオ大学発で設立

長浜バイオ大学発の企業で、2019年10月に設立されました。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースにも掲載されています。代表取締役の小倉淳は、同大学のアニマルバイオサイエンス学科の教授です。

国の事業採択と受賞歴

農林水産省の助成を受けるSBIRフェーズ3事業に取り組んでいます。2024年6月24日には、長浜市、長浜バイオ大学、バイオビジネス創出研究会と合同で、日本産カキの輸出増加を目的とした同事業の記者会見を行いました。2025年9月には「THE BLUEKEEPERS AWARD2025」で「LOCAL ENGAGEMENT賞」を受賞し、同年10月には週刊東洋経済「すごいベンチャー100」2025のESG・インパクト部門に選出されました。

培養装置「Bloomo」を展開

製品には、微細藻類を培養する「Bloomo」があります。pH、溶存酸素、濁度、水温をIoTで測定し、AIが温度・光・CO2を自動で調整する仕組みです。水産向けでは、二枚貝の種ごとに藻類の配合を自動で調整し、生きた藻類を供給します。

会社情報

会社名株式会社ノベルジェン
所在地滋賀県長浜市田村町1281-8-15 長浜バイオインキュベーションセンター
設立2019年10月
代表代表取締役 小倉 淳
事業微細藻類を用いたソリューション技術の開発。開発した技術を実現する装置の製造・販売、サービスの提供。製品に培養システム「Bloomo」
技術領域カキの短期肥育。微細藻類の培養技術「ABC」
連携長浜市。長浜バイオ大学。バイオビジネス創出研究会
採択SBIRフェーズ3(農林水産省)。THE BLUEKEEPERS AWARD2025 LOCAL ENGAGEMENT賞(2025年9月)。週刊東洋経済「すごいベンチャー100」2025 ESG・インパクト部門(2025年10月)
URLhttps://novelgen.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

養殖カキの高水温と餌不足は、産地の収益にも、食卓にも関わる課題です。ノベルジェンの短期肥育は、陸上の水槽で水質と水温を整え、培養した藻類を餌にする技術です。海の環境に左右されやすい養殖に、新しい選択肢を示す取り組みといえます。

特徴は、藻類の培養と肥育を、ひとつの流れでつなげている点です。すでにレストランや知事会議でカキが提供され、技術が食の現場に届き始めています。国の事業でも輸出に向けた実証が計画されており、今後の広がりが期待されます。

長浜発の微細藻類の技術が、カキの肥育から琵琶湖の水質浄化へと広がっていくのか。藻類の培養と肥育を組み合わせて開発する企業として、今後も注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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