Floatmeal|ウキクサの一種ウォルフィアを食用に育て代替タンパク質を製造する北海道大学発ディープテック

Floatmeal株式会社(フロートミール)

Floatmeal「食用ウォルフィア」を研究|研究領域=ウォルフィアを食用に栽培/強み=少ない水と土地で大量生産を目指す/将来性=食品から化粧品・環境事業へ拡大

企業紹介|Floatmealとは?

代替タンパク質は、農地と水の使用量を大幅に抑えられるタンパク源として注目されています。Floatmealは、その量産技術の確立を目指す北海道大学発のディープテックスタートアップです。ウキクサの一種であるウォルフィアを食用に育てる研究をもとに、北村もあな氏が2023年5月に事業化しました。食品産業に向けて安定生産技術の確立を進め、食料不足と環境負荷の双方に向き合う技術として開発を続けています。

キーワード「ウォルフィア」

ウォルフィアは、熱帯から温帯の淡水域に自生する世界最小級の水生植物で、ウキクサの仲間です。根を持たず、粒のような形で水面に広がるのが特徴。乾燥重量のうち約4割がタンパク質で、植物としては高い含有率といわれています。北海道大学の大学院でウキクサと微生物を研究してきたメンバーが、この植物の食用化に取り組んでいます。

市場課題|タンパク質の需要に生産が追いつかない

現状のタンパク源の課題|需要の増加と環境負荷が招くタンパク質危機/牛肉と大豆は広い農地と水が必要/家畜を増やすと環境負荷が増える

牛肉と大豆は広い農地と水が必要

牛肉や大豆を生産するには、広い農地と大量の水が欠かせません。牛には飼料と牧草地が必要で、大豆の栽培には農業用水を使います。人口が増えるほど土地と水の確保は難しくなり、タンパク質危機と呼ばれる状態が近づきます。

家畜を増やすと環境負荷が増える

家畜を育てる過程では、温室効果ガスが排出されます。飼料の多くは輸入に頼っており、輸送に使う燃料も課題です。生産量を増やすほど、環境への負担は大きくなります。

他にも、新興国での食肉需要の増加、異常気象による収量の変動、といった課題が積み重なってきました。代替タンパク質の量産技術を確立することも、これからの課題です。

FrontJournalの解説
  • 代替タンパク質家畜に代わるタンパク源。植物や昆虫、培養肉から製造し、環境負荷を抑える狙いがある。
  • タンパク質危機タンパク質の需要が世界で供給を上回ると懸念される問題。食料安全保障の主要な論点。

Floatmealの技術|微生物で栽培を安定させる

Floatmealが「食用ウォルフィア」を研究|少ない水と土地で安定生産を目指す/水面での循環栽培で水と土地を節約/微生物で藻類を抑え安定生産へ

水面で育つ植物で資源消費を低減

ウォルフィアは、水面に浮かんだまま育ち、耕作を必要としない水草です。従来のタンパク源は広い農地と大量の農業用水を前提とし、生産できる地域も限られます。同社は平らな水槽で、ウキクサの仲間であるこの水草を栽培しています。使う水は循環させて繰り返し利用する仕組み。水槽さえあれば栽培できるため、乾燥した地域や消費地の近くでも生産でき、輸送の負担も抑えられます。

微生物で藻類を抑制し安定化

同社の中核にあるのは、微生物の働きで栽培環境を安定させる技術です。ウキクサの仲間の栽培では、藻類が増えて水質が悪化しやすくなります。同社が使うのは、藻類の増殖を微生物の働きで抑え、水質を保ちながら育てる方法です。ビニールハウスを含む施設で生育環境を管理し、衛生的な大量生産技術の確立を目標に据えています。加えて根を持たず全株を食用にできるため、限られた面積でも収量を確保しやすくなります。

FrontJournalの解説
  • ウキクサ池や水田の水面に浮かぶ小さな水草の総称。成長が速く、水質の浄化や飼料への利用が古くから研究されてきた。
  • 藻類水中で光合成を行う生物の総称。栽培用の水槽で増えると水質が悪化し、目的の植物の生育を妨げる要因になる。

未来|食品から化粧品や環境事業へ広げる

食用のウォルフィアが変える未来|パンや麺の原料に高タンパク食材化/機能性食品や化粧品の素材へ/別系統で排水処理し水質改善を目指す

パンや麺に使える高タンパク食材

ウォルフィアは、まず新しい高タンパク食材として食卓に届くと見込まれています。風味が穏やかで、パンや麺、飲料などの加工原料として扱いやすいとされます。大豆や乳にアレルギーがある人にとっては、貴重な選択肢です。こうした特性を生かし、同社は食品メーカーとの共同開発やサンプル提供にも対応するとしています。

機能性食品や化粧品へ用途拡大

食品の枠を超えて、機能性食品や化粧品への応用も検討されています。ウォルフィアにはタンパク質のほか、ビタミンなどの栄養素が含まれるといわれています。こうした成分は、健康食品や美容の素材として期待される部分です。ウォルフィアと同じ植物由来と並び、微生物タンパク質(微生物由来のタンパク質)の開発も世界で進みます。

排水浄化による環境事業を目指す

同社は、ウォルフィアの栽培を排水の浄化と結びつけた環境事業を目指しています。排水に含まれる養分を吸収して成長する性質があり、水質の改善と回収を両立できる仕組みです。排水処理に用いる栽培は、食品用の栽培とは別の系統で管理されます。この事業では、三友環境総合研究所(環境分野のコンサルティング会社)と組み、排水処理や脱炭素の技術開発を進めます。

FrontJournalの解説
  • 機能性食品健康の維持や増進に役立つ成分を含む食品を指す。特定の機能が期待され、通常の食品より付加価値が高いとされる。
  • 排水処理工場や家庭から出る汚れた水を、環境へ放流できる状態に整える工程。ウォルフィアの栽培はこの工程と組み合わせられる。

会社概要|Floatmeal株式会社

北海道大学での出会いから事業化

Floatmealは、2023年5月に設立された北海道大学発のスタートアップで、代表取締役は北村もあな氏です。北村氏が学生時代に、北海道大学でウキクサを研究していた共同創業者と出会ったことが出発点になりました。気候変動への危機感と、ウォルフィアが秘める可能性が重なり、北村氏らは事業化へと進みました。国内でウォルフィアの食用生産に本格的に取り組む企業として注目されています。

受賞とNEDO採択で評価が定着

同社は、外部からの評価を通じて認知を広げてきました。2024年には週刊東洋経済(ビジネス週刊誌)の「すごいベンチャー100」に選ばれています。北海道発のピッチイベント(事業計画の発表会)でも、最優秀賞を含む複数の賞を受けました。2025年度にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業に採択されています。これは研究開発型スタートアップを対象とした「NEP・躍進コース3000」の支援制度です。

安平と豊橋の2拠点で量産へ

事業の柱は、ウォルフィアを安定して育てる生産技術そのものです。北海道安平町で大量生産の実証(実際の環境で確かめること)を進めています。愛知県豊橋市の新拠点が担うのは、研究から生産検証(量産に向けた工程確認)までの一体運用です。この体制を軸に、食品を入り口に機能性食品や排水処理、脱炭素へ広げ、早ければ2027年にタイでの量産を計画しています。

会社情報

会社名Floatmeal株式会社(フロートミール)
所在地北海道札幌市白石区東札幌五条1丁目1-1 札幌市産業振興センター
設立2023年5月
代表北村 もあな(代表取締役)
拠点北海道勇払郡安平町の生産拠点「Abira Laboratory」(同町の実証・量産拠点)。愛知県豊橋市に研究開発・生産の新拠点を開設。
連携三友環境総合研究所(2024年にパートナーシップ提携。ウォルフィアの生産・加工、共同実証試験)。
技術領域ウォルフィア(食用ウキクサ)の安定生産、代替タンパク質、フードテック、排水処理、脱炭素
受賞・選定週刊東洋経済「すごいベンチャー100」2024年版/Onlab HOKKAIDO 6th Batch Demo Day 最優秀賞・オーディエンス賞/KPMG Dream賞(2024)/第9回 NoMaps Dream Pitch 2024 最優秀賞・野村證券札幌支店賞
公的支援NEDO「研究開発型スタートアップ支援事業(NEP・躍進コース3000)」採択(2025年度)。
URLhttps://www.floatmeal.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

食料問題は、遠い国の話に聞こえるかもしれません。しかし人口が増え続ける世界で、タンパク質をどう確保するかは、食品産業と家庭の食費に直結する課題です。その答えの一つを、水面に浮かぶ小さな植物に見いだそうとする発想が新鮮に映ります。

Floatmealが目指すのは、単なる新食材ではなく、食と環境を同時に支える仕組みです。少ない土地と水で育ち、排水の養分を吸って水質の改善にも寄与します。食料と環境という二つの課題を、一本の技術で結ぶ発想。北海道で培った生産技術は、海を越えて応用できる余地を残しています。

小さな緑の粒が、世界の食卓を変える日が来るかもしれません。同社のこれからの歩みに期待が集まります。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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