2026.11.04 │ 京都大学・高エネルギー加速器研究機構(KEK) │ 元発表:2026.10.29

京都大学ら、固体電解質LATPのイオン伝導率を10倍に

ニュース紹介

「酸化サマリウム焼結添加剤を用いて構造チューニングしたLATP固体電解質の原子配列およびイオン伝導性の解明〜低価格の全固体リチウムイオン電池実現への期待~」

高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のソウ ホウシュウCIQuS博士研究員、同研究所の森一広教授、京都大学大学院エネルギー科学研究科の高井茂臣准教授らの共同研究グループは、リチウムイオン導電性固体電解質Li₁.₃Al₀.₃Ti₁.₇(PO₄)₃(LATP)に対して、イオン伝導率が10倍程度上昇する新たな手法を見出し、本系のイオン伝導性を原子レベルで解明しました。

本研究では、希土類酸化物の1つである酸化サマリウム(Sm₂O₃)を焼結添加剤としてLATP固体電解質へ添加し、熱処理(1000℃)を施すことで、LATPの微細構造および原子配列をチューニングした結果、未添加LATPのイオン伝導率と比較して10倍程度上昇させることができました。また、電気化学インピーダンス分光法より、粒子間界面のイオン伝導率(粒界イオン伝導率)が大幅に改善していることを明らかにしました。さらに、中性子回折法とX線回折法を併用し、本系の原子配列(結晶構造)を精密に決定しました。

本研究成果は、2026年10月28日(米国時間)に、米国化学会(ACS)発行のエネルギー材料科学の専門誌「ACS Applied Energy Materials」のオンライン版に掲載されました。

出典:京都大学 2026年10月29日 研究成果/掲載誌:ACS Applied Energy Materials/DOI:10.1021/acsaem.6c02610
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-10-29-1

FrontJournalの解説

全固体電池と固体電解質

今回の研究は、全固体リチウムイオン電池(電解液の代わりに固体の電解質を使うリチウムイオン電池)の部材である「固体電解質」の性能を高めたものです。京都大学の発表によると、リチウムイオンを通す固体電解質は、全固体電池の実用化を始めとした今後の蓄電池開発の重要なキーマテリアルとされています。

対象の「LATP」は、原材料や製造コストが安価なため、低価格の全固体電池の実現に有望な材料です。一方で、現状のLATPは十分なイオン伝導率(イオンの通りやすさ)に届いておらず、研究グループはその改善方法を探っていました。

①酸化サマリウムの添加と熱処理で、イオン伝導率が10倍程度に

研究グループは、希土類酸化物の酸化サマリウムを焼結添加剤としてLATPに加え、1000℃で熱処理しました。これにより、LATPの微細構造と結晶構造が変わり、未添加のLATPと比べてイオン伝導率が10倍程度に上昇しました。

電気化学インピーダンス分光法(電気の流れにくさを周波数ごとに測る手法)では、粒子と粒子の境目を通るイオンの伝導率である粒界イオン伝導率が、大幅に改善していることも確かめられました。

②中性子とX線で原子の並びを精密に決定

研究グループは、中性子回折法とX線回折法を併用して、LATPの原子配列を精密に決定しました。その結果、LATP中のリン酸イオン(PO₄³⁻)が酸化サマリウムと再結合し、SmPO₄相とLiTiOPO₄相が生成していることが分かりました。この反応はLATPの微細化を促し、結晶構造内のリチウムの含有量も変化させることが示されました。

研究者のソウ ホウシュウ氏は、中性子について、物質の内部深くにあるリチウムなどの軽元素の振る舞いを観察でき、蓄電池研究に有用だと述べています。

FrontJournalからのひとこと

焼結添加剤を加える方法で、既存の固体電解質のイオン伝導率を10倍程度に高め、その原因を原子の並びのレベルで示した点が今回の特徴です。この成果が全固体電池としての性能にどう結びつくのか、今後の発表に注目しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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