2026.11.04 │ 九州工業大学・宇宙航空研究開発機構(JAXA) │ 元発表:2026.10.28

九州工業大学ら、AIで人工衛星の表面帯電を自動検出する手法を開発

ニュース紹介

「AIで人工衛星の表面帯電を自動検出する手法を開発」

九州工業大学大学院工学研究院宇宙システム工学研究系の寺本万里子准教授と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門第一研究ユニットの奥村哲平主任研究開発員は、両機関の共同研究において、人工知能(AI)を用いて約19年分の人工衛星の観測データを解析し、衛星表面の帯電現象を自動的に検出する手法を開発しました。あわせて、人工衛星が帯電しやすい宇宙環境の特徴を明らかにしました。解析は新潟大学の飯田佑輔准教授から、AIの検証方法について専門的な助言を受けながら実施しています。

手法には、AIの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用い、約3,000件の帯電イベントを抽出しました。その結果、オーロラを起こす電子が人工衛星の帯電を強める一方で、衛星の周りにある電離圏のプラズマが帯電を抑える働きをしていることが分かりました。成果は、米国地球物理学連合(AGU)が発行する学術誌「Space Weather」に掲載されました(DOI:10.1029/2026SW004944)。

出典:国立大学法人九州工業大学 2026年10月28日 プレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000141930.html

FrontJournalの解説

人工衛星の表面帯電とは

人工衛星は地上の機器のように大地へアースできないため、宇宙を飛び交う電子が表面にたまると、衛星が電気を帯びます。プレスリリースはこれを「表面帯電」と呼んでいます。表面の場所によって帯電の程度に差が生じると大きな電位差ができ、放電で太陽電池や表面材料が損傷することがあります。

今回の研究が解析したのは、論文タイトルにある米国の気象衛星「DMSP」の観測データです。DMSPは高度約840kmの低軌道を周回しており、極域ではオーロラを起こす高いエネルギーの電子が降り込みます。これまでの研究でも、この軌道の衛星が負に帯電する事例が報告されてきました。

①約19年分の観測データをAIで自動的に調べた

研究グループは、画像の特徴を読み取るAIとして知られる「CNN」(畳み込みニューラルネットワーク)を使い、観測データから帯電現象を自動で見つける手法を開発しました。従来は膨大なデータを人の目で確認する必要があったため、長期間の統計的な解析には大きな作業負荷がかかっていました。

新しい手法では、約19年分のデータから約3,000件の帯電イベントを効率的に抽出し、帯電しやすい時間帯や宇宙環境の特徴を詳しく調べられるようになりました。

②オーロラ電子と電離圏プラズマの釣り合いで帯電が決まる

解析の結果、オーロラを起こす電子は衛星を負に帯電させる方向に働き、電離圏(地上約60〜1,000kmに広がる電離した大気の層)のプラズマに含まれる正イオンの流入は、帯電を和らげることが分かりました。衛星の電位は、この2つの電流の釣り合いで決まると定量的に示されています。

研究グループは今後、オーロラの活動が活発だった過去の時期まで解析対象を広げる計画です。両者の状態をあわせて調べ、衛星が帯電しやすい時期や場所の予測につなげることを目指しています。

FrontJournalからのひとこと

人の目では追い切れなかった長期の観測記録をAIで掘り起こし、帯電の起きやすさを周囲のプラズマとの釣り合いで説明した点が今回の特徴です。帯電しやすい時期や場所の予測が、衛星の安全な運用にどう生かされるかが次の注目点です。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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