工場の蒸気を再エネでつくるヒートバッテリーを研究する Rondo Energy(米国発)

工場の蒸気を再エネでつくる「ヒートバッテリー」を研究【Rondo Energy|米国発】

工場で使う蒸気や高温の熱は、多くを化石燃料で生み出しており、再エネの電気に置き換えにくいことが課題になっています。この課題に挑むのが、米国のロンド・エナジー(以下Rondo Energy)です。電気でれんがを加熱して熱をため、工場に蒸気を送る「ヒートバッテリー」を研究し、2025年10月には、カリフォルニア州で100MWh(メガワット時)の装置が10週間の運転で目標を達成したと発表しました。2025年11月には、タイのセメント工場でも同社の装置が稼働しています。2023年8月には、6,000万ドル(約90億円)の資金調達を発表しました。

工場の熱の課題

Rondo Energyの紹介と、工場の熱が化石燃料に頼り、再エネの電気は時間帯で出力が変わるという課題を示す図

工場の熱は化石燃料に頼る

工場で蒸気や高温の熱を生み出す工程は、多くを天然ガスなどの化石燃料の燃焼に頼っています。産業用の熱は、世界のエネルギー消費の約4分の1を占めるとされ、食品や化学、セメントなど幅広い業種で使われています。このままでは、電気の脱炭素が進んでも、工場の熱から出るCO2は減りにくいままです。

再エネは時間で出力が変わる

太陽光や風力の電気は、時間帯や天気によって発電量が変わります。工場の熱は昼も夜も一定量が必要で、電気が多く得られる時間と、熱を使う時間が合いません。このままでは、再エネの電気を、止まらずに動く工場の熱に使いにくい状態が続きます。

Rondo Energyが「ヒートバッテリー」を研究

ヒートバッテリーの研究を示す図。電気でれんがを1000℃超に加熱して熱をため、電気の安い時間に充電して24時間蒸気を送る

課題解決に挑むRondo Energy

Rondo Energyは、電気でれんがを加熱して熱をため、工場に蒸気や熱を届ける「ヒートバッテリー」を研究する米国の企業です。本社はカリフォルニア州にあります。蓄熱材には、れんがを用います。

電気でれんがに熱をためる

同社のヒートバッテリーは、電気で電熱線を発熱させ、れんがを1000℃超まで加熱して熱をためます。2025年10月に運転結果を発表した100MWhの装置は、10週間の運転で全ての目標を達成し、往復効率は97%超だったと同社は公表しています。同社によると、蓄熱材がれんがと金属線のため、燃えたり爆発したりしません。国内でも、NIMS(物質・材料研究機構)と東京大学が廃熱を電気に変える磁性体を開発しています。

安い電気で24時間蒸気を送る

同社の装置は、1日のうち電気が最も安い6時間だけで充電し、24時間蒸気を送り続けられます。カリフォルニア州の燃料製造施設に置かれた100MWhの装置は、敷地内の太陽光発電の電気だけで動き、100bar(バール)超の高圧蒸気を供給しています。熱の出力は家庭用暖房1万台分に相当すると同社は説明しています。国内でも、エナリスが大塚グループの北海道工場で蓄電池の運用支援を始めました。

FrontJournalの解説
  • MWh(メガワット時)エネルギーの量の単位。1メガワット(1,000キロワット)の出力を1時間続けたときの量にあたる。
  • 往復効率ためたエネルギーのうち、あとで取り出して使える割合。高いほど、ためる途中の損失が少ない。
  • bar(バール)圧力の単位。1barは、地上の大気の圧力(1気圧)とほぼ同じ。

「ヒートバッテリー」の未来

ヒートバッテリーの未来を示す図。セメント工場で熱を供給し、ビール工場への導入を進め、化学工場の蒸気の脱炭素を目指し、資金を調達して導入を広げる

セメント工場で稼働、ビールへ導入

同社の装置は、セメントの工場で稼働し、ビールの工場への導入も決まっています。2025年11月、タイのSCGのセメント工場で33MWhの装置が稼働し、熱出力2.3MWの蒸気で蒸気タービンを回しています。同月には、ポルトガルの電力会社EDPと、リスボンにあるハイネケンのビール工場に100MWhの装置を置き、熱をサービスとして供給すると発表しました。国内企業でも、第一実業がデンソーのインド工場で水素燃焼アルミ溶解の実証設備の工事を行いました。

化学工場の蒸気の脱炭素を目指す

同社は、化学工場が天然ガスで生み出している蒸気の置き換えを目指しています。ドイツのコベストロのブルンスビュッテル工場では、2026年1月に100MWhの装置の起工式を行い、2026年末の稼働を予定しています。この装置は工場の蒸気の約10%をまかない、CO2排出を年間最大1万3,000トン減らす見込みです。国内でも、再生可能エネルギー熱利用の導入可能性を調べる調査事業の公募が出ています。

約90億円を調達し導入拡大へ

Rondo Energyは2023年8月、6,000万ドル(約90億円)の資金調達を発表しました。Breakthrough Energy VenturesやMicrosoftの気候変動対策ファンド、リオ・ティント、サウジアラムコの投資部門などが出資しています。2024年6月には、Breakthrough Energy Catalystと欧州投資銀行から、欧州の3事業に向けて7,500万ユーロ(約120億円)の事業資金を得ると発表しました。これらの資金は、欧州のビール工場や化学工場への導入を広げる土台になります。

FrontJournalの解説
  • 蒸気タービン高圧の蒸気を羽根車に吹き付けて回し、その回転で発電機などを動かす装置。
  • 欧州投資銀行EU(欧州連合)の政策金融機関。気候変動対策などの事業に融資する。

まとめ

工場の熱は化石燃料への依存と再エネの変動が脱炭素の壁になっており、Rondo Energyはれんがに熱をためる方式でこの壁を低くしようとしています。米国とタイで装置が稼働し、欧州の化学工場やビール工場でも導入が進んでいます。国内でも、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などがグリーン水素で還元鉄1トンを試作するなど、産業の脱炭素に向けた取り組みが進んでいます。FrontJournal編集部は、「ヒートバッテリー」が工場の熱を再エネでまかなう手段になることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円、ユーロの円換算は1ユーロ=約160円で概算しています。
主な出典:Rondo Energy 公式発表(資金調達、100MWh機の商業運転、SCGとの稼働、EDP・HEINEKENとの導入、Covestroでの起工式)。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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