データセンターと工場に電力と熱を届ける小型モジュール炉を開発する X-energy(米国発)

データセンターと工場に電力と熱を届ける「小型モジュール炉」を開発【X-energy|米国発】

生成AIの普及でデータセンターが増えて電力需要が拡大し、脱炭素電源の確保が世界の課題になっています。化学工場などが製造に使う高温の蒸気も、多くは化石燃料頼みです。この課題に挑むのが、米国のエックス・エナジー(以下X-energy)です。電気と高温の蒸気を同時に供給できるよう設計した小型の原子炉「小型モジュール炉」の「Xe-100」を開発し、化学大手ダウの工場や、アマゾンが支援する米電力会社の計画への導入を進めています。2026年4月には、米ナスダック市場に上場しました

電力と産業熱の課題

X-energyの紹介と、電力需要が急増して供給が逼迫し、工場の熱を化石燃料に依存している課題を示す図

電力需要が急増し供給が逼迫

データセンターの増加により、電力を安定して確保することが世界各国の課題です。IEA(国際エネルギー機関)は、世界のデータセンターの電力消費量が2024年の約415TWh(テラワット時)から、2030年には約945TWhへ倍増すると予測しています。脱炭素電源や送電網の整備が需要の伸びに追いつかなければ、データセンターの建設計画の遅れや電気料金の上昇につながる恐れがあります。

工場の熱を化石燃料に依存

化学や製紙などの工場は、製造に使う高温の熱や蒸気の多くを、化石燃料の燃焼でまかなっています。IEAによると、熱は産業で使うエネルギーの約3分の2を占め、世界のエネルギー消費の約20%に相当する規模です。発電の脱炭素化が進んでも、工場の熱に由来するCO2排出が残るため、このままでは産業全体の排出削減が遅れます。

FrontJournalの解説
  • テラワット時(TWh)電力量の単位で、1テラワット時は10億キロワット時にあたる。国や大規模な施設群の年間の電力消費量を表すときに使う。
  • 脱炭素電源発電するときにCO2をほとんど排出しない電源。太陽光・風力などの再生可能エネルギーや原子力を指す。

X-energyが「小型モジュール炉」を開発

X-energyが開発する小型モジュール炉が、溶けにくい燃料で安全性を高め、高温の蒸気で工場の脱炭素に貢献することを示す図

課題解決に挑むX-energy

X-energyは、「小型モジュール炉」の「Xe-100」と、その燃料「TRISO-X」を開発する米国の企業です。2009年にカム・ガファリアン氏が設立し、メリーランド州ロックビルに本社を置きます。米国エネルギー省(DOE)の支援を受けて設計を進め、2020年には同省の先進炉実証プログラム(ARDP)の対象に選ばれました。

溶けにくい燃料で安全性を向上

「Xe-100」は、溶けにくい燃料と、温度が上がると核分裂の反応が自然に弱まる炉の性質によって、安全性を高める設計です。燃料は、ウランを炭素と炭化ケイ素の層で包んだTRISO粒子を黒鉛で固め、球状にしたもの(ペブル=小石の意味)です。X-energyは、この燃料がどの事故の想定でも溶融しないと説明しています。冷却にはヘリウムガスを使う高温ガス炉を採用し、運転を止めずに燃料を入れ替えられるため、燃料交換のための停止が要りません。

高温の蒸気で工場を脱炭素化

「Xe-100」は約565℃の蒸気を作れる設計で、電気に加えて化学工場の製造工程にも熱を送れます。1基あたりの電気出力は約80MW(メガワット)、熱出力は約200MWで、4基で電気出力約320MWの構成です。X-energyによると、必要な土地は大型の軽水炉の約10〜25%で、需要地の近くにも建てやすい点が特長です。部品を道路や鉄道で運べる大きさに分けて設計しており、工場での製造を増やして建設の期間と費用を抑えることを目指しています。

FrontJournalの解説
  • 小型モジュール炉出力を小さくし、主要な部品を工場で製造して現地で組み立てる原子炉。大型炉より建設期間を短くしやすく、複数基を組み合わせて出力を調整できる。
  • 高温ガス炉水の代わりにヘリウムなどの気体で炉心を冷やす原子炉。水で冷やす炉より高い温度の熱を取り出せるため、発電だけでなく工場への熱供給にも使える。
  • TRISO粒子直径1ミリメートルほどのウラン燃料の核を、炭素と炭化ケイ素の層で何重にも包んだ粒子。高温でも放射性物質を閉じ込めやすい。
  • 軽水炉普通の水で炉心を冷やす原子炉。日本や米国で稼働する原子力発電所の多くがこの方式である。

小型モジュール炉の未来

小型モジュール炉でダウ工場への熱供給を計画し、データセンターの脱炭素を目指し、上場で開発資金を調達したことを示す図

ダウ工場へ熱供給を計画

ダウの米テキサス州シードリフトの工場では、「Xe-100」4基で電力と蒸気を供給する計画です。米原子力規制委員会(NRC)は2026年5月、長期間を要する環境影響評価書(EIS)ではなく簡易な環境評価(EA)で審査を終え、重大な影響はないとの結論を示しました。建設許可の審査は同年後半に終わる見込みで、X-energyが見込む最初の商用納入(原子炉の引き渡し)は2030年代前半です。計画どおり進めば、化学製品の製造に使う蒸気を化石燃料から「小型モジュール炉」へ切り替える事例になります。

データセンターの脱炭素を目指す

X-energyは、データセンターの電力を脱炭素電源でまかなうことを目指しています。アマゾンが支援するのは、米ワシントン州の電力会社エナジー・ノースウエストが4基から始め、最大12基の「Xe-100」を置く計画です。アマゾンとX-energyは2039年までに米国で合計5GW(ギガワット)超の新しい電源の稼働を目指しており、実現すればクラウドサービスを支える電力の一部を原子力でまかなえます。英国でも、電力大手セントリカが最大12基の建設を検討しています。

上場で開発資金を調達

X-energyは2026年4月に米ナスダック市場へ上場し、約10億2,000万ドル(約1,530億円)を調達しました。それ以前の2025年11月には、米投資会社ジェーン・ストリートが主導するシリーズDで約7億ドル(約1,050億円)を、2024年10月にはアマゾンの気候変動対策ファンドが主導したシリーズC-1(シリーズCの追加募集)で約5億ドル(約750億円)を集めています。テネシー州オークリッジでは燃料工場「TX-1」の建設が進み、2028年前半に完成する予定です。調達した資金で燃料工場と供給網が整えば、「小型モジュール炉」を複数の地域で建てやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 米原子力規制委員会(NRC)米国の原子力施設の安全を審査・監督する政府機関。原子炉を建てるには、NRCの建設許可と運転認可を得る必要がある。
  • シリーズD創業期から数えて4段階目ごろの資金調達。事業の拡大期に入った企業が、量産や販路の整備のために大きな資金を集める段階を指す。

まとめ

データセンターの電力と工場の蒸気を同時に脱炭素化するには、天候に左右されず安定して動く脱炭素の熱源が求められます。X-energyは、溶けにくいTRISO燃料とヘリウムで冷やす高温ガス炉を組み合わせ、電気と約565℃の蒸気を届ける「小型モジュール炉」を開発中です。ダウの工場向けの計画はNRCの環境評価を通過し、アマゾンが支援する計画や上場による資金調達も進んでいます。化学工場で使う中温域の蒸気を原子力でまかなう取り組みは、産業の脱炭素化の選択肢を広げるものです。FrontJournal編集部は、「小型モジュール炉」が電力と産業用の蒸気を支える選択肢の一つになることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各機関の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:X-energy公式サイト・ニュースリリース(2024年10月16日・2025年11月・2026年4月23日)、X-energyの米証券取引委員会(SEC)提出資料(2026年)、ダウのプレスリリース、IEA「Energy and AI」(2025年)・「Clean and efficient heat for industry」。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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